2025年11月20日、蓄電池に関係する法令がいくつか同時に改正された。
きっかけは、2024年3月に鹿児島県伊佐市の太陽光発電所に併設された蓄電池の建屋で起きた爆発・火災事故である。
この記事では、蓄電池を設置している事業者の方、これから設置を考えている方に向けて
改正のうち次の2点をできるだけ平易にまとめる。
蓄電池が壊れたとき、国への事故報告が必要になるのはどんな場合か
蓄電池の安全基準(電気設備の技術基準)で何が変わったか
外部委託の点検頻度や工事計画の届出については、続編の記事で取り上げる。
まず押さえたい言葉

- 電力貯蔵装置:電気をためて、必要なときに取り出す装置のこと。代表例が蓄電池。
- 蓄電所:電力会社の電線に単独でつながっている蓄電池の設備のこと(いわゆる系統用蓄電池)。工場や太陽光発電所と同じ敷地でつながっている蓄電池は、規模に関係なく蓄電所には当たらない。
- 主要電気工作物:壊れたときに国への報告の対象になりうる「重要な設備」の一覧のこと。実際に報告が必要かは、その設備がどの設備に属しているかで決まる(後で説明)。
- 破損事故:設備が壊れたり燃えたりして、すぐに運転が止まった、または使えなくなった事故のこと。主要電気工作物の場合、部品の交換などで簡単に元どおりに直せるものは除かれる。
改正1:蓄電池が「重要な設備」に加わった

電気関係報告規則(事故報告のルールを定めた省令)が改正され
次の条件に当てはまる蓄電池が「主要電気工作物」に加わった。
- 容量が20kWhを超えるもの(20kWhちょうどは含まない)
- 専ら非常用のものは除く
あわせて、蓄電所の破損事故の報告対象も大きく広がった。
| 改正前 | 改正後 | |
|---|---|---|
| 破損事故を報告する蓄電所 | 出力1万kW以上、または容量8万kWh以上 | 容量20kWh超ならすべて |
低圧でつなぐ小さな系統用蓄電池でも、20kWhを超えていれば
蓄電池の設備が壊れて止まったときに報告が必要になる。
ただし、部品の交換などで簡単に元どおりに直せる場合は除かれる(電気関係報告規則 第1条第2項第6号)。
蓄電池のどの部分(パワーコンディショナー(PCS)を含むかなど)が対象になるかは、主要電気工作物を定める告示で決まっている。
蓄電池が壊れたとき、報告が必要になるのはどんな場合?

ここが一番誤解されやすい点である。
蓄電池が「重要な設備」に加わっても、壊れたら必ず報告が必要になるわけではない。
報告が必要かどうかは、その蓄電池がどの設備に属しているかで決まる。
| 設備のタイプ | 蓄電池が壊れて止まった | 火災・死傷・波及事故など |
|---|---|---|
| 系統用の蓄電所(20kWh超) | 報告が必要 | 報告が必要 |
| 出力50kW以上の太陽光発電所に付けた蓄電池(20kWh超、専ら非常用を除く) | 報告が必要 | 報告が必要 |
| 電圧1万V以上の需要設備の蓄電池(20kWh超、専ら非常用を除く) | 報告が必要 | 報告が必要 |
| 6,600Vで受電する一般的な工場・ビル・店舗の蓄電池 | 報告は不要 | 報告が必要 |
6,600Vで受電している一般的な高圧のお客様は、表の第4号ヌ(電圧1万V以上の需要設備)に当たらない。
そのため、蓄電池が壊れて止まっただけなら事故報告の義務はない。
ただし、次の事故は蓄電池が原因でも報告が必要となる。
- 感電などで人が亡くなった、または入院した事故(第1号)
- 電気火災(建物などの場合は半分以上焼けたもの)(第2号)。蓄電池などの電気設備そのものだけが燃えて、建物などに燃え広がらなかった場合は含まれない
- 設備が壊れて、他人の物に損害を与えた事故(第3号)
- 3,000V以上の自社の設備の事故で、電力会社側まで停電させた事故(波及事故)(第12号)
- 社会的に影響を与えた事故(第14号)
太陽光と蓄電池の両方があるお客様は要注意
6,600Vで受電していても、出力50kW以上の太陽光発電設備に蓄電池がつながっている場合(ハイブリッド型のPCSなど)は
その蓄電池が太陽光発電所の設備として扱われ、報告対象になる可能性がある。
つなぎ方によって扱いが変わるため、判断に迷う場合は管轄の産業保安監督部に確認することが推奨される。
報告の期限
- 速報:事故を知った時から24時間以内(できるだけ速やかに)。電話などで報告する。
- 詳報:事故を知った日から30日以内に、報告書(様式第13)を提出する。
報告先は、原則として設備がある場所を管轄する産業保安監督部長(電気関係報告規則 第3条第1項の表。期限は同条第2項)。
大規模な変電所などの一部の事故は、経済産業大臣が報告先となる。
改正2:リチウムイオン蓄電池の安全基準が新設された

