保護継電器は、電気設備で発生する事故などにより変化する電圧、電流、周波数などを検出することで電気設備を
故障などから保護し、影響を一定の範囲に抑えるために使用するもの。
検出するために設定する値は整定値と表現される場合があり、主に6.6kV系の電気設備に使用される。
※保護継電器は保護リレーと呼ばれる場合もある。
以下、代表的な各継電器について後述する。
電気設備に規定以上の電流が発生すると発熱により、電路や機器の故障が想定される。
過電流は、想定以上の電力を継続して使用した場合や、電路や機器の短絡により発生する。
これらの状況が発生しないように
高圧の電気設備では過電流継電器(OCR:OverCurrent Relays)や
電力用ヒューズ(PF)を使用する。
一般的に300kVAを超える受電設備では過電流をOCRで検出し
遮断器を動作させることで設備を保護する。
計測する電流は、計器用変流器(CT)で電流変換を行いOCRに入力する。
一般的には、JIS C 4602(高圧受電用過電流継電器)に規定される過電流継電器が使用される。
また、保護継電器で使用するCTは過電流時の計測ができるように
保護用変流器または十分な過電流定数を持ったものを使用する必要がある。
限時要素と瞬時要素について
OCRの検出動作には、瞬時特性と限時特性などがある。
●瞬時特性
設定(整定)した電流の大きさ(一般的には、契約最大電力の500~1,500%)以上の
電流が一定時間継続したことを検出して動作
●反限時特性
電流の大きさが大きくなるに従って短時間で検出して動作
※電流の大きさの特性は、限時電流動作値に設定される
OCRには、どちらの要素で動作したのかを判断できる表示灯を搭載している。
実際に保護協調を行う際には、電力会社からの指示に基づく検討や
大規模な高圧の設備では遮断による設備停止の影響範囲を抑えたり
早期に原因を特定するために分岐する回路毎にOCRを設置する場合があるため
日本電気協会の高圧受電設備規程などを理解したうえで
動作値、動作時間を設定する必要がある。
電気設備の電路や設備で絶縁劣化や樹木などとの接触
低圧電源との接触(混触)すると、感電や、機器故障が想定される。
地絡が発生すると電路と大地との間で
地絡電圧(零相電圧)と地絡電流(零相電流)が発生します。
零相電圧は高電圧のため零相電圧検出装置(ZPD)
零相電流は、大電流のため零相変流器(ZCT)を用いて地絡継電器に入力します。
※地絡継電器は、地絡過電流継電器と呼ばれる場合がある。
また、一般的な電気設備では使用されないが
接地用計器用変圧器(EVT)で零相電圧を変換する方式もある。
主な地絡の種類
地絡検出は3種類に分かれる。
(1) 地絡(過電流)継電器(GR:Ground Relays/OCGR:Earth-fault OverCurrent Relays)
(2) 地絡過電圧継電器(OVGR:Earth-fault OverVoltage Relays)
(3) 地絡方向継電器(DGR:Earth-fault Directional Relays)
主に地絡(過電流)継電器が多く使用されているが
他回線事故の影響による誤動作防止として地絡方向継電器が使用される。
分散型電源では電力系統での地絡事故から発電機を保護する地絡過電圧継電器が使用される。
異常電圧には電路や設備の短絡による電圧低下や
発電機などによる電圧上昇などの事故がある。
電圧継電器は電圧変動に応じて、電圧があらかじめ設定した状態に達したとき
これを検出して動作する継電器のこと。
基本的な動作の区別としては過電圧検出、不足電圧検出の2種がある。
電圧は、計器用変圧器(VT)により取り出し継電器に接続します。
VTを複数の継電器で使用する場合
VTの出力電力(定格負担)を理解したうえで
継電器の消費電力(入力負担)から接続台数を決める必要がある。
異常周波数は、電路、設備、発電機などにより変動する場合があり、
また電力系統は、東日本では50Hz、西日本では60Hzであり、周波数の変動がモータの回転などに
影響を与える場合がある。
周波数継電器は電圧の周波数変動に応じて、周波数があらかじめ設定した状態に達したとき
これを検出して動作する継電器のこと。
基本的な動作の区別としては過周波数検出、不足周波数検出の2種がある。
電圧は、計器用変圧器(VT)により取り出し継電器に接続する。
また電圧継電器などと並列に接続して共用する場合もある。
※分散型電源(発電機)に内蔵されているため省略できる場合があります。
●過周波数継電器(OFR:Over Frequency Relays) 周波数が動作値以上を動作時間以上継続したときに動作
●不足周波数継電器(UFR:Under Frequency Relays) 周波数が動作値以上を動作時間以上継続したときに動作
分散型電源を設置する際には、電圧と電流を組み合わせて
電流の方向の大きさで保護を行う継電器を使用する場合がある。
VTは、電圧継電器などと並列に
CTは、過電流継電器などと直列に接続し、共用する場合がある。
短絡方向継電器(DSR:Directional-overcurrent Relays)は
同期発電機を設置する際に、短絡の原因が同期発電機ではないことを検出する。
電力会社に電力を出力(売電)する状態を逆潮流というが
逆電力継電器、不足電力継電器は、発電した電力を全て発電機のある設備内で使用する
(自家消費、逆潮流なし)設備に使用する。
逆電力継電器(RPR:Reverse Power Relays)は
電力系統が停電状態で発電機が発電を継続する状態(単独運転)を防止するために設置する。
停電することにより発電機の電力が電力系統へ逆電力として出力されることで検出する。
不足電力継電器(UPR:Under Power Relays)は、発電機が稼働している状態であっても通常は一定の電力を電力系統から取り込んでいるが、単独運転になることで電圧が低下し
取り込んでいる電力が一定の電力を下回る(取り込む電力が不足する)ことで検出する。
電力系統と接続(系統連系)して使用する発電機を分散型電源という。
分散型電源は、発電設備以外の設備とも電力系統で繋がっていることから
発電設備による事故が発生した場合、電圧、周波数の変化などが設置している設備以外にも波及する可能性がある。
分散型電源設置者は、事故が発生した場合に分散型電源を系統から切り離し、他の設備を保護する必要がある。
また、電力系統や受電設備に事故が発生した場合には発電機を保護することも必要となる。
以上の考え方をもとに、「系統連系規程」が定められており
規程に対応した複数の継電器をまとめて系統連系用保護継電器と呼んでいる。
なお、連系用保護継電器は
連系する電力系統の区分(高圧連系/特高連系など)・分散型電源の種類(同期発電機/誘導発電機など)・売電の有無(逆潮流)などによって、設置する継電器が異なる。
1つの機能を持つ継電器を単体で設置すると構成品や設置場所が増えるため
複数の機能を1つの継電器にまとめた継電器や、必要な継電器を組み合わせて1つのユニットに構成することができる複合保護継電器がある。
注釈:
*1. 軽故障は検出するが、電力系統の電力所(受電所)保護継電器と時間協調をとっているため動作に至らない。
*2. 発電機容量と系統の自力バランスがとれていると動作しないことがある。
*3. 電圧が極端に低下(至近端短絡の場合)すると動作しないことがある。
*4. 変電所の地絡方向継電器の動作により、系統が停電となり、動作する。
https://www.fa.omron.co.jp/data_pdf/commentary/protectiverelays_tg_j_1_1.pdf
オムロン 保護継電器 技術解説より一部引用