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太陽光発電システム被災時(水害編)の点検・撤去の備忘録

目次

水害による太陽光発電システムのリスク(基礎知識)

近年、台風や集中豪雨による水害が頻発しており
野立ての太陽光発電所(メガソーラーなど)だけでなく
住宅用の太陽光発電システムが浸水・冠水するケースが増えている。

太陽光パネルは、「光が当たっている限り発電を続ける」という特性があり
被災時であっても無闇に触れると極めて危険となる。

太陽光パネルの「自立発電」による感電リスク

太陽光パネル(モジュール)は、系統電源(電力会社からの電気)が遮断されていても
太陽光(日射)さえあれば直流電圧を発生し続ける。
浸水や泥をかぶった状態でも、わずかな光で数十ボルト〜数百ボルトの電圧が発生している可能性があり
素手で触れると重大な感電事故につながる。

水による絶縁低下と漏電

電気設備が水に浸かると、機器内部の絶縁物が劣化・破壊される。
特に接続箱やパワーコンディショナ(PCS)が冠水した場合
泥や不純物を含んだ水が導電路となり、漏電や短絡を引き起こす。
これにより、周辺の水たまり自体に電圧がかかっているケースもあり危険となる。

水害時の、太陽光発電設備による感電や火災を防ぐためポイント

浸水時は絶対に近づかない
水に浸かっている太陽光発電設備(パネルや関連機器など)に近づくと、感電する恐れがある。

光が当たると発電するため素手で触らない
流されたり放置されたりしているパネルでも、光が当たると発電するため、触ると感電する危険がある。
やむを得ず作業をする場合は素手を避け、ゴム手袋やゴム長靴などを使って感電対策を行う。

壊れたパネルは光を遮る
壊れたパネルを処理する際は、ブルーシートで覆うか、パネル面を地面に向けて感電を防ぐ。
廃棄する時は自治体の指示に従うこと。

水が引いた後も「感電」や「火災」に注意
水が引いた後でも、機器の内部には水分や汚れが残っていることがあり
触れて感電したり、ショートして火災が起きたりする危険がある。
復旧作業は十分に注意して行うこと。

危険な設備を見つけたら連絡を
感電の危険がある設備を見つけたら、周りの人に注意を呼びかけるとともに
最寄りの産業保安監督部や経済産業省へ連絡すること。

専門業者による被災時の点検・撤去における実務ポイント

作業前の必須準備

現場に入る前に
以下の安全装備を必ず身につける必要がある。

  • 頭部・顔面の保護
    • ヘルメットを着用する。
    • 保護メガネ(ゴーグル)やマスクを着用する。
  • 感電対策・手足の保護
    • 電気用ゴム手袋(絶縁性能が確保されたもの)を着用する。
    • 安全靴、又は滑り止め・釘等の踏み抜き防止効果のある長靴などを着用する。
    • 検電器・テスター(直流の高電圧に対応したもの)を準備する。
  • 浸水・冠水環境での対策
    • 作業場所や機器に浸水が残っている場合は、雨具や長靴など身体が濡れない服装を着用する。
    • 必要に応じて、絶縁衣や電気用高圧ゴム長靴(絶縁性能が確保されたもの)を着用する。
  • 高所作業・落下防止対策
    • 高所作業時は、安全帯・命綱を着用する。
    • 工具等の落下防止のため、腰袋を着用する。

被災時の各機器点検の正しい順序

点検中のシステムの不要動作を防止する観点からは
電力系統側から
受変電設備(低圧の場合は主幹ブレーカ)、パワーコンディショナ、集電箱、接続箱、太陽電池アレイ
の順で作業を行うことが望ましい。

絶縁抵抗の測定は
全ての機器のブレーカや断路器等を開放後に実施する。

電力系統の遮断手順と目的

  • 受電点からパワーコンディショナまでの交流回路の解列を行うことにより
    点検作業時の安全を確保すると共に、復電時の不要な運転開始を防止する。
  • 高圧受電の場合
    受変電設備内においてパワーコンディショナへの回路を遮断する。
    全量買取り用の配線の場合は、必要に応じPASにより解する。
  • 低圧受電の場合
    主幹ブレーカをOFFにする。

被災時のパワーコンディショナ(PCS)の停止・解列

パワーコンディショナの停止・解列により不要な運転動作を防止し
機器内充電部の最小化を図る。

具体的な手順

  1. 検電器やテスタ等にて、筐体や金属製金具等
    作業者が触る可能性のある金属部位に対地電圧がかかっていないことを確認。
  2. サーモビュア等にて筐体・機器の温度を確認。
  3. 運転している場合は、運転を停止。
  4. パワーコンディショナ取扱説明書に記載されている操作手順に従い
    入力側及び出力側のブレーカを切る。
  5. テスタ・絶縁抵抗計にて
    入力端子、出力端子の電圧・電流・絶縁抵抗を確認する。

