多数の蓄電池を直列にして長時間使用している場合、自己放電などで生じる充電状態のばらつきをなくし、充電状態を均一にするために、定期的に浮動充電電圧より充電電圧を上げて行う充電のこと。
あわせて読みたい 浮動充電とは(用語説明) 充電装置に蓄電池と負荷を並列に接続し、蓄電池に常に一定の電圧を加えて充電状態(=良好な状態)にしておくことで、停電または負荷変動時に無瞬断で蓄電池から負荷へ… 均等充電時の注意点
●発熱と電解液温度: 均等充電時には、印加電圧が高いことも相まって、蓄電池の発熱量が増加し電解液温度が上昇
するため、特に電解液温度と液面に注意する必要がある。
●周囲温度の影響: 周囲温度が高い場合は、さらに電解液温度が上昇し、蓄電池が損傷する可能性がある。
●電解液温度の上限: 周囲温度との関係上電解液温度が45℃以上にならないように注意すること。
均等電圧の条件は、15V/セル、約10時間(アルカリ蓄電池の場合)となっている。
※蓄電池の種類によって条件が異なるので注意が必要
均等充電(Equalizing Charge)の目的と必要性
電圧にばらつきが生じる理由
長期間の運用、特に「浮動充電」と呼ばれる常時充電状態を維持する運用では
以下のような理由で各セルの特性にばらつきが生じ、充電状態に差が出てくる。
●自己放電の個体差
製造時のわずかなばらつきや、セルの経年劣化の進行度の違いにより
各セルの自己放電の速度が異なる。
自己放電速度の速いセルは、他のセルに比べて充電不足になりがちになる。
●内部抵抗の差
各セルの内部抵抗も完全に均一ではない。
充電電流が流れる際に、内部抵抗の高いセルでは電圧降下が大きくなり
充電が効率的に進まないことがある。
●温度差
蓄電池が設置されている環境や、蓄電池パック内の位置による温度差も
セルの充電特性に影響を与える。高温のセルは劣化が早く進み
低温のセルは充電を受け入れにくいことがあります。
●負荷のばらつき
一部のシステムでは、直列接続されたセルのうち、特定のセルにのみ局部的な放電負荷がかかる場合がある。
●不純物の影響
電解液中の不純物や、極板のわずかな不均一性が
特定のセルの化学反応に影響を与えることがある。
これらのばらつきが進行すると、一部のセルは過充電傾向になり
他のセルは充電不足(実質的な過放電)傾向になる。
蓄電池全体の容量は、最も容量の少ないセルに律速されるため
このような不均衡は蓄電池全体の性能低下と寿命短縮に直結する。
均等充電の具体的な方法とプロセス
均等充電は、通常の浮動充電電圧よりも意図的に高い電圧を印加し
セル間の電圧差を「強制的に」解消するプロセスのこと。
- 電圧設定
通常の浮動充電電圧(例えば、2Vセルあたり約2.23~2.25V)よりも
高い電圧(例えば、2Vセルあたり約2.30V~2.40V、あるいはそれ以上)に設定する。
全体のバッテリー電圧としては
例えば48Vバッテリー(2Vセルが24個直列)であれば
浮動充電時が約53.5V~54Vのところ、均等充電では約55.2V~57.6Vに設定されることがある。
- 期間(時間)
設定された高めの電圧を、数時間から数日間(通常は24時間~72時間程度)継続して印加する。
※期間は、蓄電池の種類、ばらつきの程度、メーカーの推奨によって異なる。
- 電流の推移と終了判断
均等充電を開始すると、当初は比較的大きな充電電流が流れる。
充電が進み、特に充電不足だったセルが満充電に近づくにつれて、充電電流は徐々に減少していく。
最終的に、充電電流が一定の低い値(飽和電流)に安定したら、すべてのセルが満充電に達し
均等化が完了したと判断し、均等充電を終了する。
この電流値は、メーカーの指示に従うか、過去のデータに基づいて判断する。
- 負荷への対応
均等充電中は、システム電圧が一時的に上昇するため
接続されている負荷機器が過電圧の影響を受けないように注意が必要。
均等充電中は負荷を一時的に切り離すか、負荷側に電圧安定化装置(DC-DCコンバータなど)を設置して
安定した電圧を供給し続ける対策が講じられる。
- 監視の重要性
均等充電中は、各セルの電圧、全体電圧、充電電流、そして蓄電池の温度を注意深く
監視することが極めて重要となる。
特定のセルの電圧が異常に上昇したり、温度が過度に高くなったりする場合は
そのセルに問題がある可能性があり、直ちに充電を中断する必要がある。
液式鉛蓄電池の場合は、電解液の比重も測定し、各セルの均一性を確認する。
均等充電のメリット・デメリット
メリット
- 蓄電池寿命の延長
各セルの過充電や過放電を防ぎ、全体としての健全な状態を維持することで
蓄電池全体の寿命を最大限に引き出す。
- 蓄電池容量の維持
各セルの充電状態を均一に保つことで、蓄電池が持つ本来の容量を十分に引き出し
システムのバックアップ能力を維持する。
- 信頼性の向上
セルの不均衡による予期せぬ故障や性能低下を防ぎ、システムの信頼性を高める。
- 劣化の早期発見
均等充電時に特定のセルだけが異常な挙動を示す場合
(例えば、電圧が上がらない、ガス発生が異常に多いなど)
そのセルの劣化や故障の兆候を早期に発見できる。
デメリット
- 過充電のリスク
高い電圧を印加するため、過充電になりやすい。
特に、すでに満充電に近いセルは、過度な充電を受けることになり
電解液の過剰なガス発生、発熱、極板の劣化を促進する可能性がある。
- ガス発生と換気
特に液式鉛蓄電池では、水の電気分解が活発になり
水素ガスや酸素ガスが大量に発生する。
これらのガスは引火性・爆発性があるため、十分な換気と火気厳禁の徹底が不可欠となる。
密閉された空間での作業は特に危険。
- 温度上昇
過充電に伴い、蓄電池内部の温度が上昇する。
高温は蓄電池の劣化を加速させるため、温度監視と適切な冷却が必要。
- 手間と時間
定期的な監視と、場合によっては手動での電圧設定変更などが必要となるため
メンテナンスに手間と時間がかかる。
- 負荷への影響
前述の通り、負荷機器への過電圧印加を避けるための対策が必要。
均等充電の頻度
原則として均等充電の頻度は、蓄電池の種類、運用状況、メーカーの推奨によって異なる。
- 液式鉛蓄電池
一般的には、3ヶ月~6ヶ月に1回程度の頻度で行われる。
- 制御弁式鉛蓄電池(VRLAバッテリー)
液式に比べてガスの発生が少ないため、均等充電の頻度は低く
多くの場合は「不要」とされているか、年に1回程度の実施を推奨しているメーカーもある。
過充電による劣化リスクがあるため、不要な均等充電は避けること。
- リチウムイオン電池
通常、均等充電は行わない。リチウムイオン電池は、BMS(バッテリーマネジメントシステム)が
各セルの電圧を常時監視し、不均衡が生じた際に自動的にセルバランス調整を行うため
手動による均等充電は不要。
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