進相コンデンサは交流回路において力率(りきりつ)を改善するために使用されるコンデンサのことをさす。
別名「力率改善コンデンサ」とも呼ばれる。
交流回路では、電圧と電流の位相がずれることがあり
特にモーターや変圧器などの誘導性負荷(コイル成分を持つ機器)が多い工場やビルでは
電流の位相が電圧よりも遅れる「遅れ無効電力」が発生する。
この遅れ無効電力は、実際に仕事をする「有効電力」とは異なり
エネルギーを消費しない電力であり、電力会社の送電線や変圧器に余分な電流を流す原因となる。
進相コンデンサは、この遅れの無効電力と逆の性質を持つ「進み無効電力」を発生させることで、遅れ無効電力を打ち消し、回路全体の無効電力を少なくする役割を担う。
これにより、力率を改善し、電力の有効利用を促進する。
「定格容量」とは
コンデンサ単体としてメーカーが保証する、そのコンデンサが本来持っている無効電力の容量を指す。
単位はkvar(キロバール)。
コンデンサが特定の定格電圧と定格周波数で運転された場合に
どれだけの無効電力を発生させることができるかを示す、コンデンサ本体の仕様となる
「定格設備容量」とは
直列リアクトル(進相コンデンサと組み合わせて使用されることが多いコイル)とコンデンサを組み合わせた「設備全体」として、系統に対して供給できる無効電力の容量を指す。
単位はkvar(キロバール)。
近年、電力系統の高調波(ひずんだ電流や電圧)対策として
進相コンデンサには直列リアクトルを接続することが義務化、または推奨されている。
直列リアクトルは、高調波電流を抑制する効果がある一方で
コンデンサの進相分(無効電力)を減少させる作用がある。
そのため、実際に電力系統に供給される無効電力は、コンデンサ単体の定格容量よりも小さくなる。
この、直列リアクトルによる減少分を考慮した、設備全体としての実効的な無効電力供給能力が
「定格設備容量」となる。
主な理由は、直列リアクトルによる影響が考えられる。
したがって、コンデンサを選定する際には、コンデンサ単体の「定格容量」だけでなく
直列リアクトルとの組み合わせを考慮した「定格設備容量」を把握することが非常に重要になる。
これにより、必要な力率改善効果を確実に得ることができ、かつ設備の安全性を確保することができる。