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【実務者向け】不要になったGR・DGRの安全な無効化手順と現場の注意点

目次

不要になったGR・DGRを放置する危険性

受電盤に残された不要なGR・DGRのイメージ

近年、波及事故防止の観点から
責任分界点にSOG付きPAS(高圧交流気中負荷開閉器)(地中引込の場合はUGS/UAS)を設置する方式が
主流となり、受電盤内のGR・DGRが不要になるケースがよくある。
また、DGRを新しいものに更新した際に、旧DGRやそのZCTを撤去できずに残置するケースもある。
しかし、不要になったからといって適当に放置すると
誤動作による不要トリップや、残置配線の絶縁不良による短絡・地絡事故を引き起こす恐れがある。

この記事では、電気主任技術者や実務者の方向けに
安全かつ確実なGR・DGRの無効化(使用停止)手順と
現場での注意点についてまとめた。

【作業前に確認すべき前提条件】
●端子名・回路構成はメーカーや年代によって異なる。
作業前に必ず展開接続図とメーカー取扱説明書で回路を特定しておくこと。
●配線作業は原則として停電作業で行うこと
●受電点の地絡保護方式を変更する場合は
一般送配電事業者との保護協調の確認・協議が必要となる。

継電器は撤去できてもZCTが残るケース

DGRを更新した場合や不要になった場合でも
継電器本体は撤去できるのに、ZCTは撤去できないことがよくある。

貫通形のZCTは高圧ケーブルを通して取り付けられているため
取り外すにはケーブル端末の切り離しと再処理が必要となる。
分割形(オムロンの形OTG-Dなど。なお光商工の分割形ZCTはシールド付ケーブル専用形)でなければ
ケーブル工事をしない限り撤去できないため、ZCTはそのまま残置することになる。

また、DGRとZCT・ZPDは同じメーカーの組み合わせで使うのが原則である。

オムロンのカタログでも
「各社、出力特性に違いがありますので、他社製品との組み合わせはできません。」とされている。

DGRを他社製に更新すると旧ZCTは流用できないため
新しいZCTを追加し、旧ZCTは残置という形になりがちである。

残置ZCTの処置方法

残置ZCTの処置方法の図解
  1. 2次側配線の処理
    ZCT側の2次端子(k・ℓ)から2次配線を外す(試験端子付きの場合はその配線も)。
    継電器側に配線を残す場合は、その端末を確実に絶縁処置する。
  2. 2次端子(k・ℓ)は短絡しておく
    光商工の取扱説明書(LDG-71・73シリーズ)では
    継電器のユニットを抜く場合は「制御電源を切り、零相変流器のk、ℓ端子を短絡してください」としている。
    継電器から切り離したZCTも、これにならってk・ℓ端子間を短絡線で短絡しておくのが安全。
    ※確認した三菱電機・オムロンの資料には不使用ZCTの扱いの記載がなかったため
    使用しているZCTのメーカーにも確認すること。
  3. 試験端子・接地の扱い
    三菱電機MDG-A3シリーズの取扱説明書では、MZT形ZCTについて次の注意がある。
    短絡するのは2次端子(k・ℓ)で、試験端子(kt・ℓt)ではない点に注意すること。
    • 試験端子(kt、ℓt)は試験時だけ使用し、試験後は開放しておく(短絡すると動作に影響を与える)。
    • ℓ端子は接地しない(耐圧試験時の扱いは次項参照)。
    • 2次端子(k、ℓ)と試験端子はダブルナットになっており
      配線を外す際も内側(ZCT側)のナットは緩めない。
  4. 耐圧試験時の扱い
    同取扱説明書では、高圧回路と大地間・高圧回路と低圧回路間の耐圧試験の際は、ZCTの2次側を接地するよう指示している。
    残置ZCTは、k・ℓを短絡した線をそのまま残し、耐圧試験のときだけその短絡線を仮に接地する。試験後は仮接地を外す。
    なお同取扱説明書では、低圧回路と大地間の耐圧試験では、逆にZCTなどの2次側の接地を外すとしている。
  5. シールド接地線の取り回しは変更しない
    高圧ケーブルのシールド接地線は、ZCTに対する通し方によって地絡電流の検出に影響する。
    新しいDGRのZCTが同じケーブルに付いている場合
    接地線の取り回しを変えると新しいDGRが正しく検出できなくなるおそれがある。
    一般に、ZCTより電源側でシールドを接地する場合は接地線をZCTに通し戻し、負荷側で接地する場合は通さない。
    三菱電機の取扱説明書でも、電力ケーブルのシールドアースは高圧受電設備規程(JEAC 8011)に従うよう注意している。
    光商工の取扱説明書でも、ZCTのK側とL側の両方でシールド層を接地すると
    2点間に電位差が生じた場合にシールド層に電流が流れ動作電流表示灯が点灯する場合があるとしている。
  6. 「不使用」の表示
    新しいDGRのZCTと取り違えないよう
    残置ZCTに「不使用」「2次配線取り外し済み」などの表示をする。
  7. 図面への記載
    単線結線図・展開接続図に残置ZCTを記載し
    不使用であることを明記する。
  8. 点検対象として管理
    高圧ケーブルに付いている機器なので
    年次点検では他の機器と同様に外観を確認する。

