誘導性リアクタンスについての基礎知識まとめ

誘導性リアクタンスとは、交流(AC)回路において、
インダクタ(コイル)が電流の流れを妨げる度合いを示す量のこと。
容量性リアクタンスがコンデンサによって生じるのに対し、
誘導性リアクタンスはインダクタの特性によって現れる。

誘導性リアクタンスが発生する原理

インダクタ(コイル)は、導線を巻いて作られており、電流が流れると周囲に磁場を発生させる
交流電流のように時間的に変化する電流がインダクタに流れると、この磁場も変化する。
変化する磁場は、ファラデーの電磁誘導の法則に従い、インダクタ自身に誘導起電力逆起電力)を発生させる。
この誘導起電力は、電流の変化を打ち消す方向に働くため、交流電流の流れを妨げるように作用する。
これが誘導性リアクタンスの根本的な原理となる。

誘導性リアクタンスの特徴

  • 交流の周波数に比例: 交流の周波数 (f) が高くなるほど、電流の時間的な変化率が大きくなる。
    すると、インダクタはより大きな誘導起電力を発生させて電流の変化を妨げようとするため、
    誘導性リアクタンスは大きくなる。
    逆に、周波数が低いほど、誘導性リアクタンスは小さくなる。

    ※直流(周波数0 Hz)に対しては、理想的なインダクタンスの誘導性リアクタンスはゼロになる
  • インダクタンスに比例: インダクタのインダクタンス (L) が大きいほど、同じ電流変化率に対して
    より大きな誘導起電力を発生させる。したがって、誘導性リアクタンスは大きくなる。
    インダクタンスが小さいほど、誘導性リアクタンスは小さくなる。
  • 位相関係: インダクタに交流電流を流すと、電圧の位相は電流の位相よりも 90°進む。
    これは、電流の変化によって誘導起電力が発生し、それが電流の流れを遅らせるように働くため。
    =電流は電圧よりも 90∘ 遅れる。

誘導性リアクタンスの計算式

誘導性リアクタンス XL​ は、交流の角周波数 ω [rad/s] とインダクタンス L [H] を用いて、以下の式で表される。

XL​=ωL=2πfL

  • XL​ は誘導性リアクタンス [Ω](オーム)
  • ω は角周波数 [rad/s] (ω=2πf)
  • f は周波数 [Hz](ヘルツ)
  • L はインダクタンス [H](ヘンリー)

誘導性リアクタンスの単位

誘導性リアクタンスの単位は、抵抗や容量性リアクタンスと同じく オーム [Ω]

誘導性リアクタンスの応用例

誘導性リアクタンスは、交流回路において様々な役割を果たす。

  • フィルタ回路: 特定の周波数成分の信号を通過させたり、阻止したりするフィルタ回路に利用される。
    例えば、低周波成分をカットするハイパスフィルタでは、インダクタの誘導性リアクタンスが高周波に対して大きくなる性質が利用される。
  • チョークコイル: 電源回路などで、交流のノイズ成分を抑制するために用いられる。
    高周波のノイズに対して大きなリアクタンスを示すため、ノイズの通過を妨げる。
  • トランス(変圧器): 相互誘導を利用して電圧を変換するトランスの動作原理に、インダクタンスと誘導性リアクタンスが深く関わっている。
  • モーターやリレー: 電磁誘導を利用して動作するモーターやリレーなどの電気機器には、
    インダクタンスが不可欠な要素となる。
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