保護継電器の「慣性特性」とは
極めて短時間の電流変化に対して、意図的に動作しないように設計された特性のこと。
慣性試験とは、この継電器の慣性特性が適切に機能するかを確認するための試験。
実際の事故ではなく、モーターの始動電流や変圧器の励磁突入電流のような一時的で健全な大電流によって、継電器が誤って動作(誤動作)するのを防ぐため。
慣性試験の具体的な方法は
継電器の種類(過電流継電器、地絡方向継電器など)やメーカーによって若干異なるが
基本的な考え方は共通している。
試験条件の設定
試験の実施
最小慣性動作時間の測定(応用)
JIS規格では50msなどが規定されているが、より詳細に継電器の特性変化を把握するために
通電時間を1ms単位で増やしていき、継電器が動作する最小の時間を測定することもある。
これにより、継電器の経年変化をより細かく把握できる。
具体的な試験装置
慣性試験を行うためには、短時間だけ正確な電流・電圧を印加できる専用の試験装置(継電器試験器)が必要となる。タイマー機能が内蔵されているものや、外部タイマーと組み合わせて使用するものがある。
保護継電器の慣性特性に関する規格は
主にJIS(日本産業規格)に規定されている。
JIS C 4602(高圧受電用過電流継電器)
過電流継電器の慣性特性について規定されている。
一般的に、静止形過電流継電器の慣性特性係数は0.9とされており
これは「通電時間が動作時間の90%以内であれば不動作」という意味合いとなる。
JIS C 4609(高圧受電用地絡方向継電装置)
地絡方向継電器の慣性特性について規定されている。
慣性特性試験 継電器の整定電流値及び整定電圧値を最小とし,零相基準入力装置の一次側に三相
一括で,整定電圧値の150%の電圧と,零相変流器一次側の任意の1線に動作位相の整定電流値の400%の
電流とを,同時に急激に0.05秒間通電して継電器の状態を調べる。
JIS C 4609(高圧受電用地絡方向継電装置):7.8より引用