入力負担についての基礎知識まとめ

継電器の入力負担は、計器用変成器(CT/VT)から引き出す電力の消費量であり
VA(ボルトアンペア)で表される。
これは、単に電力消費量だけでなく、システム全体の精度、安定性、信頼性に直結する重要な要素となる。

「入力負担」が必要な理由

1.計器用変成器(CT/VT)の選定
変流器(CT)計器用変圧器(VT)
高電圧・大電流を安全な低電圧・小電流に変換し、継電器や計測器に供給する。
これらの変成器にはそれぞれ「定格負担(rated burden)」という仕様があり
変成器が供給できる最大電力容量を示す。

接続される全ての継電器や計測器の「入力負担」の合計が、計器用変成器の「定格負担」を超えてはいけない。
超えてしまうと、変成器が飽和したり、誤差が増大したり、最悪の場合、焼損する可能性がある。

特に、CTの場合、入力負担が大きすぎると
CTの二次側開放電圧が高くなり危険な状態になったり測定誤差が大きくなったりする。

2.保護システムの正確性
継電器が正確に動作するためには、安定した電圧・電流信号が供給される必要がある。
入力負担が適切でない場合、継電器への入力信号が歪んだり、電圧降下が生じたりして
継電器の動作特性(動作値、動作時間、位相特性など)に悪影響を及ぼす可能性がある。
これにより、本来保護すべき事故を検出できなかったり、逆に誤動作したりするリスクが高まる。

3.経済性
必要以上に定格負担の大きい計器用変成器を選定すると、コストが増加する。
適切な入力負担を把握することで、最適な容量の変成器を選定し、コストを抑えることができる。

入力負担の定義と測定

  • 定義
    JISC4602:2017「高圧受電用過電流継電器」では
    「定格値負担(rated burden)」を
    「継電器の定格入力電流に対する負担でありボルトアンペア(VA)で表す」と定義している。

  • 単位
    主にVA(ボルトアンペア)。
    ※直流回路の継電器の場合はW(ワット)で示されることもある。

  • 測定
    継電器の入力負担は、メーカーの仕様書に記載されている。
    実際のシステムでは、接続される全ての機器の入力負担を合計して
    CTやVTの定格負担と比較する必要がある。

厳密な現場測定では、試験器を用いて継電器に定格電流(電圧)を流し
その時の電圧降下(電流)からオームの法則を用いて計算することも可能。

主な入力負担の種類(CT、VTの場合)

継電器が接続される計器用変成器によって
入力負担の捉え方が少し異なる。

変流器(CT)の入力負担(VA)

電流が流れる回路なので、そのインピーダンスと電流によって発生する電力損失として考えられる。

計算式

P=I2×Z or P=V×I

Iは継電器の定格電流(通常5Aまたは1A)
Zは継電器の内部インピーダンス。


例)ある継電器のCT入力負担が0.5VA(5A定格)と記載されている場合
  これは定格電流が流れた時に0.5VAの電力を消費するという意味。

計器用変圧器(VT)の入力負担(VA)

電圧が印加される回路なので、そのアドミタンス(またはインピーダンス)と
電圧によって発生する電力損失として考えられる。

計算式

P=V2/Z or P=V×I

Vは継電器の定格電圧(通常110Vなど)
Zは継電器の内部インピーダンス


例)ある継電器のVT入力負担が0.1VA(110V定格)と記載されている場合
  これは定格電圧が印加された時に0.1VAの電力を消費するという意味。

入力負担が問題になるケースと対策

  • 複数の継電器・計器を同一のCT/VTに接続する場合
    各機器の入力負担の合計が、CT/VTの定格負担を超えていないかを確認することが必須となる。
    合計が超える場合は
    ・より定格負担の大きいCT/VTを選定するか
    ・接続する機器を減らす
    ・または別のCT/VTから信号を取る
    などの対策が必要となる。

  • 長い配線を使用する場合
    CT/VTと継電器間の配線抵抗も入力負担の一部として考慮する必要がある。
    特に長距離の配線では、配線抵抗による電圧降下や電力損失が無視できなくなることがある。

対策としては、太いケーブルを使用したり、CT/VTを継電器の近くに設置したりすることが考えられる

  • 補助CTの使用
    特定の用途(例:単独運転検出など)で補助CTを挟む場合
    この補助CTも独自の入力負担を持つため、全体の負担計算に含める必要がある。
    補助CTの負担が大きいと、全体の位相特性に影響を与えることもある。
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