系統用蓄電池(蓄電所)や、太陽光発電所に蓄電池を付ける事例が増えている。
2026年度からは、蓄電池などの低圧の小規模なリソースも、需給調整市場(電力の需要と供給のバランスを整える取引の場)に参加できるよう制度が整えられつつあり、小規模な蓄電池の活用はさらに広がると見込まれる。
この記事では、蓄電所や蓄電池付きの設備を持つ事業者の方に向けて
保安管理の決まりを整理する。
取り上げるのは次の4点。
蓄電所に必要な保安の手続き
電気主任技術者の外部委託と点検頻度
蓄電池を付けると、受電設備の点検頻度が変わる場合
太陽光発電所に蓄電池を付けるときの工事計画届出
2025年11月に改正された事故報告と安全基準については、前回の記事を参照のこと。
蓄電所とは:「単独で系統につながっているもの」だけ

蓄電所は、電力会社の電線から電気を受けてため、必要なときに同じ電圧・周波数で送り出す設備のこと。
発電設備・変電設備・需要設備と同じ敷地で電気的につながっている蓄電池は
規模に関係なく蓄電所ではなく、それぞれの設備の附属設備として扱われる
(電気設備に関する技術基準を定める省令の解説 第1条)。
蓄電所に必要な手続き
- 技術基準に合った状態を保つ
- 電気主任技術者を選任する(または外部委託の承認を受ける)
- 保安規程(点検の方法や体制を定めた社内ルール)を届け出る
- 出力1万kW以上または容量8万kWh以上の場合は、工事計画の届出なども必要(電気事業法施行規則 別表第二)
低圧(50kW未満)の系統用蓄電池も
小規模事業用電気工作物(一定規模未満の太陽光・風力などの発電設備で、主任技術者や保安規程が要らない区分)には当たらない。
この区分は発電設備に限られ、蓄電所は含まれないためだ。一般用電気工作物にも当たらない。
そのため、主任技術者の選任と保安規程の届出が必要である(電気事業法 第38条・第42条・第43条)。
詳しくは、経済産業省の「電力貯蔵装置(蓄電池)・蓄電所を設置する場合の手引き」で確認できる。
蓄電所の「出力」と「容量」の数え方
容量(kWh)も出力(kW)も、蓄電池(電力貯蔵装置)の値を合計して判断する。
値はメーカーのカタログなどで確認する。
電気主任技術者の外部委託