不要になったGR・DGRの不動作処置(基礎知識)

基本原則は
「制御電源を絶つこと」
「トリップ回路を切り離すこと」
の2点。

電流引外し方式では、VCBの引外しコイルの配線(T1・T2)はOCRと共用している。
この配線を外すとOCRによる引外しまでできなくなるため、外さないこと。
切り離すのはDGR側だけにし、O1–T1・O2–T2のつなぎ替えでOCRの回路を残す(後述)。

LBS+GRの場合の処置

LBSとGRの組み合わせでのGR無効化処置のイメージ
  1. 制御電源のOFF
    GRの制御電源(P1・P2)を供給しているMCCB(配線用遮断器)をOFFにし
    可能であれば電源側で離線する。
    MCCBが表示灯など他の回路と共用されている場合は、MCCBは切らずにGRへの分岐配線側で切り離す。
  2. トリップ回路の切り離し
    LBS(引外し装置付き高圧交流負荷開閉器)へのトリップ線を
    電源側(端子台側)で離線する。
    継電器側だけで離線して、充電された線をテープ巻きで残置することは避ける。

①(電源OFF)と②(トリップ離線)の両方を行うのが最も確実で安全。

VCB+DGRの場合の処置

VCBとDGRの組み合わせ(補助箱MGX-1形)でのDGR無効化処置のイメージ

過去の設備では「断路器(DS) + VCB + 受電盤DGR + 電流引外しOCR」という構成が一般的だった。
現在は「SOG付きPAS(DGR形制御装置) + 受電盤OCR」となり
盤内のDGRが不要になるケースが多くなっている。

電流引外し方式のVCBでDGRを使う場合は、電流引外し用の回路が必要。

  • 補助電源装置(補助トリップ箱)を別に置く方式
    オムロンの「形AOF-1N 補助電源装置」、三菱電機の「MGX-1形電流トリップ補助箱」など。
  • DGR本体に内蔵した方式
    光商工の電流引外し用DGR(LDG-71K・LDG-73K)は
    本体に「引き外し電流電源端子 S1・S2」「トリップ端子 T1・T2」「変流器接続端子 O1・O2」を持っている。

DGRを無効化する際は、これらの電流引外し回路の配線も含めて処置する。
オムロン形AOF-1Nと光商工LDG-K形では、S1・S2、T1・T2、O1・O2の端子名が共通している。
オムロン形AOF-1Nの場合、端子と働きは次のとおり(同社カタログの内部接続図・外部接続例より。本体の銘板にも同じ内部接続図が表示されている)。

  • P1・P2
    内部リレーZのコイル。計器用変圧器(VT)(カタログの表記では計器用PT)に対して
    DGRのトリップ接点(a・c)と直列に接続される。
  • O1・O2
    OCR(過電流継電器)側の引外し回路を接続する。
  • T1・T2
    VCBの引外しコイルを接続する。
  • S1・S2
    引外し用の電源(AC100/110V)を接続する。
    オムロンのカタログの接続例では所内電源変圧器の2次側から取っている。
    VTの2次側から取っている設備もある。
    なお光商工LDG-K形の引き外し電流電源端子(S1・S2)の定格はAC110V。

