過電流保護には過負荷保護と短絡保護があるが、両者の違いはその電流値と持続時間に
ある。過負荷では定格の100%を超える電流が長時間流れるが
短絡故障では数千〜1万Aの電流が瞬時に流れる。
過電流保護協調では過負荷と短絡という異なる様相の故障を同時に考慮する必要があり
設備の運用には慎重に行う必要がある。
油入変圧器の場合
油入変圧器運転指針の一般的な運用上の短時間過負荷の最高限度は150%(1.5倍)と定められている。
過負荷にかける前の温度(事前負荷の大きさ)や周囲温度、そして過負荷を継続する時間によって
許容される上限値(特性曲線)が決まりる。
これを超えると、巻線温度や油温が許容最高温度を超え
絶縁物の寿命を著しく縮める(または即座に損傷する)ことになる。JEC-2200の適用指針より一部引用
保護装置は許容範囲内の過負荷、変圧器の突入電流や電動機等の始動電流のような短時間過負荷では動作
しないが、それ以上では動作して変圧器を保護するよう施設する必要がある。
その他電気機器
変圧器と同様に過負荷可能な電流値や時間等の許容値(これを過負荷耐量と呼ぶ)が決まっており
保護装置は過負荷耐量以上で動作し対象機器を保護するよう施設する必要がある。
補足
遮断器(VCBやMCCB)、断路器(DS)、電流開閉器、あるいはケーブル(電線)など
すべての機器に熱的・機械的な「過負荷耐量(短時間耐量)」が存在する。
保護装置の動作特性(I-t 特性曲線)が、これら保護対象機器の
耐量曲線の「左下」を通るように施設する必要がある。
保護協調の目的は配電線など他者への波及防止だけでなく
万一故障が発生した場合、故障部分のみを切り離して健全部分は運転を継続し、故障の拡大を防ぐことである。
図:故障時の保護協調
上図のように
範囲Ⅳ内の故障は配線用遮断器 ④ で
範囲Ⅲ内の故障は主幹配線用遮断器 ③ で
範囲Ⅱ内の故障は限流ヒューズ付負荷開閉器 ② で
範囲Ⅰ内の故障は受電用遮断器 ① で
段階的に動作するよう施設する必要がある。
また、電気機器には過負荷時の保護協調と同様に短時間耐量が定められており
機器の損傷拡大を防止するためには、機器の耐量以下で遮断動作を行う必要がある。
上記に加え、短絡電流を遮断できなければ意味がないので
受電用遮断器は故障地点の短絡電流を上回る遮断容量を持つ必要がある。
基本的な考え方
・保護装置の動作値や動作時間は、電路や機器の過負荷耐量以内であること
・保護装置は、突入電流や始動電流で誤動作しないこと
・電源から遠い下位系の負荷から遮断し、故障の局限化を図ること
・受電用遮断器の遮断容量は、設置点の短絡容量以上であること
② 保護装置とその特性
高圧交流遮断器と限流ヒューズの違い
左図:真空遮断器 右図:高圧交流負荷開閉器
過電流の保護装置としては高圧交流遮断器、限流ヒューズ、配線用遮断器(MCCB)等があるが
それぞれの違いは下記のようになる。
過電流の保護装置の各特長概略
遮断器は短絡電流の遮断が可能で、繰り返し遮断ができる。
※開閉回数には限度があり多頻度開閉には適していない。
また、遮断動作用の電源と故障検出用の変流器(CT)および過電流継電器(OCR)が必要で
機械的な遮断機構があるため限流ヒューズより遮断時間を要する。
限流ヒューズはヒューズエレメントが溶断することで電流の遮断を行うので遮断の度に変更が必要となるが
短絡電流を制限できるうえ半サイクルで遮断できる。
高圧交流負荷開閉器(LBS)と組み合わせて限流ヒューズ付高圧交流負荷開閉器として使用されることが多い。
MCCBは低圧用の遮断器で、高圧用の遮断器と異なり
故障検出部と動作部を内蔵しており、本体だけで遮断が可能である。
主遮断装置の使い分け
高圧受電設備の基本形態は、主遮断装置に遮断器を使用したCB形と
限流ヒューズと引外し装置付きのLBSを使い単純化・経済化を図ったPF・S形に大別される。
PF・S形は、キュービクル式高圧受電設備など比較的小容量(300 kV・A以下)の単純・簡易な設備に適用されるが一般用の限流ヒューズで全体を保護することになるため
小容量変圧器の二次側短絡時に保護協調がとれない場合があるので注意する。
高圧交流遮断器
遮断器は短絡等の故障電流の遮断能力を有する開閉器であり
通常の負荷開閉であればゼロクロス点でアークが消滅し開閉が完了するが
故障時はアークが継続するため消弧媒体でアークを冷却・拡散して消弧し遮断させる働きを持つ。
遮断器は機械的機構で消弧を伴う遮断動作を行うため、遮断時間は3 or 5サイクル必要となる。
限流ヒューズ
限流ヒューズは電力ヒューズ(PF:Power Fuse)とも呼ばれ
回路を切り離すだけでなく短絡電流の波高値を抑制する能力を有しており
限流ヒューズは磁器円筒の内部にヒューズエレメントをおき
その周りを消弧砂で充填した構造となっている。
限流ヒューズは遮断器と異なり、限流が可能なうえ半サイクル以下で遮断可能なので
過負荷耐量が小さい機器の保護に適しており
一般用のG形
変圧器の励磁突入電流を考慮したT形
電動機の始動電流を考慮したM形
コンデンサの充電電流を考慮したC形などの種類がある。(下表参照)
限流ヒューズの種類(JIS C 4604より引用)
| ヒューズの種類 | 不溶断電流 | 繰り返し過電流特性 |
| G (一般用) | 定格電流の1.3倍の電流で2h以内に溶断しない。 | — |
| T (変圧器用) | 定格電流の1.3倍の電流で2h以内に溶断しない。 | 定格電流の10倍の電流を0.1s通電し、これを100回繰り返しても溶断しない。 |
| M (電動機用) | 定格電流の1.3倍の電流で2h以内に溶断しない。 | 定格電流の5倍の電流を10s通電し、これを10 000回繰り返しても溶断しない。 |
| C (コンデンサ用) | 定格電流の2倍の電流で2h以内に溶断しない。 | 定格電流の70倍の電流を0.002s通電し、これを100回繰り返しても溶断しない。 |
限流ヒューズの選定では遮断器と同様に保護対象機器の過負荷耐量を考慮するとともに
組み合わせるLBSの通電容量や開閉能力も考慮して選定する。
配線用遮断器
図:MCCBの構造例
MCCBは低圧用の遮断器で、内部に引外し装置と開閉機構および消弧装置等をケースに組み込んでいる
その引外し特性はOCRと同様、過電流の大きさに反比例するような特性とが一般的となっている。
MCCBの選択と協調検討では、電動機等の始動電流で不要動作せず
それ以外では確実に動作して低圧側の故障が上位系に波及しないようにする必要がある。
過電流継電器
OCRは、入力電流が設定値以上となったときに動作する継電器であり
OCRの動作特性には瞬時特性と限時特性があり
入力電流値が設定値以上となったとき、瞬時特性は遅延なく動作するが
限時特性は電流値に応じた遅延時間をもって動作する。
限時特性には定限時特性、反限時特性、強反限時特性、超反限時特性等があり
定限時特性では電流値にかかわらず一定時間で動作し
反限時特性等では電流値が大きいときは短時間で、電流値が小さいときは長時間で動作する。
OCRを設定(整定という)するには
静止形では電子回路上でしきい値の変更を行うため、電流整定ダイヤル、時限整定ダイヤル等で整定を行う。
このダイヤルの名称についてはメーカーごとに異なっており、慣用的にタップとレバーと呼ばれることもある。
ディジタル形の場合、静止形と同じくダイヤルで設定する場合もあるが、ボタン等で設定するものもある。
計測用変流器
CTは、主回路の一次電流を計器や過電流継電器等に適した二次電流に変換するものであり
CTの仕様には、変流比(定格一次電流/二次電流)、過電流定数、定格負担、確度階級等がある。
定格一次電流は過負荷等を監視できるよう少なくとも受電設備の変圧器容量以上とする必要がある。
定格二次電流は1A定格も規定されているが、遮断器の電流引外しには3A以上必要なため、通常5Aとする。
過電流定数は、変流比誤差が-10%になる一次電流を定格電流で除した値をいい
n>10 などと表記する。
OCRを正常に動作させるためには、この一次電流値をこの地点の短絡電流以上とする切要があり
一般的には n>10 を選択することが多い
定格負担は、二次側に接続される計器や継電器等の負担により決定されるが
負担を半分にすると過電流定数を2倍にする効果があるため、過電流定数と合わせて検討する必要がある。
新電気2020年10月号「高圧受電設備の保護協調 入門 第 ② 回 過電流保護協調 その1」より一部引用
chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://dl.mitsubishielectric.co.jp/dl/fa/document/catalog/lvcb/yn-c-0657/y0657j2203.pdf
三菱ノーヒューズ遮断器・漏電遮断器技術資料より一部引用