単線結線図は、建物や工場などの電気設備の配線系統をシンプルに示した図面のこと。
文字どおり、複数の電線を1本の線で表すことで、複雑な配線をひと目でわかりやすくすることが目的となる。
単線結線図の主な特徴
受電設備の高圧単線結線図
絵とき電気設備の保守と点検より画像引用
単線結線図に記載される主な機器一覧
PAS: 柱上気中開閉器
CT: 変流器
OCR: 過電流継電器
ZCT: 零相変流器
ZVT: 零相計器用変圧器
DGR: 地絡方向継電器
LA: 避雷器
CVT: トリプレックス形高圧架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル
VCT: 電力需給用計器用変成器
DS: 断路器
VT: 計器用変圧器
VCB: 真空遮断器
LBS: 高圧交流負荷開閉器
PF: 電力ヒューズ
PC: ヒューズ付き高圧カットアウト
Tr: 変圧器
SR: 直列リアクトル
SC: 進相コンデンサ
MCCB: 配線用遮断器
PAS(柱上気中負荷開閉器)
柱上気中負荷開閉器 (Pole Air Switch: PAS) に設置されている開閉器。
点検時に構内を停電させる場合はPASを開放する。
地絡事故が生じた際は地絡方向継電器 (or 地絡継電器) から
トリップ信号が送られてPASが開放する (=構内停電)
※地中ケーブルから受電する場合は地中線用負荷開閉器 (Underground Gas Switch : UGS) を使用する。
ケーブルヘッド(Cable Head) CH
キュービクルに引き込んだ高圧ケーブルを受電設備と接続するため端末処理を施した部分。
ケーブルヘッドには接地線が取り付けられるようになっており
地絡継電器を動作させるために遮へい層が接地される。
電力需給用計器用変成器(Combined Voltage and Current Transformer) VCT
計器用変成器により高圧を低圧に、変流器により電流を小さくして
電力量計に入力することで電力量を測定し電気料金を計算する機器。
※VCTは電力会社の設備。
断路器(Discinnect Switch) DS
電路を切り分けるために開閉する装置で、主に点検作業時に開放する。
電流遮断能力がないため無負荷のときしか開放できない。
計器用変圧器(Voltage Transformer) VT
高圧6600Vを直接計器(電圧計や電力計、電力量計など)に入力するには
各計器に高い絶縁性能を持たせる必要があるうえに、地絡が生じると危険なので
6600Vを使用・計測しやすい1/60の110Vに降圧する。また、継電器に電源電圧を供給する働きを持つ。
※計器用変成器は遮断装置の一次側に設けており、主遮断装置をOFFにしても電源は供給される。
真空遮断器(Vacuum Circuit Breaker) VCB
CB形主遮断装置に用いられ、負荷電流や過電流、短絡電流を遮断する。
単体では異常電流の検知ができないため、後述する過電流継電器から信号をもらい、回路を遮断する。
変流器(Current Transformer) CT
計器用変圧器(VT)と同様に、大きな電流をそのまま各計器に流すのは危険なため
高圧側の電流を定格電流/5Aに変換する。また、過電流継電器(OCR)へ供給する。
過電流継電器(Over Current Relay )OCR
変流器で検知した電流値が、事前に設定した過電流(限時)・短絡電流(瞬時)の値を超えた際に
遮断器へトリップ信号を送り、遮断させる。
配電用変電所との過電流保護協調を図るために
配電用変電所よりも早く遮断できるよう整定する。
また、電流の検出はR相とT相のそれぞれで行う。
電圧計(Voltmeter )V 電流計(Ammeter)A などの各計器
電圧計や電流計、電力計、電力量計などの各計器は
計器用変成器の低圧側の電圧と変流器の電流を使用して、指示値を表示させる。
高圧交流負荷開閉器 (Load Break Switch )LBS
PF・S形の主遮断装置や、変圧器やコンデンサなどを保護する開閉器として使用される。
通常、LBSは負荷電流しか開閉することができないので
短絡電流や過電流が発生した際に回路を遮断するために、主に限流ヒューズ(PF)が用いられる。
変圧器 (Transformer ) Tr
電圧を昇圧・降圧させる機器。キュービクルでは主に
6600Vの高圧を低圧(210Vや105V)に降圧させるために使用する。
高圧カットアウト (Primary Cutout Switch ) PC
単体では開閉器の役割で、ヒューズを装着することで過負荷保護を行うことができる。
変圧器は300kVAまで、進相コンデンサは50kvarまで保護が可能。
進相コンデンサ (Static Capacitor )SC
力率を改善する機器で、進み無効電力を消費することによって力率を改善する。
これによって、発電された電気を効率よく利用することができる。
直列リアクトル (Series Reactor )SR
進相コンデンサ(SC)には、高調波を増幅させてしまう作用がある。
これは、電源側の誘導性リアクタンスと進相コンデンサによる容量性リアクタンスが
並列に接続されていることにより、並列共振作用が引き起こされるため。
直列リアクトルを設置して、合成インピーダンスを誘導性にすることでこれらを防止する。
また、直列リアクトルには進相コンデンサ投入時に発生する突入電流を抑制する働きもある。
地絡継電器(Ground Relay) GR、地絡方向継電器(Directional Ground Relay)DGR(SOG)
零相変流器(ZCT)で地絡電流を検出し、PASにトリップ信号を発信する装置を地絡継電器という。
地絡継電器はPASと合わせて波及事故防止の要であり、非常に重要な装置となる。
地絡継電器のデメリットである、もらい事故による誤動作を改善したのが地絡方向継電器となる。
零相計器用変圧器(ZVT)から零相電圧を検出することで、地絡方向継電器が構内の地絡事故のみに動作する。
避雷器(Lightning Arrester )LA
建物に直接雷が落ちたり(直撃雷)、近くの配電線に雷が落ちると雷サージ(過電圧)が
線を伝って需要家構内に入り機器に影響を及ぼすことがある(誘導雷)。
避雷器は雷サージが生じた際に電路を切り替えることで大地に雷サージを放出することで電路や機器を保護する。
なお、PASのなかに内蔵されていることもある。
新電気2024年3月号 キュービクル解体新書より一部引用