接地工事の最大の目的と「2つの役割」
電気設備に接地を施す目的は
「人命の保護(感電防止)」と
「設備の保護(火災・波及事故の防止)」
となる。
接地は大きく分けて以下の2つの役割(機器接地と系統接地)を持っている。
機器接地(A種、C種、D種に関係)

- 対象: 通常は電気が流れない「非充電部」(電気機器の金属製外箱や、それを支持する鉄台など)に施す。
- 目的: 機器内部の絶縁劣化などにより漏電が発生した際、漏れ電流を速やかに大地へ逃がすため。
- 接地がない場合の危険性: 機器接地がない状態で漏電した機器の金属製外箱に人が触れると
電流は「電気機器 → 人体 → 大地 → B種接地極 → 接地側電路」という閉回路を通って流れる。
人体は抵抗値が低いため、致命的な感電事故に直結する。
適切な機器接地と漏電遮断器の組み合わせにより
人体をバイパスして電流を大地に逃がし、瞬時に電路を遮断することが不可欠となる。
系統接地(B種に関係)

- 対象: 電路の一部である「充電部」(変圧器の低圧側中性点など)に直接施す。
- 目的: 変圧器内部で高圧(または特別高圧)と低圧が混触(ショート)する事故が起きた際
低圧側電路に危険な高電圧が侵入し、低圧側の機器が破壊されたり
使用者が感電したりするのを防ぐ(電位上昇を抑制する)ため。
接地工事の4つの種類と詳細規定(A種・B種・C種・D種)

電気設備技術基準の解釈(電技解釈)第17条等に基づき
接地工事は電圧や用途に応じて以下の4種類に分類される。
① A種接地工事(高圧・特別高圧機器向け)
高圧電路の感電防止などのための「保護接地」として機能する
重要な接地。
- 対象
高圧・特別高圧機器の鉄台、金属製外箱、避雷器など。
高圧の計器用変成器(VT・CT)の二次配線はD種接地でよいが、特別高圧の場合はA種接地が必要である。 - 接地抵抗値
10Ω以下
※例外規定あり - 接地線の太さ(軟銅線)
- 固定して使用する電気機械器具: 2.6mm以上(断面積換算で5.5mm²以上)。
- 移動して使用する電気機械器具: 8mm²以上(3種・4種のクロロプレンキャブタイヤケーブルなど、可とう性を必要とする部分に使用)。
② B種接地工事(変圧器の混触防止向け)
- 対象
高圧または特別高圧と、低圧を結合する変圧器の「低圧側中性点」または「1端子」。 - 接地抵抗値
150 / IgΩ以下 (※Ig = 1線地絡電流 [A])- 【緩和規定】 変圧器の高圧側電路の遮断装置の動作時間によって値が緩和される。
- 1秒を超え2秒以内に自動遮断する場合:
300 / IgΩ以下 - 1秒以内に自動遮断する場合:
600 / IgΩ以下
- 1秒を超え2秒以内に自動遮断する場合:
- 【緩和規定】 変圧器の高圧側電路の遮断装置の動作時間によって値が緩和される。
- 接地線の太さ(軟銅線)
直径4mm(断面積16mm²または14mm²)以上
(※高圧架空電線路の電柱に施設する変圧器などの場合は2.6mm以上)
③ C種接地工事(300V超の低圧機器向け)
- 対象: 300Vを超える低圧機器の鉄台、金属製外箱。
- 接地抵抗値: 10Ω以下(※緩和条件あり)
- 接地線の太さ(軟銅線): 1.6mm以上
④ D種接地工事(300V以下の低圧機器向け)
- 対象: 300V以下の低圧機器の鉄台、金属製外箱。
- 接地抵抗値: 100Ω以下(※緩和条件あり)
- 接地線の太さ(軟銅線): 1.6mm以上
実務における「A種接地」の施工上の要点とノウハウ
法令の数値を満たすだけでなく
実際の現場環境や機器の特性に合わせた確実な施工が
電気主任技術者や施工管理者に求められる。
(1) 高圧機器の鉄台や金属製外箱への確実な接続