自社で電気主任技術者を雇う代わりに、外部の電気管理技術者や電気保安法人に保安管理を任せられる制度のこと。
蓄電所は、太陽光発電所と同じく、次の範囲であれば産業保安監督部長(または経済産業大臣)の承認を受けて外部委託ができる(電気事業法施行規則 第52条第2項第1号)。
- 出力5,000kW未満
- 電圧7,000V以下で系統に連系等をするもの
なお、工場・ビルなどの需要設備と同じ敷地でつながる蓄電池は蓄電所ではないため
需要設備として「7,000V以下で受電するもの」かどうかで判断する(同項第4号)。
蓄電所の点検頻度
外部委託した場合の点検頻度は、告示(平成15年経済産業省告示第249号)の第4条で決まっている。
蓄電所の本体(蓄電池やPCSなど)は6か月に1回以上で、太陽電池発電所と同じである。
一方、電力会社との境目からPCSの系統側までの受変電設備は
設備の内容によって頻度が変わる。
| 受変電設備の区分 | 通常 | 十分な監視体制がある場合 |
|---|---|---|
| イ:第6号本文または第9号の需要設備に準ずるもの | 4か月に1回以上 | 5か月に1回以上 |
| ロ:第6号ただし書の需要設備に準ずるもの | 6か月に1回以上 | 6か月に1回以上 |
| ハ:信頼性の高い設備(第7号イ〜ニの条件をすべて満たすもの)または低圧受電 | 3か月に1回以上 | 4か月に1回以上 |
| ニ:上記以外 | 2か月に1回以上 | 3か月に1回以上 |
2026年10月の改正:柱上変圧器があっても「信頼性の高い設備」に
令和8年10月1日の告示改正(経済産業省告示第127号、同日施行)で
「信頼性の高い設備」の条件のひとつ(第4条第7号イ)が次のように変わった。
| 改正前 | 改正後 |
|---|---|
| 柱上に設置した高圧変圧器がないもの | 柱上に高圧変圧器がないもの、または柱上に高圧変圧器があっても、変圧器と支持物が落下しないように設置され、かつ変圧器の上面を的確に点検できるよう措置したもの |
電柱の上に変圧器を載せている設備でも
落下防止と上面の点検ができる措置をすれば、点検頻度を延ばせる区分に入れる可能性が出てきた。
この条件は、蓄電所の受変電設備の「ハ」の区分や、需要設備の点検頻度にも関係する。
外部委託の受託件数(換算係数)
電気管理技術者1人が受け持てる件数は、設備ごとの「換算係数」の合計が33未満になるよう決まっている
(電気事業法施行規則 第52条の2、告示第249号 第3条)。
告示の換算係数の表には蓄電所専用の欄があり、値は発電所と同じく、出力に応じて0.3(100kW未満)から1.8(3,500kW以上5,000kW未満)。
さらに、受変電設備の区分に応じて次の値を掛ける(同第3条第3項)。
| 受変電設備の区分(第4条第4号の2・第4号の3) | 通常 | 十分な監視体制がある場合 |
|---|---|---|
| イ | 0.32 | 0.32 |
| ロ | 0.31 | 0.31 |
| ハ | 0.33 | 0.32 |
| ニ | 0.36 | 0.33 |
| 上記の区分に当たらないもの | 0.25 | |
工場・ビルに蓄電池を付けると、点検頻度が変わることがある

外部委託している高圧の需要設備(工場・ビル・店舗など)にも、点検頻度を延ばせる区分がある。
そのうち、設備容量100kVA以下の小規模な設備が対象の次の区分には、蓄電池がないことが条件に入っている。
第七号に適合する需要設備であって、次のイ及びロの設備条件に適合するものにあっては三月に一回以上
告示第249号 第4条第9号
イ 受電設備がキュービクル式であるもの(屋内に設置するものに限る。)
ロ 蓄電池設備又は非常用予備発電装置がないもの
前提の「第七号」は、信頼性の条件(第7号イ〜ニ)をすべて満たし、
設備容量が100kVA以下の需要設備(または低圧受電の需要設備)のこと。
なお、64kVA未満で非常用予備発電装置がない設備(小規模高圧需要設備)は、もともと第6号で3か月に1回以上となっている。
そのため、この話が関係するのは主に64kVA以上100kVA以下で、屋内キュービクルの設備となる。
この区分(3か月に1回)で点検を受けている設備に蓄電池を後から付けると
第9号から外れ、第7号の2か月に1回以上に戻る可能性がある。
あわせて、換算係数に掛ける値も0.45から0.6に上がる(告示第249号 第3条第3項)。
点検の回数が増えるだけでなく、受託する電気管理技術者が受け持てる件数の枠も多く使うことになる。
点検の契約や保安規程の見直しが必要になることもあるので
蓄電池を導入する前に、保安を委託している電気管理技術者・電気保安法人に相談することが推奨される。
2025年4月にできた別の3か月点検の区分(第4条第8号ハ)について
2025年4月にできた別の3か月点検の区分(第4条第8号ハ)には、蓄電池の条件はない。
告示で求められているのは、第7号イ〜ニの信頼性の条件を満たしたうえで、次の2つを満たすこと。
- 低圧電路の絶縁状態と負荷を的確に監視できる装置がある
- 主遮断装置と、責任分界点から主遮断装置までの開閉器・遮断器・配線が適切に更新されている
さらに内規(主任技術者制度の解釈及び運用)では、次のような要件が定められている。
- 漏電警報の設定値は50mA以下
- 主遮断装置などの更新計画を保安規程に定めている
- 負荷の記録を1年間保存し、4時間以上の過負荷の警報が繰り返されたら原因を調べて対策する
太陽光発電所に蓄電池を付けるときの工事計画届出

