はじめに:この記事で何が分かるか

冬場は暖房などで電力需要が増えるうえに
積雪や凍結といった厳しい自然環境にもさらされるため
電気設備にとっては厳しい季節となる。
本記事では、冬季特有の設備保守の基礎知識を再確認し
経済産業省からの以下2つの通知内容と実務で気をつけるべきポイントを記載する。
冬季の電気設備に関する基礎知識(雪害・結露・小動物対策)
積雪・氷雪による設備へのダメージ

- 着氷雪による断線・倒壊・ギャロッピング
着氷雪した電線に強風が当たり上下に大きく揺れる「ギャロッピング現象」による
相間短絡(閃絡)のリスクがある。 - 凍結による機器の動作不良
断路器(DS)など屋外開閉装置の凍結による操作不良に注意が必要。 - キュービクル周辺の積雪
扉前や換気口が雪で埋まると点検や緊急操作に支障をきたすため
除雪の段取りをあらかじめ決めておく。
結露と絶縁低下

冬場は夜間や明け方の冷え込みでキュービクルの外箱や盤内機器が冷やされ
盤内の湿った空気が露点以下になることで、内部に結露が起きやすくなる。
結露で碍子(がいし)やケーブル端末の表面が濡れ、そこにほこりなどの汚れがあると
トラッキング現象や絶縁低下が起き、地絡事故につながる。
さらに、需要家側の保護装置が正しく動作しなければ
配電線まで停電が広がる波及事故になるおそれもある。
そのため、盤内に固定したスペースヒーターによる温度・湿度の管理(サーモスタットや湿度センサーの設定確認を含む)、吸湿剤の設置、碍子や端末の清掃が、重要な対策になる。
小動物の侵入(鳥獣害)
寒さをしのぐため、ネズミや小鳥が盤内の隙間から侵入し
高圧充電部に触れて短絡事故を起こすケースが頻発しやすい。
ケーブル引込口のパテ劣化、換気口の金網の破れ、扉パッキンの傷みを目視点検することが必要となる。
冬季の電力需給見通しと懸念されるリスク

通知および同日決定の電力需給対策によると
2025年度冬季は「10年に一度の厳しい寒さ」を想定した場合でも
安定供給の最低基準である予備率3%を上回る見通しのため、全国的な節電要請は行われない。
※以下の要因で需給が厳しくなるリスクが指摘されている。
- 想定を上回る需要の増加
- 設備のトラブル
- 海外情勢の変化(燃料調達への影響など)
需要家設備の事故も、波及事故となれば周辺地域の停電を招く。
「今年は足りている」と油断せず
事業者・需要家それぞれのレベルで、設備トラブルを未然に防ぐことが大切である。
通知の要請事項と、実務者が取るべきアクション

通知で求められていること
- 電力高需要期の通知(発電事業者向け)
火力・再エネ発電設備の巡視点検強化、事故時の早期復旧対策の徹底、防災体制整備と事故後の迅速な情報発信。 - 自然災害の通知(電気主任技術者等向け)
雪害等の自然災害に備えた電気工作物の入念な点検と
設置者への補強・修理等の指示・助言。
過去には豪雨での太陽光パネル崩落や
非常用発電機の点検不備による稼働失敗事例も報告されており
保安規程に基づく定期点検の重要性が示されている。
実務者のアクション
上記通知の趣旨を踏まえた、需要設備担当者向けの具体策。
アクション1:巡視・点検の強化
- 盤内固定式スペースヒーターの動作確認と、温度・湿度設定の確認
- 結露跡、碍子・ケーブル端末の汚損やトラッキング痕の確認
- ケーブル引込口・換気口・扉パッキンの隙間確認(小動物対策)
- 屋外開閉装置の凍結対策と周辺の除雪計画の確認
- 非常用予備発電装置の動作確認(燃料残量や始動用蓄電池の状態含む)
- 太陽光発電設備の積雪荷重によるパネル破損や架台変形への備え
アクション2:早期復旧態勢づくり
- 高圧ヒューズ(PF)など主要予備品の確保
- 復旧人員の確保と、降雪時の現場移動手段・ルートの確保
- 緊急連絡網(設置者、保安協会・電気保安法人、電気工事業者、メーカー等)の最新化
アクション3:事故時の報告・情報発信の流れを準備
- 第一報の伝達先:設置者、一般送配電事業者、所轄の産業保安監督部などへ誰が連絡するか明確にする。
- 法定事故報告の期限:波及事故等の場合、電気関係報告規則に基づき、事故発生を知ってから「24時間以内の速報」「30日以内の詳報」の提出が必要。
- 復旧見込みの判断:基準と関係者への伝達フローを事前に整理する。
まとめ
- 冬季の基本対策:雪害、結露による絶縁低下、小動物侵入のリスクが高まるため、キュービクル内外の点検やヒーターの動作確認などの基本を徹底する。
- 2025年度の状況:予備率は全エリアで3%を上回る見通しで節電要請はないが、想定外の需要増や設備トラブル等による需給悪化のリスクはある。
- 通知の要請:巡視・点検の強化、早期復旧のための事前対策、防災体制の整備と事故後の迅速な情報発信。
- 実務での対応:非常用予備発電装置を含む点検、予備品・連絡網の準備、事故報告の流れの確認を今のうちに済ませておく。

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