風雨による高圧電気設備への影響とその対策の備忘録

風雨による高圧電気設備への主な影響

風雨、特に台風や豪雨の際には、高圧受電設備(キュービクルなど)に対して
以下のような重大な影響が発生し、停電事故や波及事故につながる危険性がある。

浸水・雨水の吹き込みによる影響

  • 絶縁性能の低下(地絡・短絡)
    強風雨やビル風により、キュービクルの換気口、扉や外箱の継ぎ目、腐食・破損箇所
    ケーブル引込口などから雨水や湿気が内部に浸入する。

    ゲタ基礎(架台)の上に設置されたキュービクルの下部からも風雨が吹き上げで浸入し
    内部の高圧真空遮断器(VCB)高圧負荷開閉器(LBS)などの高圧機器が水に濡れると
    絶縁抵抗が著しく低下し、短絡や地絡事故が発生する。

屋外の区分開閉器(PAS/UGS)なども、気密性能の劣化により内部に水が浸入・蓄積し
絶縁劣化を起こす事例がある。

強風による影響

  • 設備本体の破損・倒壊
    強風により、電柱、構内配電設備、またはキュービクル自体が破損したり
    アンカーボルトの固定が不十分な場合に倒壊する危険がある。

  • 飛来物による損傷
    アンテナ、トタン屋根、ビニールシートなどの飛来物が電線や電柱に絡みつき
    断線電柱倒壊を引き起こし、長期停電の原因となる。

雨水や湿気の浸入は、機器のを発生させ、経年劣化を加速させる。

高圧電気設備への影響とその対策

高圧気中負荷開閉器 (PAS)

PASの役割

電力会社との責任分界点に設置されており
高圧ケーブルや高圧受電設備で地絡事故が発生した際に開閉器が開放し、波及事故を防止する。

PAS外箱の劣化や防水ブッシングの亀裂・破損などにより
PASの内部に雨水が浸入してしまうと、本来の機能を果たせなくなる可能性がある。

対策

PAS内部へ雨水が浸入していないか判断するために、トリップコイルの絶縁抵抗測定および抵抗測定を実施する。

一般的なトリップコイルの絶縁抵抗判定値は下記の通り

トリップコイルの抵抗値はメーカーごとに正常値が異なるので
事前に取扱説明書などで確認をしておく必要がある。

またPASの更新推奨時期を屋内で15年、屋外用で10年としているため
この年数を目安に顧客に更新計画を立てるよう助言を行う。
※JEMA 一般社団法人日本電機工業会参照

高圧ケーブル

高圧ケーブルの絶縁体である架橋ポリエチレンに水トリーが発生し
最終的に絶縁破壊に至る。

対策

  • 高圧ケーブル内に水を浸入させないために、ケーブルのシース部分に傷をつけないように施工する。
    また、地中管路やハンドホール内に水がたまらないような施工をする。

  • 高圧ケーブルの更新推奨時期一般的に10~15年としており、この年数を目安に更新する。
    また更新の際には、水トリーが発生しにくい「E-E(三層同時押出)ケーブル」を採用する。

屋外ケーブル端末部

屋外のケーブル端末部のカバーは、上部から雨水が浸入すると下部から水を排出する仕組みになっている。
しかし、カバーを深く差し込みすぎたり、施工時に下部をテープ巻きしてしまったために
カバー内部に水がたまり、トラッキングによってカバーが焼損してしまう事故が発生している。

対策

  • 施工時に、カバーの下部をふさがないようにする。
  • 定期点検時には、双眼鏡などを活用し、放電の痕跡がないか確認する。

キュービクル内部への雨水浸入

左図:キュービクル内部に侵入する雨水イメージ 右図:キュービクル内部への雨水侵入対策

1986年以前に製造されたキュービクル or 1986年2月以降に製造されたJIS規格外のキュービクルは
暴風雨の対策が不十分なものがあり、台風など暴風雨によってキュービクル内部に雨水が浸入する恐れがある。
上左図に雨水がキュービクルに浸入するイメージを示す。
キュービクル内部に雨水が浸入すると、地絡や短絡事故が発生する可能性がある。

対策

  • 1986年以前に製造されたキュービクル、あるいは1986年2月以降に製造されたJIS規格外のキュービクルについては、屋根内側に水平水切板や防噴流対策板を設置する (上右図)。
  • 点検時に結露や水滴の跡がないか確認する。

風雨に対する具体的な対策一覧表

対策箇所具体的な措置(異常気象時・恒久的な対策)
キュービクルの開口部換気口・通気孔:強風雨が予想される際は
養生テープなどで一時的に塞ぐ。
ただし、夏季など機器の冷却が必要な時期は塞がない。防噴流対策板水平水切板を設置する。
外箱・扉扉の隙間施錠の不具合を点検し
隙間があればシール材などで閉塞処置を行う。
腐食・破損箇所は定期的に補修する。
老朽化した設備の気密性能を点検し
必要に応じて更新を計画する。
ゲタ基礎(架台)ゲタ基礎の両端遮へい板遮風板を取り付け
下部からの吹き上げによる雨水・湿気の浸入を防ぐ。
ケーブル引込口ケーブルと配管の隙間をシール材で確実に
閉塞(パテ埋め)し、雨水や小動物の侵入を防ぐ。
浸水対策浸水のおそれがある場合は止水板土嚢を設置し
排水口を設けて滞留を防ぐ。
耐水性の高い電気設備の採用も検討する。

参考資料

新電気 2020年5月号「風雨による高圧電気設備への影響とその対策の備忘録」より引用

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JEMA 一般社団法人日本電機工業会
汎用高圧機器の更新のおすすめ より一部引用

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