漏れ電流(ろうでんりゅう、Leakage Current)は
電気機器や回路において本来の回路以外の経路(例えば絶縁体表面や内部、アース線など)を通って流れてしまう
意図しない微小な電流のこと。
漏れ電流が発生する主な理由は以下の通り。
絶縁材料の劣化
長期間の使用や高温多湿などの環境要因により、電気機器の絶縁材が劣化すると
本来電気を通さないはずの部分から電流が漏れ出すことがある。
接続の不具合
配線が緩んでいたり、不適切な接続がされていたりする
電流が正規の経路から外れて流れる可能性がある。
湿度の影響
高湿度の環境下では、絶縁体の表面に水分が付着することで
絶縁性能が低下して漏れ電流が増加することがある。
浮遊容量(静電容量)
交流回路では、電線や部品と大地との間に存在する微小な静電容量を介して電流が流れることがある。
特にインバータなどの高周波を使用する機器では、この静電容量による漏れ電流が問題になることがある。
ノイズフィルタ
多くの電気機器にはノイズを抑制するためのフィルタが内蔵されているが
このフィルタがアース線に接続されている場合、フィルタを介して漏れ電流が発生することがある。
漏れ電流は、その経路や測定箇所によっていくつかの種類に分類される。
漏れ電流は通常は微小だが、放置すると以下のような危険性がある。
漏れ電流の測定には、主に漏れ電流用クランプ電流計(リーククランプメータ)が用いられる。
電源供給線を複数本まとめてクランプする方法
単相であれば2本(L相とN相)、三相であれば3本(U, V, W相)をまとめてクランプする。
通常、電源から負荷に流れる電流と、負荷から電源に戻る電流は大きさが同じで向きが逆のため
互いに打ち消し合い、漏れ電流がない場合はゼロに近い値を示す。
もし漏れ電流があると、その分の電流が打ち消されずに残り、測定値として表示される。
接地線のみをクランプする方法
機器の絶縁を通じて大地に流れる漏れ電流は接地線を通ることが多いため
接地線だけをクランプすることで漏れ電流を測定できる。
※漏れ電流は必ずしも接地線のみを通るわけではない点に注意が必要。
測定時の注意点:
漏れ電流によるトラブルを防ぐためには、以下のような対策が有効となる。
漏電遮断器の設置・交換
漏れ電流を検知して自動的に回路を遮断する漏電遮断器を設置する。
インバータなどの高周波成分を含む機器を使用する場合は
高周波に対応した漏電遮断器への交換が必要な場合がある。
また、漏電遮断器の感度電流を許容できる範囲で上げることも検討される。
絶縁の強化・点検
定期的に電気機器や配線の絶縁状態を確認し、劣化が見られる場合は修理や交換を行う。
二重絶縁や補強絶縁などの対策が施された機器を選ぶことも重要となる。
適切な接地(アース)
機器を適切に接地することで、漏れ電流を安全に大地に逃がし
感電のリスクを低減する。
特に医療機器では、等電位接地により導体間の電位差を低減する対策がとられる。
配線の見直し
長距離配線は静電容量による漏れ電流が増加しやすいため
可能な限り短くし、対地浮遊容量の小さいケーブルを使用する。
インバータの設定調整
インバータを使用している場合、キャリア周波数を下げることで漏れ電流を低減できることがある。
ただし、モーター騒音が増加する可能性があるので、バランスを考慮する必要がある。
ノイズフィルタの接地設定
インバータ内蔵のノイズフィルタからの漏れ電流が多い場合
ノイズフィルタの接地スイッチをオフにすることも選択肢となるが、ノイズ抑制効果は低下する。
漏れ電流の限度値は、製品のカテゴリーや用途によって様々な安全規格で定められている。
特に、感電の危険性に関わる重要な試験項目として
ほとんどの安全規格で漏れ電流試験が義務付けられている。