高圧ケーブルについての基礎知識まとめ

高圧ケーブルは、高い電圧(一般的に直流750V、交流600Vを超えるもの)の電力を
送電・配電するために用いられるケーブル。

高圧ケーブルの構造

ケーブルの構造は電技第1条(用語の定義)では
電気導体を絶縁物で保護した上をさらに保護被覆で保護したもの」と定義としている。
ケーブルの構造は下記図参照

左:6kV3心一括形CVケーブル 右:トリプレックス形CVケーブル

新電気2019.9 電線・ケーブル詳細解説より画像引用

高圧ケーブルの構造概略

  • 導体
    電流を流す部分で、主に銅が使われる。
  • 内部半導電層
    導体と絶縁体の間に設けられ、電界を均一にし
    絶縁体へのストレスを緩和する役割がある。
  • 絶縁体
    高電圧から周囲を隔離し、漏電を防ぐ最も重要な部分
    主に架橋ポリエチレン(CVケーブルの「CV」)が使用される。
  • 外部半導電層
    絶縁体と遮蔽層の間に設けられ、ここでも電界を均一にする役割がある。
  • 遮蔽層(シールド)
    外部からのノイズの影響を抑え、ケーブル内部の電界を外部に漏らさないようにするための金属層。
    軟銅テープなどが用いられる。
  • 押さえテープ
    遮蔽層を固定する。
  • シース(外被)
    ケーブル全体を保護する外側の被覆で、ビニル(CVケーブルの「V」)などが使用される。
    耐候性や難燃性も考慮される。

内部半導電層設置の目的

① 導体はより線で、その表面は平滑でないため、絶縁体に均一な電界が印加されない。
導体の周りに半導電性材料を導体と一緒に押し出して形成することにより
導体表面を平滑な円として、突起物などがないようにして、均一に電界が加わるようにしている。

② 負荷の変動によりケーブル導体は、膨張と収縮を毎日繰り返している
そのため、導体と絶縁体との間に空隙が生じ、部分放電が発生して絶縁体が劣化することを防止する。

絶縁体設置の目的

電力ケーブルの絶縁体としては、架橋ポリエチレンが主流である。
ポリエチレンの電気特性が優れていることはよく知られているが
ケーブル絶縁体として使用されている低密度ポリエチレンの結晶融点は
110〜115℃付近で軟化する欠点がある。

架橋ポリエチレンは、ポリエチレンの分子間を架橋させて
ポリエチレンが融点以上に過熱されると結晶状態になっていた分子が
弾き放され液状となる欠点を解消して、融点を超えても液状とならず熱軟化性が大幅に改善されている
このような分子間結合を架橋(Crosslinked)という。

※架橋ポリエチレンは、温度特性に優れ、常時90℃、連続使用で30〜50年に耐える性能を持っている。

外部半導電層の目的

①絶縁体と遮へい銅テープ間の機械的な緩衝材として施されている。

②外部半導電層の施し方は、テープ式または内部半導電層・絶縁体・外部半導電層を
一括して押し出す三層同時押出方式の2タイプがある。
下記図に内・外部半導電層による分類を示す。

新電気2019.9 電線・ケーブル詳細解説より画像引用

E-TタイプとE-Eタイプについて

E-TタイプとE-Eタイプは
内部半導電層と外部半導電層の加工方法(押出式かテープ巻き式か)の違いで
E-Eタイプは3層(内部半導電層、絶縁体、外部半導電層)を同時に押出加工することで
絶縁体との界面を平滑にし、水トリー(絶縁体の劣化現象)耐性を向上させている。
近年、水トリー対策で多くの需要家で推奨されている。

遮へい層の設置目的

①絶縁体に加わる電界方向を均一にして、耐電圧性能を高める。
②通信線への静電誘導を防止する。
③高電圧になると静電誘導により人体に危険を及ぼすため
 金属遮へい層を設けて接地する必要がある。

この接地種別は
電技解釈第123条【地中電線の被覆金属体等の接地】より
D種接地工事とし、ケーブル内で発生した一線地絡電流を安全に流さなければならない。

高圧ケーブルの選定方法

高圧ケーブルのサイズ選定は、主に以下の2つの条件を両方満たす必要がある。

常時許容電流

最大負荷電流に対して、ケーブルが安全に流せる電流値が十分大きいこと。
周囲温度や布設方式によって許容電流は変動する。

短絡時許容電流

短絡事故時に流れる大電流に対して、ケーブルが損傷しないこと。
短絡電流の大きさや継続時間を考慮して選定する。
電力会社の過電流継電器(OCR)の動作時間も重要な要素となる。

※ケーブルの許容電流や短絡時許容電流については
各メーカーの仕様書や電気設備の技術基準、内線規程などを参照して慎重に選定する必要がある。

高圧ケーブルの試験方法

高圧ケーブルの健全性を確認するために、様々な試験が行われる。

  • 絶縁抵抗測定
    絶縁抵抗計を用いて、導体と遮蔽層(または大地)間の絶縁抵抗を測定する。
    低すぎると漏電の兆候となる。

  • 耐電圧試験
    ケーブルに規定の交流または直流電圧を印加し、絶縁破壊がないかを確認する。
    定期点検や新設時、修理後などに行われる。

  • 屈曲浸水耐電圧試験
    ケーブルを曲げた状態で水中に浸し、耐電圧試験を行うことで
    水トリーなどによる劣化がないかを確認する。

  • tanδ(誘電正接)測定
    ケーブルの絶縁体劣化度合いを診断するために、絶縁体の誘電正接を測定する。
    活線下で測定できる方法もある。

  • 部分放電試験
    ケーブル内部の微細な欠陥から発生する部分放電を検出し、絶縁劣化の兆候を早期に発見する。

高圧ケーブルの保守管理

高圧ケーブルは経年劣化するため、定期的な点検と適切な保守管理が不可欠となる。

  • 定期点検
    目視点検(ひび割れ、変色、膨らみなどの外観異常の確認)、絶縁抵抗測定
    部分放電測定などを定期的に実施する。
    特に使用年数が10年以上のケーブルや、水の影響を受ける環境にあるケーブルは、より頻繁な点検が推奨される。
  • 劣化診断
    絶縁抵抗やtanδ、部分放電などの測定結果から、ケーブルの劣化度合いを診断する。
  • 交換のタイミング
    定期点検で絶縁抵抗値が基準値以下になった場合や、外観に著しい異常が見られる場合
    または設計寿命に近づいた場合などは、事故を未然に防ぐためにケーブルの交換が必要となる。
  • 接続部の管理
    ケーブルの接続部分は、電気抵抗の増加や絶縁性能の低下を防ぐため
    適切な器具を使用して確実に接続し、定期的に点検する必要がある。
  • 環境管理
    高圧ケーブルの設置場所は、適切な温度と湿度を保ち
    ホコリや汚れが溜まらないように清掃することで、設備の寿命を延ばすことができる。
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