AOF-1Nでは、平常時は内部リレーZの接点を通してO1–T1、O2–T2がつながっており
OCRの電流引外し回路がそのまま引外しコイルに通じている。
地絡でDGRが動作するとリレーZが動作し
引外しコイル(T1・T2)がS1・S2側の電源に切り替わってVCBが引き外される(S1側は内蔵リアクタを通る)。
このとき同時にO1–O2間が内部の接点で短絡され、CT2次回路が開放されない構成になっている。
三菱電機MGX-1形も、取扱説明書の内部接続図を見ると同じ仕組みである。

基本的な無効化手順

  1. DGRの制御電源(P1・P2)の供給元(VTまたはMCCB)を特定し
    電源側で切り離す。
  2. 電圧引外し方式・コンデンサ引外し方式で、DGRの引外し電源がMCCBから来ている場合は
    そのMCCBがDGR専用回路であることを確認したうえでOFFにする。
    コンデンサ引外し装置は、電源を切ってもしばらく充電が残るため、放電を確認してから作業する。

電流引外し方式の具体的な手順は、後述の「現場で推奨される処置手順」で説明する。

引外し電源のMCCBがOCRのトリップ回路やVCBの操作回路と共用されている場合
OFFにすると過電流保護まで無効になる。
共用回路の場合は、MCCBではなくDGRへの分岐配線側で切り離すこと。

他のDGRと零相電圧を共用している場合の注意

1台のZPDから複数のDGRへ零相電圧を共用している構成の図解

1台のZPD・ZVT(零相電圧検出器)から
受電用と分岐フィーダ用など複数のDGRへ零相電圧を供給している設備がある。
この場合、無効化するDGRだけを考えて処置すると
使い続ける他のDGRまで動作できなくなる、または精度が落ちることがある。
メーカーの資料を例に、確認点を挙げる。

  • 接続台数の設定(オムロン形K2DG)
    1台のZPD(形VOC)に複数のK2DGを接続する場合
    各継電器のディップスイッチで「複数台接続台数(1〜5台/6〜10台/11〜15台)」を設定する。
    カタログでは、誤った設定にすると零相電圧入力値と動作位相角の誤差が大きくなるとされている。
    DGRを外して台数の区分が変わる場合は、残りのDGRの設定も変更すること。
  • V0拡張端子(M-N)の使用有無(三菱電機MDG-A3シリーズ)
    DGRのV0拡張端子から他のDGRへ零相電圧を送っている構成では
    供給元(親機)の制御電源が入っていないと、供給を受けるDGR(子機)は動作できない。
    無効化するDGRが親機になっていないか、必ず確認すること。
  • 零相電圧回路の接地点
    零相電圧回路は1点のみ接地する。
    三菱電機MDG-A3シリーズでは、ZVTのY2端子または継電器のY2端子の1点のみ
    (V0拡張端子使用時はN端子の1点のみ)をアースする。
    光商工も、零相蓄電器ZPC-9Bなどのy2端子を必ず1点接地(D種接地)するよう指示している。
    無効化するDGRの端子で接地していた場合
    その配線を外すと残りのDGRの回路が接地されなくなる。
    接地点を移す必要があるか確認すること。
  • M・N端子による分配(光商工LDG-71・73シリーズ)
    LDG-73シリーズ(または地絡電圧継電器LVG-7シリーズ)は
    零相電圧の位相信号をM・N端子でLDG-71シリーズへ分配できる(最大30台)。
    LDG-71シリーズは零相電流のみを入力し、零相電圧の位相信号はM・N端子から受け取る構成のため
    無効化するのが分配元のLDG-73・LVG-7であれば、残りのLDG-71は方向判定ができなくなる。
    分配元になっていないか確認すること。
  • Y1・Y2の配線
    複数のDGRが同じZPD・ZVTに並列接続されている場合、外したY1・Y2配線の端末が短絡すると
    零相電圧が入力されなくなり、残りのDGRすべてが不動作になる。
    確実に絶縁処置すること。
    また、三菱電機MDG-A3シリーズは、制御電源を入れるときは必ずY1-Y2端子にZVT(またはV0を供給する継電器)を接続した状態で行うよう指示している。
    残すDGRのY1・Y2配線を一時的に外した場合は、接続を戻してから制御電源を入れること。

