力率(りきりつ、Power Factor; PF)は
交流電力において、供給された電力のうち、どれだけが実際に有効な仕事
(例えば、熱や光、運動エネルギーなど)に変換されたかを示す割合のこと。
※電気の「効率」を表す指標のようなもの
直流回路では、電圧と電流の積がそのまま電力(W:ワット)になる。
しかし、交流回路では、電気機器の中にコイルやコンデンサといった部品が含まれている場合
電圧と電流の間に時間的な「ずれ」(位相差)が生じる。
このずれがあるために、供給された電力のすべてが有効な仕事に使われるわけではない。
力率は、この「有効に働いた電力」と「供給された電力の総量」の比率を示すことで
電力の効率を評価する指標となる。
有効電力(ゆうこうでんりょく、Active Power / Real Power)
単位:W(ワット)
実際に電気機器を動作させ、熱、光、運動などの仕事に変換される電力。
電気料金の計算の基礎となるのはこの有効電力。
無効電力(むこうでんりょく、Reactive Power)
単位:var(バール)
コイルやコンデンサなど、磁場や電場を形成・維持するために必要な電力で
実際に消費されることなく、電源と負荷の間を往復するだけの電力。
モーターを励磁したり、コンデンサを充電したりするために一時的に蓄えられ
また電源側に戻されるため、「無駄な電力」と表現されることもあるが
機器を動作させる上で不可欠な電力。
皮相電力(ひそうでんりょく、Apparent Power)
単位:VA(ボルトアンペア)
電圧(V)と電流(A)を単純に掛け合わせた電力の総量。
電力会社から供給される電力の総量と考えることができる。
力率は、これらの電力を使って以下のように定義される。
力率 = 有効電力 / 皮相電力
または、交流の電圧と電流の位相差を θ(シータ)とすると、
力率=cosθ
力率の値の評価
位相差 θ が生じる原因によって、力率には「遅れ」と「進み」が存在する。
電気料金の割増
電力会社は、供給設備(発電所、送電線、変圧器など)の容量を
皮相電力(VA)に基づいて設計している。力率が低いと、同じ有効電力(W)を供給するために
より多くの皮相電力(VA)を送る必要があり、結果として送電線にはより大きな電流が流れる。
日本の電力会社(例えば関西電力の場合)では
契約電力が原則として50kW以上の高圧受電の場合、力率割引・割増制度が適用される。
電力損失(送電損失)の増加
送電線や変圧器などの抵抗成分により、電流が流れると熱として電力損失(ジュール熱)が発生する。
力率が低いと、必要な有効電力を送るために流れる電流が増えるため、この損失が大きくなり
エネルギーの無駄が生じる。
電圧降下の増大
電流が増加すると、送電線や配電線での電圧降下が大きくなる。
これにより、負荷側の電圧が不安定になったり、低下したりして
機器の性能低下や誤動作を引き起こす可能性がある。
設備容量の圧迫
変圧器や配電線などの設備は、流せる電流の最大値で容量が決まる。
力率が悪いと、無効電力のために余分な電流が流れるため
設備の容量が早期にいっぱいになり、新しい機器を導入する際に設備増強が必要になる場合がある。
力率を改善する主な方法は
遅れの無効電力を打ち消す「進み」の無効電力を補償すること。
これには、主に進相コンデンサ(電力用コンデンサ)が用いられる。
進相コンデンサの設置
誘導性負荷(モーターなど)によって発生する「遅れ」の無効電力を
進相コンデンサが持つ「進み」の無効電力で打ち消すことで
皮相電力に対する有効電力の割合を高め、力率を改善する。
工場などの場合、変圧器の二次側(低圧側)や
個々の大きな誘導性負荷(モーターなど)の近くに設置することで効果を発揮する。
ただし、過剰なコンデンサの設置は「進み力率」となり、これもまた電力会社にとって問題となるため
適切な容量のコンデンサを選定し、負荷状況に応じてオンオフを切り替えるなどの管理が必要。
高効率モーターの導入(既設の場合更新)
最新の高効率モーターは、従来のモーターに比べて力率が高いものが多く、省エネにもつながる。