太陽電池発電所は、出力2,000kW以上で工事計画の届出が必要となる(電気事業法施行規則 別表第二)。
発電所の出力は原則として太陽電池モジュール(パネル)の合計出力で数える。
※モジュールとPCSの間に電気を使う機器や貯める機器がない場合に限り
PCSの出力で数えてもよいとされている。
そのため、蓄電池を付ける位置(PCSの後ろの交流側か、パネルとPCSの間の直流側か)で判定が変わる。
発電所を新しく建てる場合
| 蓄電池の位置 | 届出が必要になる条件 | 蓄電池の容量 |
|---|---|---|
| 交流側(PCSと送電設備の間) | PCSとモジュールの両方が2,000kW以上 | 関係なし |
| 直流側(モジュールとPCSの間) | モジュールが2,000kW以上(PCSが2,000kW未満でも必要) | 関係なし |
今ある発電所に蓄電池だけを後から付ける場合
太陽電池発電設備そのものには手を加えない工事が前提となる。
| 蓄電池の位置 | 届出が必要になる条件 |
|---|---|
| 交流側 | PCSとモジュールの両方が2,000kW以上、かつ蓄電池が80,000kWh以上 |
| 直流側 | モジュールが2,000kW以上、かつ蓄電池が80,000kWh以上(PCSの出力は関係なし) |
2025年11月の改正で事故報告の基準からは「8万kWh」の線がなくなったが
工事計画届出の8万kWhの線は残っている。混同しないよう注意が必要。
蓄電池を導入する前に確認したいこと
- その蓄電池は「蓄電所」か、既存の設備の附属設備か
- 蓄電池の出力・容量の合計(メーカーのカタログで確認)
- 外部委託の範囲(蓄電所なら5,000kW未満・7,000V以下で連系等)に収まるか
- 今の点検頻度の区分(特に100kVA以下・屋内キュービクルの3か月点検)が、蓄電池の導入で変わらないか
- 太陽光発電所に付ける場合、交流側か直流側か、容量が8万kWh以上か
- 保安規程の変更が必要か
まだはっきりしない点

- 告示第249号 第4条第9号の「蓄電池設備」が、どの規模・用途の蓄電池から当てはまるか(機器に内蔵された蓄電池を含むか)
- 太陽光発電所に蓄電池を付けたとき、外部委託の範囲(5,000kW未満)を判定する出力をどう数えるか
これらは公表資料だけでは判断しきれないため
該当する場合は管轄の産業保安監督部に確認が必要。
参考にした資料
- 電気事業法 第38条・第42条・第43条
- 電気事業法施行規則 第52条第2項・第52条の2・別表第二
- 電気事業法施行規則第52条の2第1号ロの要件等に関する告示(平成15年経済産業省告示第249号、令和8年10月1日改正まで反映)
- 同告示の一部を改正する告示(令和8年経済産業省告示第127号、官報 令和8年10月1日)
- 主任技術者制度の解釈及び運用の一部を改正する規程(令和7年4月施行)新旧対照表
- 電気設備に関する技術基準を定める省令の解説(令和7年11月)
- 経済産業省 太陽電池発電所への電力貯蔵装置の設置と工事計画届出に関する公表資料(2025年11月13日)
- 経済産業省「電力貯蔵装置(蓄電池)・蓄電所を設置する場合の手引き」
- 電力広域的運営推進機関「需給調整市場における機器個別計測・低圧リソース導入について(2026年度からの制度開始に向けた整理)」(2025年9月26日)
※この記事は2026年11月時点の法令にもとづいて、一般的な内容をまとめたものである。
個別の設備の扱いは、設置の状況によって変わることがあるため
実際の判断にあたっては、法令の原文や管轄の産業保安監督部に確認すること。

コメント