継電器の入力負担は、計器用変成器(CT/VT)から引き出す電力の消費量であり
VA(ボルトアンペア)で表される。
これは、単に電力消費量だけでなく、システム全体の精度、安定性、信頼性に直結する重要な要素となる。
1.計器用変成器(CT/VT)の選定
変流器(CT)や計器用変圧器(VT)は
高電圧・大電流を安全な低電圧・小電流に変換し、継電器や計測器に供給する。
これらの変成器にはそれぞれ「定格負担(rated burden)」という仕様があり
変成器が供給できる最大電力容量を示す。
接続される全ての継電器や計測器の「入力負担」の合計が、計器用変成器の「定格負担」を超えてはいけない。
超えてしまうと、変成器が飽和したり、誤差が増大したり、最悪の場合、焼損する可能性がある。
特に、CTの場合、入力負担が大きすぎると
CTの二次側開放電圧が高くなり危険な状態になったり測定誤差が大きくなったりする。
2.保護システムの正確性
継電器が正確に動作するためには、安定した電圧・電流信号が供給される必要がある。
入力負担が適切でない場合、継電器への入力信号が歪んだり、電圧降下が生じたりして
継電器の動作特性(動作値、動作時間、位相特性など)に悪影響を及ぼす可能性がある。
これにより、本来保護すべき事故を検出できなかったり、逆に誤動作したりするリスクが高まる。
3.経済性
必要以上に定格負担の大きい計器用変成器を選定すると、コストが増加する。
適切な入力負担を把握することで、最適な容量の変成器を選定し、コストを抑えることができる。
継電器が接続される計器用変成器によって
入力負担の捉え方が少し異なる。
変流器(CT)の入力負担(VA)
電流が流れる回路なので、そのインピーダンスと電流によって発生する電力損失として考えられる。
計算式
P=I2×Z or P=V×I
Iは継電器の定格電流(通常5Aまたは1A)
Zは継電器の内部インピーダンス。
例)ある継電器のCT入力負担が0.5VA(5A定格)と記載されている場合
これは定格電流が流れた時に0.5VAの電力を消費するという意味。
計器用変圧器(VT)の入力負担(VA)
電圧が印加される回路なので、そのアドミタンス(またはインピーダンス)と
電圧によって発生する電力損失として考えられる。
計算式
P=V2/Z or P=V×I
Vは継電器の定格電圧(通常110Vなど)
Zは継電器の内部インピーダンス
例)ある継電器のVT入力負担が0.1VA(110V定格)と記載されている場合
これは定格電圧が印加された時に0.1VAの電力を消費するという意味。