電気設備の技術基準の解釈(電技解釈)に、第44条の2が新しく加わった。
発電所、蓄電所又は変電所若しくはこれに準ずる場所に施設するリチウムイオン蓄電池は、JIS C 8715-2(2024)「産業用リチウム二次電池の単電池及び電池システム-第2部:安全性要求事項」の「6 型式試験」に規定する方法により試験を行ったとき、これに適合するものであること。
電気設備の技術基準の解釈 第44条の2(令和7年11月20日施行)
型式試験とは、製品の型ごとに、ショートさせたり充電しすぎたりして、燃えたり爆発したりしないかを確かめる試験のこと。
対象はリチウムイオン蓄電池で、鉛蓄電池やNaS電池は含まれない。
工場やビルの蓄電池も対象になる?
ポイントは「変電所に準ずる場所」という言葉。
電技解釈の解説では、これを次のように説明している。
変電所に準ずる場所とは、自家用電気工作物設置者の構内等において、高圧又は特別高圧の電気を受電し、変成している変電室や受電所(室)を指す。
電気設備の技術基準の解釈の解説 第1条
つまり、高圧で受電している工場やビルの受電室や配電盤室に置いたリチウムイオン蓄電池は、対象になると読める。
一方、受電室とは別の場所(建物内のフロアや屋外の別置き)に置いた蓄電池は、文言上は対象外である。
なお、解説自身が「設置の形態や規制の目的によって、多少幅のある意味で用いられる場合がある」と注意書きをしている。
屋外のキュービクルの隣に蓄電池を並べて置く場合など、境目のケースは管轄の産業保安監督部に確認するのが確実。
以前からあるルール:常用の蓄電池には保護装置が必要
電技解釈 第44条では、発電所・蓄電所・変電所またはこれに準ずる場所に常用電源として置く蓄電池に
異常時に自動で電路から切り離す装置を求めている。
切り離しが必要な異常は次のとおり。
- 過充電などで電圧が上がりすぎたとき
- 事故で大きな電流が流れたとき
- 充放電を制御する装置が故障したとき
- NaS電池など高温で動く電池で、断熱容器の中の温度が大きく上がったとき
ここでいう「常用」は、ピークカットや電力の平準化など、ふだんから電気を出し入れする目的の蓄電池のこと。
停電への備えだけを目的とする非常用は対象外で、判断は使い方の見た目ではなく目的で行う。
ふだんはピークカットに使い、停電時はバックアップにもなる兼用の蓄電池は、常用として扱われると考えるのが自然である。
配線のルールは一部緩和
同じ改正で、関係者以外が立ち入れないようにした場所であれば
蓄電池につながる高圧の直流の電線に、太陽光発電用の直流ケーブルを使えるようになった(電技解釈 第46条第2項、第154条の2)。
あわせて確認したい:消防への届出
電気の法令とは別に、消防の火災予防条例でも蓄電池が規制されている。
2023年の改正で、規制の単位が「アンペアアワー・セル」から「kWh」に変わった。
| 容量 | 扱い |
|---|---|
| 10kWh以下 | 規制の対象外 |
| 10kWh超〜20kWh以下 | 規格に適合し出火防止の対策があるものは、置き場所や構造の基準がかからず、届出も不要 |
| 20kWh超 | 規制の対象。基準への適合と消防署への届出が必要 |
設置者の方向けチェックリスト
- 蓄電池の容量(kWh)と、非常用専用か・常用かを把握しているか
- 蓄電池が「蓄電所」「太陽光発電所の設備」「需要設備の設備」のどれに当たるか確認したか
- 蓄電池やPCSが故障で止まったとき、すぐに保安担当者へ連絡する流れを決めているか
- 受電室や配電盤室に置くリチウムイオン蓄電池について、メーカーからJIS C 8715-2(2024)の型式試験に適合したことを示す書類を受け取っているか
- 20kWhを超える蓄電池について、消防署への届出を済ませているか
まだはっきりしない点

次の点は、公表されている資料だけでは判断しきれなかった。
該当する場合は、管轄の産業保安監督部に確認が必要。
- すでに設置済みの蓄電池にも、電技解釈 第44条の2がかかるか
- 10kW以上50kW未満の太陽光発電設備に付けた蓄電池の事故報告の扱い(電気関係報告規則 第3条の2)。省令の条文では、この規模の太陽光に付けた蓄電池には容量の条件が書かれていない
参考にした資料
- 電気関係報告規則の一部を改正する省令(令和7年経済産業省令第74号、官報 令和7年11月20日)
- 主要電気工作物を構成する設備を定める告示の一部を改正する告示(令和7年経済産業省告示第171号)
- 電気関係報告規則第3条及び第3条の2の運用についての一部を改正する規程(20251104保局第1号)
- 電気設備の技術基準の解釈の一部を改正する規程(20251104保局第2号)
- 電気設備の技術基準の解釈の解説(令和7年11月20日改正)、電気設備に関する技術基準を定める省令の解説(令和7年11月)
- 各市町村の火災予防条例(蓄電池設備に関する基準)
※この記事は2026年11月時点の法令にもとづいて、一般的な内容をまとめたものである。
個別の設備の扱いは、設置の状況によって変わることがあるため
実際の判断にあたっては、法令の原文や管轄の産業保安監督部・消防署に確認すること。

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