変圧器のパーセントインピーダンス(%Z)は、電力システム設計や運用において非常に重要な指標となる。
これは、単に変圧器の内部抵抗を示すだけでなく、短絡電流の計算、変圧器の並行運転、電圧変動率の評価など
多岐にわたる用途で利用されている。
パーセントインピーダンス(%Z)は
「定格電流が変圧器に流れたときに、変圧器の内部インピーダンスによって生じる電圧降下が、定格電圧に対して何パーセントになるか」を示す値のこと。
より具体的には、以下の実験的な測定値から計算される。
式で表すと(単相の場合)
%Z=En Zs In×100[%]
または、定格容量 Pn [VA]、定格電圧 Vn [V]、短絡インピーダンス Zs [Ω] を用いて、
%Z=Vn2PnZs×100[%]
となる。
インピーダンスをオーム(Ω)で直接表すのではなく
パーセントで表すことにはいくつかの大きなメリットがある。
系統全体での比較が容易
電圧や容量が異なる変圧器や機器が混在する電力系統において
それぞれの機器のインピーダンスを相対的な値(パーセント)で表すことで
基準容量と基準電圧を統一すれば、共通の土台で比較・計算ができるようになる。
※オーム値だと、変圧比によって値が大きく変わってしまうため、計算が煩雑になる。
短絡電流の計算が容易
パーセントインピーダンスを用いると
短絡事故発生時の短絡電流の計算が非常に簡単になる。
これは、電力設備の保護設計において不可欠な情報となる。
電圧変動率の目安になる
パーセントインピーダンスが大きいほど
定格電流が流れたときの電圧降下が大きくなるため
電圧変動率も大きくなる傾向がある。
並行運転時の負荷分担の目安
複数の変圧器を並行運転させる場合、それぞれの変圧器のパーセントインピーダンスが異なると
負荷の分担が不均等になる。パーセントインピーダンスが小さい変圧器ほど
より多くの電流が流れ、大きな負荷を分担することになる。
そのため、並行運転には同じパーセントインピーダンスの変圧器を使用することが望ましいとされている。
パーセントインピーダンスは、主に以下の用途で活用される
短絡電流の計算
電力系統で短絡事故が発生した場合、非常に大きな電流(短絡電流)が流れる。
この短絡電流の大きさを正確に計算することは
●遮断器(ブレーカー)の選定
●保護協調の検討
●ケーブルや母線の許容電流の確認
など電力設備の安全設計において最も重要。
短絡電流 Is は、定格電流 In とパーセントインピーダンス %Z を用いて
以下の簡潔な式で求めることができる。
つまり、パーセントインピーダンスが小さいほど、短絡電流は大きくなる。
変圧器の並行運転
複数の変圧器を並行して運転させる場合
各変圧器の容量に応じた負荷分担をさせるために
パーセントインピーダンスの値がほぼ等しいものを選ぶことが推奨される。
もし%Zが大きく異なると、小さい方の変圧器に過大な電流が流れ
過負荷になる可能性がある。
電圧変動率の評価
変圧器に負荷が接続され、電流が流れると、内部インピーダンスによる電圧降下が発生し
出力電圧が定格電圧から変動する。この電圧降下の程度はパーセントインピーダンスと関係があり
電圧変動率の計算に用いられる。
保護継電器の協調
電力系統全体の保護システムを設計する際、各機器のパーセントインピーダンスを基に
どの地点でどれくらいの短絡電流が流れるかを計算し、それに基づいて保護継電器(リレー)の
動作設定を調整する。
系統シミュレーション
大規模な電力系統の安定度解析や事故解析を行う際
各機器のインピーダンスをパーセント値で統一し
共通の基準容量で換算して計算を行う「単位法(Per-Unit System)」が用いられる。
パーセントインピーダンスはこの単位法の概念と密接に関連しています。
設計上のトレードオフ
変圧器の設計においては、%Zを大きくすれば短絡電流を抑制できるが
電圧変動が大きくなるというトレードオフがある。
逆に%Zを小さくすれば電圧変動は抑えられるが短絡電流が大きくなり
遮断器などの保護装置の選定が難しくなる可能性がある。
そのため、用途や接続される系統の特性に合わせて適切な%Zが設定される。