残りのDGRの設定を変更するときは、不要動作に注意する。
三菱電機MDG-A3シリーズでは、稼動中の整定変更は不要動作のおそれがあるため避け、やむを得ない場合はCPUリセットボタンを押して動作ロック状態にしてから行うよう指示している(動作ロック中はリレーは動作しない)。
また、主回路通電中に整定値を変更する場合は、その前に外部でトリップロックを行うよう注意している。
オムロン形K2DGのディップスイッチを稼動中に切り替えてよいかは、資料に記載がない。
停電作業のときに変更するか、メーカーに確認すること。

実務におけるポイントと注意点

S1・S2(引外し用電源)の短絡時の注意

残置配線の短絡からVT焼損・波及事故に至る流れの図解

補助電源装置(光商工LDG-K形ではDGR本体)のS1・S2には
VTや所内電源変圧器の2次側から引外し用の電源がかかっている。
DGRを無効化するためにS1・S2の配線を外し、テープ巻きで残置した場合
経年劣化でテープが剥がれて短絡すると、次のような事態につながる恐れがある。

・VT(または所内電源変圧器)の2次側が短絡する
・通常は2次側のヒューズ・MCCBや、VT1次側の限流ヒューズ(所内電源変圧器の場合はその保護装置)で保護されるが
 2次側に保護がない、または容量が合っていないと、1次側のヒューズが切れる前に変圧器が焼損するおそれがある
 焼損が進むと、高圧側の地絡や高低圧混触に発展する
・構内の地絡であれば、本来は責任分界点のPAS(SOG)が開放して構内停電で済むが
 PASの不具合などが重なると配電線側の遮断器がトリップし
 一帯を停電させる波及事故に発展しかねない

DGRの制御電源(P1・P2)や、補助電源装置のP1・P2も同じくVTの2次側につながっているため
同様の注意が必要となる。
また、ZPDからの零相電圧配線(Y1・Y2)も
外した端末が短絡すると同じZPDを使う他のDGRが動作できなくなる(前述)。

【対策】
最善策は、電源側(VT・所内電源変圧器・ZPD側)で離線し、配線そのものを無電圧にすることである。
やむを得ず端末を残置する場合は、自己融着テープ+ビニルテープの二重巻きや絶縁キャップなど、長期間剥がれない確実な絶縁処置を行う。
DGR廃止後に不要となるZPDは、高圧に接続されたまま残ることになる。
撤去するか、残置して点検対象として管理するかを判断すること。

【警告】CT2次回路の開放に注意

電流引外し方式のVCBでは
トリップコイルがCT2次回路の中に入っている。
補助電源装置(またはDGR本体)のO1・O2、T1・T2もこのCT2次回路の一部。
受電中にこの回路の配線を外すとCT2次が開放状態となり
高電圧の発生やCT焼損につながる。
トリップ回路まわりの配線変更は、必ず停電して行うこと。

図面更新と「使用停止」の明示

無効化したリレーに使用停止の札を付け、図面に×印と不使用を記入する作業者

保安規程に基づく保安管理の観点から
設備の現状と単線結線図(スケルトン)・展開接続図は一致させておく必要がある。
リレーを無効化した場合は必ず図面を修正(該当リレーに×印や「不使用」を追記)し
盤面のリレー本体にも「使用停止中」「トリップ配線取り外し済み」といった表示を明確に掲示しておくこと。

これを怠ると、将来別の技術者が年次点検に入った際に
保護協調の誤認や不要なトラブルを招く原因になる。

現場で推奨される処置手順

上記の危険性を考慮し、将来のメンテナンス性も確保した手順を以下に提案する。
電流引外し方式で、オムロン形AOF-1Nなどの補助電源装置が入っている設備を例にしている。

