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変圧器の%インピーダンスについての基礎知識まとめ

変圧器のパーセントインピーダンス(%Z)は、電力システム設計や運用において非常に重要な指標となる。
これは、単に変圧器の内部抵抗を示すだけでなく、短絡電流の計算、変圧器の並行運転、電圧変動率の評価など
多岐にわたる用途で利用されている。

目次

%インピーダンスについての概略

パーセントインピーダンス(%Z)は

定格電流が変圧器に流れたときに、変圧器の内部インピーダンスによって生じる電圧降下が、定格電圧に対して何パーセントになるか」を示す値のこと。

より具体的には、以下の実験的な測定値から計算される。

  1. 二次側を短絡する
    変圧器の二次巻線(低圧側)を意図的に短絡させる。
  2. 一次側に電圧を印加する
    一次巻線(高圧側)から徐々に電圧を上げていく。
  3. 定格電流が流れる電圧を測定
    二次側に定格電流が流れたときの一次側印加電圧
    (これを「インピーダンス電圧」または「短絡電圧」と呼ぶ)を測定する。
  4. 百分率で表現
    測定したインピーダンス電圧が、一次側の定格電圧に対して何パーセントになるかを計算したもの
    パーセントインピーダンスとなる。

式で表すと(単相の場合)

%Z=En​ Zs ​In​​×100[%]

  • Zs​: 変圧器の短絡インピーダンス(オーム換算値)
  • In​: 変圧器の定格電流
  • En​: 変圧器の定格電圧
  • Zs​In​: 定格電流が流れたときの電圧降下

または、定格容量 Pn​ [VA]、定格電圧 Vn​ [V]、短絡インピーダンス Zs​ [Ω] を用いて、

%Z=Vn2​Pn​Zs​​×100[%]

となる。

三相変圧器の場合は、相電圧線間電圧、定格容量の扱いに注意が必要となる。

値をパーセントで表すメリット

インピーダンスをオーム(Ω)で直接表すのではなく
パーセントで表すことにはいくつかの大きなメリットがある。

系統全体での比較が容易

電圧や容量が異なる変圧器や機器が混在する電力系統において
それぞれの機器のインピーダンスを相対的な値(パーセント)で表すことで
基準容量と基準電圧を統一すれば、共通の土台で比較・計算ができるようになる。
※オーム値だと、変圧比によって値が大きく変わってしまうため、計算が煩雑になる

短絡電流の計算が容易

パーセントインピーダンスを用いると
短絡事故発生時の短絡電流の計算が非常に簡単になる。
これは、電力設備の保護設計において不可欠な情報となる。

電圧変動率の目安になる

パーセントインピーダンスが大きいほど
定格電流が流れたときの電圧降下が大きくなるため
電圧変動率も大きくなる傾向がある。

並行運転時の負荷分担の目安

複数の変圧器を並行運転させる場合、それぞれの変圧器のパーセントインピーダンスが異なると
負荷の分担が不均等になる。パーセントインピーダンスが小さい変圧器ほど
より多くの電流が流れ、大きな負荷を分担すること
になる。
そのため、並行運転には同じパーセントインピーダンスの変圧器を使用することが望ましいとされている。

パーセントインピーダンスの主な用途

パーセントインピーダンスは、主に以下の用途で活用される

短絡電流の計算

電力系統で短絡事故が発生した場合、非常に大きな電流(短絡電流)が流れる。
この短絡電流の大きさを正確に計算することは
遮断器(ブレーカー)の選定
保護協調の検討
ケーブルや母線の許容電流の確認
など電力設備の安全設計において最も重要。


短絡電流 Is​ は、定格電流 In​ とパーセントインピーダンス %Z を用いて
以下の簡潔な式で求めることができる。

つまり、パーセントインピーダンスが小さいほど、短絡電流は大きくなる。

変圧器の並行運転

複数の変圧器を並行して運転させる場合
各変圧器の容量に応じた負荷分担をさせるために
パーセントインピーダンスの値がほぼ等しいものを選ぶことが推奨される。
もし%Zが大きく異なると、小さい方の変圧器に過大な電流が流れ
過負荷になる可能性がある。

電圧変動率の評価

変圧器に負荷が接続され、電流が流れると、内部インピーダンスによる電圧降下が発生し
出力電圧が定格電圧から変動する。この電圧降下の程度はパーセントインピーダンスと関係があり
電圧変動率の計算に用いられる。

保護継電器の協調

電力系統全体の保護システムを設計する際、各機器のパーセントインピーダンスを基に
どの地点でどれくらいの短絡電流が流れるかを計算し、それに基づいて保護継電器(リレー)
動作設定を調整する。

系統シミュレーション

大規模な電力系統の安定度解析や事故解析を行う際
各機器のインピーダンスをパーセント値で統一し
共通の基準容量で換算して計算を行う「単位法(Per-Unit System)」が用いられる。
パーセントインピーダンスはこの単位法の概念と密接に関連しています。

パーセントインピーダンスの値と特性

  • 標準的な値
    一般的な配電用変圧器のパーセントインピーダンスは、用途や容量によって異なるが
    およそ3%~10%程度の範囲に収まることが多い。

  • 値の大小の意味
    • %Zが小さい: 内部インピーダンスが小さいことを意味し、短絡電流は大きくなり、電圧変動率は小さくなる。
    • %Zが大きい: 内部インピーダンスが大きいことを意味し、短絡電流は小さくなり、電圧変動率は大きくなる。

設計上のトレードオフ
変圧器の設計においては、%Zを大きくすれば短絡電流を抑制できるが
電圧変動が大きくなるというトレードオフがある。
逆に%Zを小さくすれば電圧変動は抑えられるが短絡電流が大きくなり
遮断器などの保護装置の選定が難しくなる可能性がある。
そのため、用途や接続される系統の特性に合わせて適切な%Zが設定される。

国内の標準的な%Zの値(参考)

油入り変圧器とモールド変圧器の%Zの比較表(参考)

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