高圧ケーブルは、高い電圧(一般的に直流750V、交流600Vを超えるもの)の電力を
送電・配電するために用いられるケーブル。
ケーブルの構造は電技第1条(用語の定義)では
「電気導体を絶縁物で保護した上をさらに保護被覆で保護したもの」と定義としている。
ケーブルの構造は下記図参照
左:6kV3心一括形CVケーブル 右:トリプレックス形CVケーブル
新電気2019.9 電線・ケーブル詳細解説より画像引用
高圧ケーブルの構造概略
内部半導電層設置の目的
① 導体はより線で、その表面は平滑でないため、絶縁体に均一な電界が印加されない。
導体の周りに半導電性材料を導体と一緒に押し出して形成することにより
導体表面を平滑な円として、突起物などがないようにして、均一に電界が加わるようにしている。
② 負荷の変動によりケーブル導体は、膨張と収縮を毎日繰り返している。
そのため、導体と絶縁体との間に空隙が生じ、部分放電が発生して絶縁体が劣化することを防止する。
絶縁体設置の目的
電力ケーブルの絶縁体としては、架橋ポリエチレンが主流である。
ポリエチレンの電気特性が優れていることはよく知られているが
ケーブル絶縁体として使用されている低密度ポリエチレンの結晶融点は
110〜115℃付近で軟化する欠点がある。
架橋ポリエチレンは、ポリエチレンの分子間を架橋させて
ポリエチレンが融点以上に過熱されると結晶状態になっていた分子が
弾き放され液状となる欠点を解消して、融点を超えても液状とならず熱軟化性が大幅に改善されている。
このような分子間結合を架橋(Crosslinked)という。
※架橋ポリエチレンは、温度特性に優れ、常時90℃、連続使用で30〜50年に耐える性能を持っている。
外部半導電層の目的
①絶縁体と遮へい銅テープ間の機械的な緩衝材として施されている。
②外部半導電層の施し方は、テープ式または内部半導電層・絶縁体・外部半導電層を
一括して押し出す三層同時押出方式の2タイプがある。
下記図に内・外部半導電層による分類を示す。
新電気2019.9 電線・ケーブル詳細解説より画像引用
E-TタイプとE-Eタイプについて
E-TタイプとE-Eタイプは
内部半導電層と外部半導電層の加工方法(押出式かテープ巻き式か)の違いで
E-Eタイプは3層(内部半導電層、絶縁体、外部半導電層)を同時に押出加工することで
絶縁体との界面を平滑にし、水トリー(絶縁体の劣化現象)耐性を向上させている。
近年、水トリー対策で多くの需要家で推奨されている。
遮へい層の設置目的
①絶縁体に加わる電界方向を均一にして、耐電圧性能を高める。
②通信線への静電誘導を防止する。
③高電圧になると静電誘導により人体に危険を及ぼすため
金属遮へい層を設けて接地する必要がある。
この接地種別は
電技解釈第123条【地中電線の被覆金属体等の接地】より
D種接地工事とし、ケーブル内で発生した一線地絡電流を安全に流さなければならない。
高圧ケーブルのサイズ選定は、主に以下の2つの条件を両方満たす必要がある。
常時許容電流
最大負荷電流に対して、ケーブルが安全に流せる電流値が十分大きいこと。
周囲温度や布設方式によって許容電流は変動する。
短絡時許容電流
短絡事故時に流れる大電流に対して、ケーブルが損傷しないこと。
短絡電流の大きさや継続時間を考慮して選定する。
電力会社の過電流継電器(OCR)の動作時間も重要な要素となる。
※ケーブルの許容電流や短絡時許容電流については
各メーカーの仕様書や電気設備の技術基準、内線規程などを参照して慎重に選定する必要がある。
高圧ケーブルの健全性を確認するために、様々な試験が行われる。
高圧ケーブルは経年劣化するため、定期的な点検と適切な保守管理が不可欠となる。