無効化・配線処理ステップ

1. 事前準備

  • 展開接続図で、DGRと補助電源装置の各端子の役割を特定する。
    端子名はメーカーにより異なる。
    例として、主なDGRと補助電源装置の端子は次のとおり。
    • オムロン形K2DG:P1・P2(電源)、Y1・Y2(零相電圧入力)、Z1・Z2(零相電流入力)、a1・b1・c1(トリップ用接点)、a2・b2・c2(警報用接点)
    • 三菱電機MDG-A3シリーズ:P1・P2(制御電源)、Y1・Y2(零相電圧入力)、Z1・Z2(零相電流入力)、M・N(V0拡張出力)、a11・a12/a21・a22(出力接点)、E(アース)
    • 光商工LDG-73K(電流引外し用):P1・P2(制御電源)、Z1・Z2(ZCTから)、Y1・Y2(零相電圧入力)、M・N、a1・c1/a2・c2(出力接点)、S1・S2(引き外し電流電源端子)、T1・T2(トリップ端子)、O1・O2(変流器接続端子)
    • オムロン形AOF-1N(補助電源装置):P1・P2(内部リレーのコイル。DGRのトリップ用接点を経由してVTから電圧がかかる)、S1・S2(引外し用の電源)、T1・T2(引外しコイルへ)、O1・O2(OCR・CT回路へ)。端子台はP1・P2・T1・T2・O1・O2・S1・S2の順に並び、S1は内蔵リアクタを通る。
    • 三菱電機MGX-1形(電流トリップ補助箱):P1・P2(内部リレーのコイル。MDGの出力接点a11・a12を経由してVTから電圧がかかる)、S0・S1・S2(引外し用の電源。S1は内蔵リアクタを通り、S0は通らない)、T1・T2(引外しコイルへ)、O1・O2(OCR・CT回路へ)。端子台は上段がT1(0)・T2(9)・O1(8)・O2(7)、下段がP1(1)・P2(2)・S0(3)・S1(4)・S2(5)の順に並ぶ。(三菱電機 取扱説明書 JEP0-IL2048-D の内部接続図・外形図より)

前述の「他のDGRと零相電圧を共用している場合」に当たらないか確認する。

  • 盤内のGR・DGRを止める前に、SOG付きPASの制御装置の形式(GR形・DGR形)・整定値・直近の動作試験結果を確認し
    PAS側で地絡保護が確実に働くことを確かめておく。
  • 停電作業の計画を立て、設置者への説明を含め関係者との調整を済ませておく。
  • 停電後は検電・接地(短絡接地器具の取り付け)を行い
    コンデンサ引外し装置やケーブルの残留電荷を放電してから作業する。

2. 電源・零相電圧回路の処理

  • DGRの制御電源(P1・P2)、補助電源装置のP1・P2とS1・S2の配線を、電源側で離線する。
    MGX-1形のS0のように、ほかにも電源につながる端子があれば同じく処理する。
    端末を残置する場合は、前述の確実な絶縁処置を行う(VT短絡リスクに最大限配慮すること)。
  • 「電源側」とは、その配線に電圧を送っている大元に近い側のことで
    VT2次の分岐点(ヒューズやMCCBの直後)が当たる。ここで外せば、そこから先の配線全体が無電圧になる。
    DGRの出力接点や遮断器の52a接点の手前で外しても、VTからそこまでの線は充電されたまま残る(52a接点の先も、VCB投入中は充電される)。
    三菱電機の取扱説明書の接続例(MGX-1形併用)では、P1はMDGの出力接点a11・a12を経由してVTにつながり
    S1・S2は52a接点を経由してP1・P2側につながっている。
    展開接続図でたどって外す場所を決めること。
    停電中の検電は必ず「無電圧」と出るため、外す場所の誤りには気づけない。無電圧の確認は受電後に行う(4.参照)。
  • VT2次の共通線や52a接点は、表示灯など他の回路と共用していることがある。
    外すのはDGR・補助電源装置へ向かう分岐だけにし、他の回路まで止めないこと。
  • ZPDからの零相電圧配線(Y1・Y2)も同様に処理する。
    ただし同じZPDを他のDGRと共用している場合は、ZPD側では外さず、廃止するDGRへの分岐だけを外す。
    零相電圧回路の接地点が廃止するDGRの端子にあった場合は、外す前に接地点を移す。

3. トリップ回路のバイパス処理(共締め)