各端子における正常状態の確認ポイント

  • 入力電圧:電圧(太陽電池アレイの開放電圧)が発生していること。ゼロ又は極端に低い電圧の場合、入力端子から太陽電池の間で、断線や短絡などの事象が発生しているものと思われる。
  • 入力電流:電流が流れていないこと。
  • 出力電圧:電圧が発生していないこと。
  • 出力電流:電流が流れていないこと。
  • 絶縁抵抗:1MΩ以上であること。

被災時の集電箱解列の目的

集電箱の解列を行う最大の目的は、集電箱毎に回路を分離すること。
これにより、集電箱間での電流の回り込みを防止し
集電箱点検時の安全を確保することが可能となる。

解列の基本手順

  1. 対地電圧の確認
    検電器やテスタ等にて、筐体や金属製金具等、作業者が触れる可能性のある金属部位に
    対地電圧がかかっていないことを確認。
  2. 温度の確認
    サーモビュア等にて筐体・機器の温度を確認。
  3. ブレーカの開放
    集電箱のブレーカを切る。
  4. 各種数値の測定
    テスタ・絶縁抵抗計にて、入力端子、出力端子の電圧・電流・絶縁抵抗を確認する。

測定時の判定基準と異常の兆候

解列時の端子測定における正常な状態と
異常が疑われるケースは以下の通り。

測定項目正常な状態異常時の兆候と想定される原因
入力電圧電圧(太陽電池アレイの開放電圧)が発生していることゼロ又は極端に低い電圧の場合、入力端子から太陽電池の間で、断線や短絡などの事象が発生しているものと思われる。
入力電流電流が流れていないこと電流が流れている場合、集電箱の操作誤りや入力ブレーカから入力端子の間で短絡が発生しているものと思われる。
出力電圧電圧が発生していないこと電圧が発生している場合、集電箱、パワーコンディショナ、受変電設備の操作誤りや機能不全が発生しているものと思われる。
出力電流電流が流れていないこと電流が流れている場合、集電箱、パワーコンディショナ、受変電設備の操作誤りや機能不全が発生しているものと思われる。
絶縁抵抗1MΩ以上地絡が確認された場合、その回路に繋がる配線、設備、機器が地絡している。

    被災時の接続箱解列の目的

    太陽電池アレイ毎に回路を分離することにより
    アレイ間での電流の回り込みを防止する。
    接続箱点検時における作業員の安全を確保する。

    解列の基本手順

    1. 安全確認
      検電器やテスタ等にて、筐体や金属製金具等、作業者が触る可能性のある
      金属部位に対地電圧がかかっていないことを確認。
    2. 温度確認
      サーモビュア等にて筐体・機器の温度を確認。
    3. 主ブレーカの遮断
      接続箱内の機器構成パターン毎に
      以下の手順にて接続箱の主ブレーカを切ります。
      • 「主ブレーカ+各回路ブレーカ」の場合
        主ブレーカ、各回路ブレーカの順に切る。
      • 「主ブレーカ+各回路断路器」の場合
        主ブレーカを切り、クランプ電流計で各回路の電流が流れていないことを確認の上、断路器を切る。
        ※この際、電流が流れている回路は切らないようにする。
      • 「主ブレーカ+ヒューズホルダ」の場合
        主ブレーカを切り、クランプ電流計で各回路の電流が流れていないことを確認の上
        ヒューズホルダを外す。
        ※電流が流れている回路は外しては危険。
    4. 端子部の測定
      テスタ・絶縁抵抗計にて、入力端子、出力端子の電圧・電流・絶縁抵抗を確認する。
      • 入力電圧: 太陽電池アレイの開放電圧が発生していることを確認。
        ゼロ又は極端に低い電圧の場合、入力端子から太陽電池の間で断線や短絡が発生していると考えられる。
      • 入力電流: 電流が流れていないことを確認。流れている場合は、操作誤りや短絡が疑われる。
      • 出力電圧/電流: ともに発生していない(流れていない)ことを確認。
        これらが検出された場合は、他の設備の操作誤りや機能不全が想定される。
      • 絶縁抵抗
        1MΩ以上であることを確認。
        地絡が確認された場合、その回路に繋がる配線、設備、機器が地絡している。

    【作業時の注意事項】
    ●機器や配線が浸水中または浸水後の場合は
    損傷により筐体や機器内に異常な電圧が印加されている場合が想定されるため
    作業者が触る可能性のある部位の電圧確認を検電器やテスタ等で行う必要がある。

