電気回路において、本来接続されていない異なる回路間が、何らかの原因で電気的に接続されてしまうことを「混触(こんしょく)」と呼ぶ
目次
混触が発生するケース

- 高圧線と低圧線の混触: 電柱の上などで、強風や落雷などにより高圧線と低圧線が接触してしまう。
- 屋内配線での混触: 配線の絶縁被覆が劣化したり、誤った配線をしたりすることで、異なる回路の電線が接触する。
- 電気機器内部での混触: 電気製品の内部で、部品の故障や配線の不良により、意図しない回路間で電流が流れる。
混触によって引き起こされる事故
- 感電: 通常では触れることのない部分に電圧がかかり、人に感電する恐れがある。
- 火災: 過電流が流れ、発熱して火災につながる可能性がある。
- 電気機器の故障: 異常な電圧や電流が流れ込み、電気機器が故障することがある。
混触の対策
- 適切な配線と絶縁: 配線工事は電気工事士が行い、電線は適切な絶縁被覆を持つものを使用する。
- 定期的な点検: 配線や電気機器の状態を定期的に点検し、異常がないか確認する。
- 保護装置の設置: 漏電遮断器(ELB)や過電流保護器(ブレーカー)を設置し、異常時に回路を遮断する。
- 接地(アース): 電気機器や配線の一部を地面に接続することで、漏電時の感電リスクを低減する。
変圧器で発生する混触について

変圧器における混触とは、一次巻線(高圧側)と二次巻線(低圧側)の間で、本来絶縁されているべき箇所が何らかの原因で電気的に接続されてしまう現象を指す。
これは、高圧側の電圧が低圧側に侵入する危険な状態を引き起こす可能性がある。
変圧器で混触が起こる主な原因

絶縁不良
- 巻線間の絶縁材(絶縁紙、絶縁油など)の経年劣化、損傷、汚損など。
- 雷サージや開閉サージなどの過電圧による絶縁破壊。
- 製造時の不良による絶縁の脆弱性。
機械的損傷
- 外部からの衝撃や振動による巻線の変形や絶縁材の損傷。
- 地震などによる変圧器本体の破損。
異物の侵入:
- 絶縁油への水分や塵埃などの混入による絶縁性能の低下。
- 小動物などが変圧器内部に侵入し、絶縁部分を損傷させる。
過負荷運転
定格以上の電流が流れ続けることによる巻線の異常発熱と絶縁材の劣化。
変圧器で混触が起こった場合の危険性

- 二次側での高電圧発生: 高圧側の電圧が低圧側に直接加わるため
低圧側の機器の焼損や感電事故を引き起こす可能性が非常に高くなる。 - 火災: 混触箇所で短絡が発生し、大きな電流が流れて発熱し、火災につながる恐れがある。
- 保護装置の誤動作: 混触の状態によっては、保護継電器が正常に動作しない場合がある。
変圧器の混触を防ぐための対策

- 絶縁強化:
- 耐電圧の高い絶縁材の使用。
- 巻線間の絶縁距離の確保。
- 絶縁油の定期的な点検と交換、または絶縁性能の維持管理。
- 機械的保護:
- 変圧器本体の堅牢な設計と設置。
- 外力から保護するための筐体の設置。
- 異物侵入防止:
- 密閉構造の採用。
- 絶縁油の油面管理と異物混入防止対策。
- 適切な運転管理:
- 定格負荷内での運転。
- 周囲温度の適切な管理。
- 保護装置の設置:
- 混触防止板の設置:
- 高圧巻線と低圧巻線の間に接地された金属板(混触防止板)を設けることで、混触が発生した場合に高圧電流を大地に逃がし、低圧側への危険な電圧の侵入を防ぐ。特に、二次側が非接地の場合に有効となる。
コメント