電気の使い過ぎ(過負荷)や短絡事故等によって
整定値以上の負荷電流が流れたときに動作する継電器として
過電流継電器が用いられる。
過電流継電器そのものの定格電流は5Aであり
幹線から検出器である CT (変流器) を介して、その二次側から継電器に入力を行う。
=実際の継電器には CT 比による電流が流れることになる。
事故発生時において
200 A: 5 Aであれば 2.5
40 A: 5 Aであれば 12.5%
相当の電流が継電器に流れることになる。
試験時においては擬似的な事故電流を発生させて
この CT 二次側に相当する電流を検出器となる CT を介さずに、直接継電器へ流し込む作業を行うことになる。
過電流継電器は限時要素といわれる過負荷電流の検出と
瞬時要素といわれる短絡電流の検出を行う 2 つの動作要素を組み合わせて遮断信号を出力させる。
図:基本的な過電流継電器の構造
限時動作と瞬時動作における時間特性曲線との関係
限時要素は負荷電流(使用している電流)が大きくなるに従って
早い時間で動作する反限時特性を持つ。
( 下図 [B]参照)
一定値を超過した場合は短絡保護を目的とした瞬時要素があり
定限時特性で瞬断が必要な過負荷や事故時には即時に動作することになる。
(下図 [D]参照)
過電流継電器全体では両者を組み合わせた動作を行う。
(下図[E])
図:保護協調に必要な時間特性曲線
また、どちらの要素で働いたかは事後調査や処理に対する大きな手掛かりとなる。
そのため、継電器が備えている動作表示器(ターゲット)で確認し
特に、短絡事故に起因する可能性が高い瞬時要素を検出したときには、早急な対処を行う必要がある。
過電流継電器 (OCR) が遮断器 (CB) に開放動作をさせることを
「引外し」という。
また、引外しに必要なコイルを「引外しコイル」という。
「引外し」には下記の方式があり
設備によって使い分けられている。
外部に直流電源装置を持ち、その電源によりトリップコイル(TC)を励磁する。
過電流継電器の接点出力により
外部の直流電源を用いて
遮断器のトリップコイルを励磁し引き外す。
メリット
デメリット
信頼性の高い保護が必要な回路
外部にバッテリーやコンデンサなどの専用直流電源装置を用意し
その電源で遮断器(VCBなど)の引外しコイルを動作させる。
これにより、電源が安定的に供給されるため、事故時に確実に遮断器を開放が可能となる。
比較的大容量の受電設備
構造が複雑になる反面、引外し動作の確実性が高いため
重要な設備や大規模な電気系統の保護に採用される。
新電気2019年11月号 「特集保護継電器Q&A」より引用
新電気2020年4月号 「特集 リレー試験の基礎知識」より一部引用