補助電源装置の平常時の接続(O1–T1、O2–T2)を、配線で固定する。
2.で補助電源装置のP1・P2を切り離せば、内部リレーは平常時の状態のままになるため、OCRの引外し回路はひとまず生きている。
それでもつなぎ替えておくのは、補助電源装置やDGRを撤去・交換しても、OCRの回路に影響が出ない形にするためである。

  • O1 の配線を O1 端子から外し、T1 端子へ T1 の配線と一緒に共締めする。
  • O2 の配線を O2 端子から外し、T2 端子へ T2 の配線と一緒に共締めする。

これで、OCRの電流引外し回路が補助電源装置の内部接点を通らず、引外しコイルへ直接つながる。
光商工LDG-71K・73KのようにDGR本体にO1・O2、T1・T2がある機種では
同じ処置をDGRのケース側の端子で行う。
引出形のユニットであれば、ケースの端子で共締めしておくことで
OCRの引外し回路を残したままユニットを抜くことができる。

三菱電機MGX-1形の端子台は、上段がT1・T2・O1・O2の順に並んでいる。
O1とT1、O2とT2は隣どうしではない(間に1つ端子を挟む)。
隣の端子へ共締めしないよう、端子名と端子番号(T1は0、T2は9、O1は8、O2は7)で確認すること。

共締めにする場合は、端子の許容本数と圧着端子の重ね方がメーカー仕様の範囲内であることを確認する。
補助電源装置やDGRのケースごと撤去する予定がある場合は
共締めの代わりに盤内の別の端子台でO1とT1、O2とT2をつなぐ。

この回路はCT2次回路の一部である。必ず停電して作業すること。
また、つなぐ組み合わせ(O1–T1、O2–T2)を間違えたり、S1・S2側とつないだりすると、OCRの引外しができなくなったり、VCBが不要にトリップしたりする。
展開接続図で確認し、修正後の接続図を作成してから作業すること。

4. 安全確認試験(最重要)

確認は「停電中」と「受電後」の2段階で行う。
停電中はVTが無電圧のため、配線を外し忘れていてもDGRの動作でVCBはトリップしない。
停電中の試験だけでは、処置の誤りに気づけない点に注意する。

【停電中の確認】

  • テスターで、次の2点を確認する。
    ・DGRのトリップ用接点から補助電源装置のP1へ向かう線が切り離されていること
    ・O1–T1、O2–T2がつながっていること
  • DGRの接点の動作を確かめる場合は、DGRのP1・P2に試験用の制御電源を一時的に供給する
    (2.で離線しているため、試験器の補助電源などを使う)。
    試験電源をつなぐ前に、P1・P2がVT2次側から切り離されていることを必ずテスターで確認すること。
    つながったままだとVTに逆から電圧がかかり、高圧側に高い電圧が発生する(逆昇圧)。
    出力接点を動作させ、その接点の先が補助電源装置・VCBの引外し回路につながっていないことをテスターで確かめる。
    試験後は供給した電源を外す。試験スイッチの操作方法はメーカーで異なる。
    • オムロン形K2DG:表示選択を「試験SW有効」(7セグLEDに「rdy」と表示)にして試験スイッチを押すと、トリップ用接点(a1–c1)が導通する。試験後は復帰レバーで復帰させる。
    • 三菱電機MDG-A3シリーズ:表示選択スイッチを「強制動作」に合わせ、テストボタンを2秒以上押すと出力接点が強制動作する。
    • 光商工LDG-71・73シリーズ:試験/復帰スイッチを、動作時間整定値以上、試験側へ倒し続けると出力接点が動作する。手動復帰設定のときは、手を離しても接点は復帰しない。
  • 処置前の状態や受電中にこの試験を行うと、DGRの動作と連動してVCBが遮断し、停電するおそれがある。
    光商工の取扱説明書でも「遮断器に接続してある場合は、継電器の動作と連動して遮断しますので不用意に操作しないでください」としている。
  • オムロン形K2DGと三菱電機MDG-A3シリーズは
    動作電圧整定が「ロック(LOCK)」だと試験スイッチでも動作しない。
    オムロン形K2DGは、復帰レバーを押し上げ続けている間もトリップ・警報動作がロックされる。
    ロックの状態で試験すると、接点が動作しないため、確認したつもりになってしまう。
    必ず接点が動作したこと(動作表示や接点の導通)を確かめること。
  • なお、オムロンのカタログにもあるとおり、試験スイッチは継電器内部の回路をチェックするもので、周辺機器や配線のチェックではない。
  • OCR(過電流継電器)の試験を実施し、OCR単体の動作特性と、OCR連動によるVCBの引外し動作に問題がないことを確認する。
    試験は電流引外し方式に対応した試験器を使い、CT2次回路を開放しない手順で行う。
    VCBは試験位置で投入するか、停電中に投入する場合は断路器(DS)の開放と作業者への周知を確認してから行う。
  • DGRを更新した場合は、新しいDGRの動作試験と、新しいDGRによるVCBの引外し動作に問題がないことを確認する。

