漏電遮断器(ELCB)とは
漏電による感電事故や火災が発生する前に、漏洩電流で動作する低圧用遮断器
一般的な略称としてはELCB(Earth-Leakage Circuit Breaker)
回路的には配線用遮断器(MCCB)にZCTを内蔵することで
漏電遮断器機能を持たせたものとなる。
MCCBとの外形的な違いはテストボタンの有無

ELCBの種類
感度と動作時間によって種類が存在する
●高感度形ー高速形 (30mA or 15mAで0.1秒以内)
●高感度形ー時延形 (30mA or 15mAで0.3秒~0.8秒以内)
●中感度形ー高速形 (100mA or 200mA nor 300mA で0.1秒以内)
各種回路用に使い分けて保護協調をとるよう心掛けること
ELCBによる保護協調の例

●保護協調の問題が起きない場合
低圧の分電盤では上図のように主回路にELCBを使用し、分岐回路にMCCBを使用するとき
●保護協調の問題が起きる場合
分岐回路にもELCBを使用した場合
→分岐回路を先に選択遮断する必要がある(=分岐回路を主回路より早く遮断)
例)主回路に高感度形ー時延形のELCBを、分岐回路に高感度形ー高速形を使用することで
保護協調をとることができる。
漏電遮断器(ELCB)と漏電リレーの違い
漏電リレーは遮断は行わず漏電検出機能のみを有する。
ZCTと、リレー部を組み合わせて使用し、ZCTで漏電を検出し
漏電時にリレー部が信号を送る。

漏電遮断器の不要動作(誤動作)原因
配線方法
分電盤や開閉器盤で、盤下部から配線を入れる場合、盤の両側から電線を通すと、流れる電流によって磁束が発生し、ELCB内部のZCT(零相変流器)二次巻線と鎖交して二次出力を生じさせ不要動作の原因となる。
特に大電流時はこの影響が大きくなる。
対策→電源側と負荷側を一括して配線すること(下記図参照)

インバータによる影響
インバータは、交流を整流したあと、トランジスタでスイッチして交流化するため
高周波成分を発生する。
この高周波成分が対地静電容量によって常に流れ、対地静電容量が大きくなり高周波成分の影響が強くなると
ELCBが不要動作することがある。
対策として、インバータ回路で使用するELCBは、通常よりも動作感度電流の強いものを選定するか
高周波成分の影響を受けにくい「高周波・サージ対応型」のELCBを採用する。
※同じキャリア周波数でもスイッチング速度の速い素子を使用したものや400Vインバータのほうが200Vインバータよりもノイズレベルが高いので、漏れ電流拡大が大きくなる

図:インバータの高周波成分による漏れ電流
保護協調のとれていないもの
左図のA点で地絡事故が発生したとき、事故の発生した電路のELCB2だけを動作させ(ELCB1、3は動作しない)
事故回路を選択遮断させ、異常部分を健全回路から切り離すことを保護協調という。
左図のELCB1、2は、ともに動作時間0.1s以内の高速形で、定格感度電流がそれぞれ200mA、30mAなので
動作特性は右に示すとおりになる。
A点の地絡電流が30mA以上100mA未満であれば、定格感度電流が200mAであるELCB1は動作せず
30mAであるELCB2のみ動作する。
一方、地絡電流が200mA以上の場合は、ELCB1、2ともに動作し、保護協調がとれていないことになる。
したがって、ELCBの保護協調には定格感度電流だけでなく、動作時間を考慮しなければならない。
対策→幹線のELCB1は高速形ではなく、動作時間0.3sから0.8sの遅延形を採用する


左図:ELCB保護協調例 右:ELCBの動作特性

新電気2018年11月号 漏電遮断器のトリップその4 より一部引用

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