    ●入力(太陽電池)側端子には、太陽電池アレイからの電圧が印加されているので、不用意に端子に接触しないよう注意が必要です。

    ●漂流物等作業に支障となるものがある場合は、予め除去しておくこと。

    被災時の太陽電池モジュールの解列・撤去

    被災した高電圧の太陽電池アレイを安全に処理するためには
    太陽電池モジュール1台ずつに解列することが重要となる。
    これにより、撤去作業および復旧作業の安全を確保することができる。

    基本的な作業手順

    1. 対地電圧の確認
      検電器やテスタ等を用いて、枠・架台や金属製金具など
      作業者が触れる可能性のある金属部位に対地電圧がかかっていないことを必ず確認する。
    2. 温度の確認
      サーモビュア等を使用して、太陽電池モジュールおよびケーブルの温度を確認する。
      異常発熱の有無を見極めるステップとなる。
    3. ケーブルの取り外し・切断
      太陽電池モジュールの「+」「-」のケーブルを全て外す。
      • 外す対象のケーブルに電流が流れていないことを、クランプ電流計を使って確認する。
      • コネクタを外すか、ケーブルを絶縁されたニッパー等を用いて切断する。
    4. 切断箇所の保護
      切断した箇所の心線が人体や他の部位に接触して短絡・感電することを防ぐため
      ビニルテープ等でしっかりと保護する。
    5. モジュールの取り外しと仮置き
      架台からモジュールを取り外す。
      その後、パレット等を用いてガラスが割れないように養生を行った平坦な場所に
      太陽電池モジュールのガラス面を下にして置く。

    作業時の重要事項・注意点

    被災現場は足場が悪く、想定外の損傷が起きているケースが多々あるため
    下記の内容に注意して作業すること

    電圧印加状態での作業禁止

    ケーブルの取り外しや切断(上記手順の3および4)の作業は
    夜間に行うか、太陽電池モジュールを遮光シートなどで覆うなどして、電圧が出ない状態で行う必要がある。

    浸水・破損によるリスクへの対応

    • 絶縁破壊の想定
      太陽電池モジュール、ケーブル、コネクタが浸水している、あるいは浸水後の状態である場合は
      損傷によって絶縁が破壊されていることが想定される。
      そのため、作業者が触る可能性のある部位の電圧確認は、検電器やテスタ等で入念に行う必要がある。
    • ガラス割れへの注意
      太陽電池モジュールのガラスが割れている場合は、ガラス片で怪我をしないよう注意すること。

    【現場環境と廃棄のルール】
    ●障害物の除去
    漂流物など、作業に支障となるものがある場合は、あらかじめ除去しておくこと。

    ●適切な廃棄処理
    取り外した太陽電池モジュールや架台等を廃棄する場合は
    産業廃棄物としての処理が原則となる。
    ※地方自治体からの指示がある場合には、その指示に従って処理を行うこと。

    法令関係と実務での注意点

    電気事業法上、出力50kW以上の太陽光発電設備は「高圧」扱いとなり
    電気主任技術者の選任が必要となる。

    災害発生時、オーナー様や一般の方が焦って自ら復旧作業を行おうとするケースがあるが
    これは非常に危険な行為となる。
    電気主任技術者は
    「電気の専門家でない方は絶対に触らず、販売施工業者や電気管理技術者に連絡するよう指導する」
    という周知徹底の役割も担っている。

    参考資料

    経済産業省
    水没した太陽電池発電設備による感電やショートによる火災の防止についてのお願い(周知)

    一般社団法人太陽光発電協会
    太陽光発電システム被災時の点検・撤去に関する手順・留意点【水害編】

    経済産業省
    『電気事業法』『電気設備に関する技術基準を定める省令』

    経済産業省 産業保安グループ
    『水没した太陽光発電設備による感電防止についてのお願い』

      一般社団法人 太陽光発電協会(JPEA)
      『太陽光発電システム被災時の点検・撤去に関する安全マニュアル』

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      この記事を書いた人

      はじめまして、当ブログ「名無し電気管理事務所」を運営している名無しと申します。
      ここでは、私の経歴や当ブログの運営目的についてご紹介します。

      1. 保有資格
      実務に関わる以下の国家資格を保有しています。

      第3種電気主任技術者(2023年取得)

      第1種電気工事士

      建築物環境衛生管理技術者

      2. 経歴・実務経験
      電気保安・ビルメンテナンスの業界で約7年の実務経験があります。
      現在は電気保安法人にて、保安業務従事者として勤務しています。

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