迷走電流に関する概略
迷走電流(めいそうでんりゅう、Stray Current)とは、本来意図された電気回路以外の経路を流れる電流のこと。
大地、金属配管、鉄道のレール、建物の鉄骨などを予期せず流れ、様々な問題を引き起こす可能性がある。
迷走電流が発生する主な原因
- 直流電化鉄道: 電車に電力を供給するレールから大地へ漏れ出す電流が代表的な例。
特に、レールと大地の間の絶縁が不十分な場合や、雨天時などに発生しやすくなる。 - 電気化学プラント: 電気分解などを行うプラントにおいて、電解槽から大地や配管へ電流が漏れ出すことがある。
- 溶接機: アーク溶接機のアース不良などにより、大地や構造物を電流が流れることがある。
- 直流送電システム: 直流送電線やその接地極から大地へ電流が漏れ出すことがある。
- 漏電: 電気設備の絶縁不良などによる漏電電流が、大地や金属体を流れることがある。
- 接地不良: 電気機器の接地が不十分な場合、異常時に流れるはずの電流が意図しない経路を通ることがある。
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- 金属の腐食(電食): 迷走電流が金属を流れる際、電気化学的な反応を引き起こし、金属を腐食させる。
特に、埋設された金属配管(ガス管、水道管など)、ケーブルシース、鉄道レール、
橋梁の鉄骨などが腐食されやすく、漏洩事故や構造物の強度低下につながる可能性がある。 - 電気機器の誤動作・故障: 迷走電流が制御回路や信号回路に流れ込むと、電気機器が誤動作したり、
故障したりする原因となる。 - 人体への感電リスク: 大地や金属体を流れる迷走電流に人が触れると、感電する危険性がある。
- 通信線への誘導障害: 迷走電流が流れる経路の近くにある通信線に電磁誘導を引き起こし、
通信品質の低下やノイズの原因となることがある。 - 地盤への影響: 長期間にわたる迷走電流の流出は、地盤の電気化学的特性を変化させる可能性も指摘されている。
迷走電流対策例
- 直流電化鉄道:
- レールと大地の間の絶縁強化
- 帰線電流の回収率向上(ブースター変圧器の設置など)
- 漏洩電流検知システムの導入
- 排流設備の設置(レールから漏れた電流を意図的に回収する)
- 電気化学プラント:
- 電解槽の絶縁強化
- 漏洩電流監視システムの導入
- 犠牲陽極法や外部電源方式による電気防食
- 溶接機:
- 電気設備全般: