励磁突入電流についての基礎知識まとめ

励磁突入電流について

励磁突入電流(れいじとつにゅうでんりゅう、Inrush Currentとも呼ばれます)とは
変圧器リアクトルなど、鉄心を持つ電気機器に電源が投入された瞬間に流れる
一時的で非常に大きな電流のこと。
定常状態の励磁電流(機器を磁化するために常に流れている電流)に比べて格段に大きく
場合によっては定格電流の数倍から数十倍にも達することがある。

励磁突入電流の発生原因

磁気飽和

変圧器などの鉄心は、ある一定以上の磁束密度になると、それ以上磁束を通しにくくなる性質(磁気飽和)がある。

電源投入時の磁束変化

電源が投入されると、電圧の大きさに応じた磁束が鉄心に発生しようとする。
電圧の時間積分によって磁束が決まりますが、電源投入時の電圧の位相によっては
通常発生する磁束の最大値の約2倍もの磁束が発生しようとすることがある。

残留磁束

電源を切った後も、鉄心には磁気として残っていることがある。次に電源を投入した際に、この残留磁束と同じ方向に新たに発生しようとする磁束が加わると、さらに大きな磁束が発生しようとする。

励磁突入電流の発生

上記の理由により、鉄心が飽和する領域をはるかに超える大きな磁束を発生させようとする力が働くと
鉄心が飽和しているため磁束が増えにくくなり、その不足分を補おうとして
電源から非常に大きな電流が流れ込む。
励磁突入電流

特に、電源投入時の電圧がゼロに近い位相で、かつ残留磁束が大きい場合に、励磁突入電流は最大となる傾向がある。

    励磁突入電流の影響

    励磁突入電流は短時間で減衰するが、その大きさから以下のような問題を引き起こす可能性がある。

    • 電圧低下: 大電流が流れることにより、系統のインピーダンス降下が発生し
      広範囲で瞬時的な電圧低下を引き起こすことがある。前述の瞬時電圧低下の原因の一つともなり得る。
    • 保護リレー・遮断器の誤動作・トリップ: 過電流継電器(OCR)などが励磁突入電流を過負荷と判断し
      本来遮断する必要のないときに誤って動作したり
      回路を遮断したりすることがある。
    • ヒューズの溶断・劣化: 大きな電流によってヒューズが溶断したり、劣化が進んだりすることがある。
    • 機器へのストレス: 電気機器や電力系統に電気的・機械的なストレスを与える可能性がある。
    • 高調波の発生: 励磁突入電流は歪んだ波形をしており、高調波成分を多く含むため
      他の機器に悪影響を与えることもある。

    励磁突入電流の対策

    • 投入抵抗器の使用: 変圧器などの一次側に一時的に抵抗を直列に挿入し
      突入電流を抑制した後に抵抗をバイパスする方法。
    • 投入位相制御: 電源電圧の位相を検知し、励磁突入電流が小さくなる位相(一般的に電圧が最大値となる位相)で
      スイッチを投入する方法です。真空遮断器などでこの機能を持つものがある。
    • 励磁突入電流抑制機能付き開閉器の使用: 励磁突入電流抑制に特化した機能を備えた開閉器を使用する。
    • 複数台の変圧器の順次投入: 容量の大きな変圧器を複数台設置している場合
      一度に全台に投入するのではなく、時間差を置いて順次投入すること
      個々の励磁突入電流のピークが重なるのを避ける方法。
    名無し管理事務所