夏場におけるPCSトラブルの基礎知識

太陽光発電設備の保安管理業務において、夏場は特にトラブルが発生しやすい過酷な季節となる。
現場を巡視していると、思わぬ不具合に直面することが多々あり
陽光発電設備における心臓部とも言える「PCS(パワーコンディショナ)」の
夏場のトラブル(「熱中症」)と、その対策について下記に記載する
8月に故障台数が急増する

約6年間にわたる月ごとのPCS故障台数の統計調査によると
異常気象による暑さの影響か、特に8月に故障台数が増加するという結果が出ている。
日射量が多く稼ぎ時である8月にPCSが停止してしまうことは、発電事業において不利益となる。
「温度上昇抑制機能」による見えない出力低下
PCSが完全に故障していなくても、内部温度の上昇によって
「温度上昇抑制機能」が働き、出力制限がかかる事例が多く発生する。
- 温度上昇抑制機能とは
PCS内部の温度が一定以上(機種によるが、40℃以上のものが多い)になった際
PCS自体が壊れないように安全機能が働き、自主的に出力制御を行う仕組みのこと。 - 監視の落とし穴
この抑制機能が作動しても、場合によっては遠隔監視システムが異常として感知してくれないことがある。
知らないうちに発電量が落ちてしまうため、大きな損失につながる。
冷却ファンやフィルターの不具合
安全機能が動作してしまう原因として
冷却機構の不具合が挙げられる。
- 冷却ファンの故障
高温多湿になる夏場は、錆が進行して冷却ファン(換気扇)が故障しやすい状態になることがある。 - フィルターの目詰まり
家庭用エアコンと同様に、フィルターが目詰まりしていると吸排気がしにくくなり
内部温度が上昇してしまう。 - 雑草やツタの絡まり
草木の成長が早い夏ならではの事象として
PCS内部やファンにツタが絡まってしまう事例もある。
実務におけるポイント

電気室内の換気扇設定温度
電気室内にPCSが設置されている場合、室内の空調や換気扇の設定温度に注意が必要となる。
電気室内が39℃などの高温になれば、排熱を行うPCS内部はさらに高温となり
抑制機能が動作してしまう可能性がある。
実務においては、周辺環境の温度だけでなく「PCS内部の排熱状況」を考慮した温度設定が重要となる。
O&Mの重要性と最新の監視技術
改正FIT法(現・再エネ特措法)の施行以降
太陽光発電設備の適切な保守点検が義務化されており、発電効率の維持は事業者の責務となっている。
近年「ストリング監視」や「スマートPCS」による詳細なデータ取得が普及しており
単なる設備異常だけでなく、「日射量に対して発電量が適正か(PR値の低下がないか)」を
AIで分析・検知するクラウドサービスも登場している。
温度上昇抑制による「見えない出力低下」を防ぐためには
詳細なデータログの確認と日々の発電量トレンドの把握が必要となる。
夏前の草刈りと防草対策
ツタの絡まりによる冷却ファンの停止は、典型的な物理的トラブルとなる。
近年、単純な草刈りだけでなく、防草シートの敷設や
背丈の伸びないグランドカバープランツの導入など予防的な雑草対策が主流になってきており
PCS周辺は風通しを良くし、熱がこもらない環境を維持することが重要となる。
夏前にやっておくべきPCSの熱対策チェックリスト

- フィルターの清掃・交換:目詰まりがないか確認し、清掃または交換を実施する。
- 冷却ファンの動作確認:異音がないか、片肺運転になっていないか(錆などの進行がないか)を確認する。
- 吸排気口周辺の環境整備:PCS周辺の雑草を刈り取り、ツタなどが絡まるリスクを排除する。
- 換気扇・空調の温度設定見直し:電気室・キュービクル内に設置されている場合、換気扇のサーモスタット設定温度が適切か(例:27℃〜30℃程度)再確認する。
- 遠隔監視のしきい値見直し:出力抑制がかかった際に、わずかな発電量の低下でもアラートが飛ぶよう、監視システムの設定を最適化する。
参考資料
新電気2024年8月号「あなたの知らないPV事例が集う場所エネテク 太陽光相談所
File31 暑すぎる! 高温多湿で電気設備も熱中症」より一部引用
資源エネルギー庁「事業計画策定ガイドライン(太陽光発電)」
一般社団法人太陽光発電協会(JPEA)「太陽光発電システム 保守点検ガイドライン」

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