高圧架空引込設備についての基礎知識まとめ

第一柱から需要家の変電室やキュービクルに至るまでの引込設備は
電気事故のリスクが潜みやすいポイントとなる。

高圧架空引込設備に関する概略

左図:高圧絶縁電線での引き込み 右図:高圧ケーブルでの引き込み

使用する電線の種類と強度

高圧架空引込線には
安全性を担保するために指定された電線を使用する必要がある。

使用できる電線

高圧絶縁電線、特別高圧絶縁電線、引下げ用高圧絶縁電線
またはケーブルを使用することとされている。

電線の強度

引張強さ8.01kN以上のもの、または直径5mm以上の硬銅線の高圧絶縁電線
特別高圧絶縁電線、もしくは引下げ用高圧絶縁電線を使用する必要がある。
高圧絶縁電線を使用する場合は、5.0mm以上の太さが必要となる。

架空引込線の高さ基準

引込線の高さは
人や車両への危険を防ぐため、場所によって厳格に定められている。

  • 道路を横断する場合: 地表から6m以上の高さが必要。
  • 道路以外の場所: 地上5m以上の高さが必要。

高さの特例(減じることができる条件)

  • 道路以外の地上で、危険表示をすることにより、3.5mまで高さを減ずることができる。
  • 高圧架空引込線がケーブル以外のものであるときは
    その電線の下方に危険である旨の表示をする必要がありる。
  • 高圧ケーブルでの引込みの場合も、引込口付近では3.5mまでに減ずることができる。。

積雪地域への配慮
氷雪の多い地方の積雪上では、人又は車両の通行等に危険を及ぼさない高さにする必要がある。

架空ケーブルによる引込み(メッセンジャワイヤの施工)

図:ケーブルハンガー以外のちょう架例

ケーブルを用いて架空引込みを行う場合
ケーブル自体の張力を支えるために「ちょう架用線(メッセンジャワイヤ)」を使用する。

  • ちょう架用線の強度
    引張強さ5.93kN以上のもの、又は断面積22mm²の亜鉛めっき鉄より線と同等以上の強さの
    より線を使用する必要がある。
  • ケーブルの支持方法
    • ケーブルハンガーを使用する場合、高圧ではハンガーの間隔を
      50cm(0.5m)以下として施設する必要がある。
    • ケーブルハンガー以外の方法として
      金属テープなどを用いて20cm以下の間隔でケーブル本体をちょう架用線に固定する方法もある。
  • 接地工事
    • ちょう架用線及びケーブルの被覆に使用する金属体には、D種接地工事を施す必要がある。
    • 腕金等の支持物に対してもD種接地工事を施す。
    • 区分開閉器に内蔵または付属するLA(避雷器)については
      A種接地工事が必要。

造営物や植物との離隔距離

図;樹木の接触危険例

周囲の建物や樹木との接触による地絡・短絡事故を防ぐため
十分な離隔距離を確保しならない。

  • 植物との関係
    高圧架空引込線は、常時吹いている風等により
    植物に接触しないように施設してあることが求められる。
  • 造営物との離隔距離
    以下の表の通り、電線の種類(絶縁電線かケーブルか)によって必要な距離が異なる。
    なお、高圧架空引込線を直接引き込んだ造営物については
    危険のおそれがない場合に限り、この離隔距離の制限は適用されない。
対象物位置絶縁電線の場合ケーブルの場合
上部造営材上方2m以上1m以上
側方・下方1.2m以上(人が手や身を乗り出せない部分は0.8m以上)0.4m以上
その他の造営材1.2m以上(人が手や身を乗り出せない部分は0.8m以上)0.4m以上

実務におけるポイント・最新情報

鳥獣害と樹木接触(自然災害リスクへの対応)

先述の通り、電技解釈において植物への接触防止が規定されているが
実務で非常に多いのが「強風時に樹木が揺れてケーブルに接触し、被覆が損傷する」ケースとなる。
所有者との交渉が必要になることもあるが
敷地内の樹木伐採や剪定は保安管理上、必須の交渉事となる。

A種・D種接地の重要性と実測

引込柱には、LA用のA種接地と、メッセンジャワイヤや腕金用のD種接地が混在する。
落雷時にLAが正常に動作し、サージ電流を大地へ逃がすためには
A種接地の接地抵抗値(10Ω以下)が維持されている必要がある。
実務では、接地線の断線や、経年による接地抵抗値の悪化がないかを
定期的に測定・確認することが、雷害対策の要となる。

保安管理の現場で気をつけるべきこと

「目視点検の限界を知る」

高圧架空引込設備は高い位置にあり
双眼鏡などを使った目視点検が基本となるが
ケーブルの紫外線劣化による微細なクラックや
ハンガーの金属疲労は下からでは完全に把握できない
のが現状となる。

年次点検などで停電作業を行う際は
定期的に高所作業車等を利用し、ケーブルの端末部、メッセンジャワイヤのサビの進行具合
ケーブルハンガーのズレなどを至近距離で確認することが重要となる。

特に海岸沿いの塩害地域や、工場地帯の腐食性ガスが発生する環境では
亜鉛メッキ鉄より線の腐食スピードが予想以上に早いため、重点的な監視が必要となる。

参考資料

施設基準・法令に関する根拠

電線の種類と強度 / 架空引込線の高さ基準
【根拠】 電技解釈 第117条(架空引込線等の施設)

引張強さ8.01kN以上、直径5mm以上の硬銅線を使用することや
地表上の高さ(道路横断6m、その他5m、危険表示による3.5mへの緩和など)が規定されている。

メッセンジャワイヤ(ちょう架用線)の施設・支持間隔
【根拠】 電技解釈 第67条(低高圧架空電線路の架空ケーブルによる施設)

引張強さ5.93kN以上又は断面積22mm²以上の亜鉛めっき鉄より線を使用すること
ハンガー間隔50cm(0.5m)以下、金属テープ間隔20cm(0.2m)以下について記載されている。

接地工事(A種・D種)
【根拠】 電技解釈 第17条・第24条・第67条 / 第37条(避雷器等の接地)

ちょう架用線やケーブル金属被覆へのD種接地
およびPASに付属する避雷器(LA)へのA種接地(10Ω以下)が規定されている。

造営物や植物との離隔距離
【根拠】 電技解釈 第71条(低高圧架空電線と建造物との接近) / 第78条(植物との接近)

記事内の表にある離隔距離(上方2m・1m、側方1.2m・0.4mなど)や
風などで植物に接触しないよう施設する旨が明記されている。
引込先の造営物に対する制限の免除も第117条等に記載されている。

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