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変圧器励磁電流とΔ結線の役割についての基礎知識まとめ

目次

変圧器の励磁電流と奇数高調波の特性

「なぜ変圧器にはΔ結線が必要なのか?」という疑問は、初学者が必ずつまずくポイントのひとつ。
変圧器の電圧や磁束を考える上で
鉄心の特性を理解することが第一歩となる。

変圧器に正弦波の電圧が印加されると
鉄心内の磁束も正弦波になる必要がある。
しかし、鉄心の磁化特性は直線ではないため(磁気飽和やヒステリシスがあるため)
正弦波の磁束を生じさせるための「励磁電流」はひずみ波形となる。

励磁電流の波形は正と負が対称なので、偶数次の高調波は含まれない。
基本波に加えて第3、第5、第7といった奇数次の高調波が含まれるが
中でもとくに厄介なのが、主に磁気飽和に起因する第3高調波となる。

基本波・第5・第7高調波

三相交流において各相の電流の和が0になる
(第5は相順が逆、第7は基本波と同じ相順)。

第3高調波(および第9など3の倍数次)

基本波の3倍の周波数を持ち、各相の電流に位相差がなく同相になる。
そのため、各相の和は相殺されず1相分の3倍の大きさになってしまう。

変圧器の結線方式と第3高調波の処理

第3高調波を含む励磁電流をどのように処理するかが
変圧器の結線方式を選ぶ際の重要な要素となる。

Y-Δ(スター・デルタ)結線の強み

Y-Δ結線は
変電所の降圧用変圧器などで多く用いられる結線方式のひとつ。

一次側がY結線で中性点が非接地の場合、各相の励磁電流の和は0でなければならないため
同相である第3高調波は流れ込むことができない。
すると一次側の励磁電流には第3高調波が不足し、各相の誘起電圧に同相の第3高調波成分が現れる。
この同相の電圧によって、二次側のΔ結線の閉回路内を第3高調波電流が循環する。

この循環電流が作る磁束が不足分を補うため、鉄心内の磁束はほぼ正弦波に近い波形に保たれる。
循環電流はΔ結線内に留まり、外部へ流出することもない。
※Δ-Δ結線やΔ-Y結線でも同様に、Δ巻線内で第3高調波が循環するため誘起電圧はほぼ正弦波となる

大容量変圧器でのY-Y-Δ結線

Δ結線がないY-Y結線(中性点非接地)の場合、第3高調波の循環回路がないため
巻線の誘起電圧自体に第3高調波が含まれたひずみ波形となってしまう。
これは巻線の絶縁上好ましくない。
とくに単相変圧器3台を組み合わせたバンクや外鉄型では、ひずみが大きくなる。
一方、三相三脚の内鉄型では第3高調波の磁束が通りにくいため、ひずみは比較的小さく抑えられる。

そのため、特高回路などの大容量変圧器でY-Y結線を使用するときは
同一鉄心に三次巻線を設けてΔ結線とする「Y-Y-Δ結線」を採用し
第3高調波電流を意図的に循環させる。

実務や設備保全における留意点

通信線への誘導障害

Y結線の中性点を接地すると、第3高調波電流は大地を経由して流れることができるようになる
(電源側の中性点も接地されている場合)。
大地に流れた第3高調波電流は、近接する通信線に電磁誘導障害(ノイズ)を引き起こす原因となる。

Δ結線は第3高調波を巻線内で循環させるため、こうした大地への流出を抑える役割も果たしている。
※日本の高圧配電系統(6.6kV)は非接地方式であるため
一般的な高圧受電設備において第3高調波が大地に流出する経路はもともと限られている。

高調波と進相コンデンサ

構内に高調波が流れると、進相コンデンサや直列リアクトルの過熱・異音の原因となることがある。
しかし、その主な発生源は変圧器の励磁電流(定格電流の数%程度)ではなく
インバータや整流器などの負荷設備となる(主に第5・第7高調波)。

Δ結線で循環できるのは第3高調波など3の倍数次の成分だけであり、第5・第7高調波は止められない。
※Y-Y結線とY-Δ結線の変圧器を組み合わせ、30°の位相差を利用して整流器を12パルス化すれば
 第5・第7高調波を打ち消すことができる。

そのため、負荷由来の高調波に対しては変圧器の結線とは別に対策を考える必要がある。

直列リアクトルの選定

一般的な6%の直列リアクトルは主に第5高調波を想定している。
第3高調波が多い設備では、6%リアクトル付きのコンデンサが第3高調波を拡大するおそれがあるため
13%のリアクトルが選定されることがある。

対策の考え方は
経済産業省の「高圧又は特別高圧で受電する需要家の高調波抑制対策ガイドライン」などが参考になる。

変圧器の励磁電流は、鉄心の磁気飽和やヒステリシスによってひずみ
第3高調波を中心とする奇数高調波を含む。
この三相で同相となる第3高調波を、Δ結線の閉回路を利用して循環させることで
磁束と誘起電圧をほぼ正弦波に保つのが、Δ結線の重要な役割となる。
大容量変圧器ではY-Y-Δ結線で対処される一方
小容量の内鉄型変圧器では構造上の特性からY-Y結線も実用されている。
また、コンデンサ障害の主因となる第5・第7高調波はΔ結線では防げない点も
実務上押さえておくべきポイントとなる。

参考資料

参考文献:大崎栄吉「変圧器励磁電流と△結線の役割」(実務理論シリーズ第13回)、『新電気』2020年9月号、オーム社

資源エネルギー庁「高圧又は特別高圧で受電する需要家の高調波抑制対策ガイドライン」

JEC-2200(変圧器) / 電気学会電気規格調査会

日本電機工業会(JEMA)技術資料

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この記事を書いた人

はじめまして、当ブログ「名無し電気管理事務所」を運営している名無しと申します。
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