- 二重接地の推奨
高圧電動機など、稼働時に振動が大きい高圧機器の接地については
万が一の断線や接触不良を防ぐため
機器の外箱とそれを支持する鉄台の「両方」に取り付けておくことが推奨される。 - 振動への配慮
振動を避ける意味合いから、機器を設置する鉄台がある場合は
電動機本体ではなく「鉄台のほう」をしっかりと接地することが有効。 - 耐震対策と電線の選定
地震時の揺れによる断線(耐震対策)を防ぐ意味から
硬い単線ではなく、柔軟性のある「より線 14mm²以上」の電線を使用することが望ましいとされている。
高圧機器や配電盤などにおいては、必ず接地端子に接地線を接続する。 - 物理的防護
立ち上がり部分など、外傷を受けるおそれがある箇所は
地下75cmから地表上2mまでの間を、防護管(硬質合成樹脂管など)に収めて保護する必要がある。
この際、電線は5.5mm²以上のものを使用する。
避雷器(LA)の接地における特記事項

- 電位干渉の防止(独立接地)
避雷器のA種接地極は、雷サージの大電流が大地に流れる経路となる。
この強大なエネルギーが他の機器へ逆流(電位干渉)するのを防ぐため
他の接地極から「2m以上」離して施工し、原則として共用してはいけない。 - 金属管への収納禁止
雷電流のような高周波の大電流が流れる際、接地線を鋼製金属管内に収めてしまうと
電磁誘導によってインピーダンス(交流抵抗)が急激に上昇し
サージ電流がうまく抜けなくなる。
そのため、避雷器の接地線は鋼製金属管内には収めないように規定されている。 - 太さの規定
高圧受電設備規程(1160-2表)においては
避雷器の接地線の最小太さは「14mm²」と厳格に規定されている。
接地母線(トレンチ等の活用)と保守性の向上

- 接地母線の布設
工場など広大な施設において
機器の使用場所ごとに個別に接地極を設ける(打設する)ことが困難なケースがある。
このような場合は、建屋内のトレンチ(配管ピット)などに「接地母線」をぐるりと布設し
そこから各機器へ分岐して接続する方法が有効となる。 - 制限と検討事項
接地母線の長さに法的な制限は特にないが
母線を設計する際は、事故時に流れる地絡電流の大きさを検討し
焼き切れや異常な温度上昇が起きないよう、十分な長さと太さを決定する必要がある。 - 接地端子箱の設置
接地抵抗は経年変化する。
定期的に保守・測定を行うため、電気室などにテスト用端子を集約した「接地端子箱」を設置しておくと
日々の点検や年次点検での測定作業が容易になる。
接地抵抗の維持管理(保守点検の重要性)

竣工時に規定の10Ω以下や100Ω以下を満たしていても
以下のような要因で抵抗値が上昇したり、機能を喪失したりするリスクが常にある。
- 周囲環境の変化
土壌の乾燥、冬場の凍結、地下水位の低下などによる大地の抵抗率上昇。 - 経年劣化
地中埋設部の接地極の腐食、端子部のサビや緩み。 - 外部要因
付近での他業者の掘削工事による接地極の破損や接地線の断線。
これらの異常を早期に発見するため
以下の点検が法令および保安規程で義務付けられている。
- 年次点検 (停電点検)
接地抵抗計を用いた正確な接地抵抗値の測定。
各機器間の導通確認。 - 月次点検 (日常点検)
機器外箱から接地極に向かう接地線の接続状態
(端子の緩みはないか、腐食していないか、物理的に断線していないか)の目視確認。
参考資料
経済産業省:『電気設備の技術基準の解釈』第17条(接地工事の種類及び施設)
一般社団法人 日本電気協会:『高圧受電設備規程』(JEAC 8011)避雷器の接地線太さ・施工規定
一般社団法人 日本電気協会:『自家用電気工作物保安管理規程』(JEAC 8021)接地抵抗の測定・維持管理

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