【受電後の確認】

  • 受電前に、短絡接地器具の取り外し忘れがないことを確認する。
  • 受電後、残置した端末(P1・P2・S1・S2・Y1・Y2など)が無電圧であることを検電で確認する。
    電圧が残っていれば、外す場所を間違えている。
  • PAS(SOG)、残したDGR、表示灯・計器が正常であることを確認し、設置者に報告して記録に残す。

【この手法のメリット】
OCRの引外し回路を補助電源装置の内部接点に頼らない形にしておくことで、DGR本体を撤去・回収しても他の回路に影響が出ない。
また、将来新しいDGRを追加・更新することになった際にも、配線が整理されているため、補助電源装置と組み合わせられるDGRであれば、O1・T1、O2・T2を元に戻すだけで流用できる(組み合わせの可否はメーカーに確認すること)。

まとめ

  • ZCTは残置になることが多い
    貫通形のZCTはケーブル工事なしでは撤去できないため
    2次配線を外してk・ℓ端子間を短絡し、「不使用」の表示と図面への記載をして残置する。
  • 不要なリレーは確実に切り離す
    制御電源OFFとトリップ配線離線の「二重対策」が基本。
    ただし電流引外し方式では、OCRと共用の引外しコイルの配線(T1・T2)は外さない。
    共用回路のMCCBを切ってOCRまで無効にしないよう注意する。
  • 零相電圧の共用に注意
    1台のZPD・ZVTから複数のDGRへ零相電圧を送っている場合、接続台数の設定変更が必要になったり
    親機の電源断や接地点の喪失で使い続けるDGRまで動作できなくなったりする。
  • 残置配線は無電圧化が原則
    S1・S2やP1・P2などVT回路の短絡は焼損・地絡につながるため、VT2次の分岐点など大元に近い側で離線する。
    やむを得ず残置する場合は確実に絶縁処置する。
  • 停電作業で行う
    電流引外し方式では、O1・O2、T1・T2もCT2次回路の一部。
    受電中の作業には重大なリスクがある。
    PAS側の地絡保護が働くことを事前に確認し、検電・接地・放電のうえで作業する。
  • O1–T1、O2–T2のバイパス
    補助電源装置の平常時の接続を配線で固定し、OCRの引外し回路を残したまま、DGRを確実に切り離す。
  • 確認は停電中と受電後の2段階
    停電中はテスターで配線のつながりを確かめ、OCRの試験を行う(試験電源によるVTへの逆昇圧に注意)。
    受電後は残置端末が無電圧であることを検電で確かめ、盤面表示と図面を最新化する。

本記事は一般的な手順の解説となる。
実際の作業は、設備の展開接続図、メーカー取扱説明書、高圧受電設備規程(JEAC 8011)等を確認のうえ、電気主任技術者の判断のもとで必ず実施すること。

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この記事を書いた人

はじめまして、当ブログ「名無し電気管理事務所」を運営している名無しと申します。
ここでは、私の経歴や当ブログの運営目的についてご紹介します。

1. 保有資格
実務に関わる以下の国家資格を保有しています。

第3種電気主任技術者(2023年取得)

第1種電気工事士

建築物環境衛生管理技術者

2. 経歴・実務経験
電気保安・ビルメンテナンスの業界で約7年の実務経験があります。
現在は電気保安法人にて、保安業務従事者として勤務しています。

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