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接地形計器用変圧器(VTZ-E6EP1)の基礎知識と実務の備忘録

目次

接地形計器用変圧器(VTZ-E6EP1)の基礎知識

非接地系統で零相電圧(Vo)を検出するのに使う接地形計器用変圧器(EVT)を記載する。
例として、東芝のモールド形EVT「VTZ-E6EP1」を取り上げる。
メーカーのカタログ(東芝計器用変成器 モールド形 CKTD-0127)の仕様を出発点に
ZPDとの違い、点検、ヒューズ交換の注意点まで、実務で役立つ点をまとめた。

主な仕様

  • 用途:一般計器継電器用(地絡保護のための零相電圧の検出などに使う)
  • 相数:三相(形式の「T」は三相を表す)
  • 定格電圧:一次 6.6kV/二次 110V/三次 110/3V または 190/3V
  • 二次負担:3×200VA
  • 三次負担:3×200VA
  • 確度階級:1P/3G級
  • 耐電圧:13.2/60kV
  • 質量:61kg
  • 構造:レジンモールド形
  • 準拠規格:JIS C 1731-2、JEC-1201(50Hz・60Hz共用)
  • 付属ヒューズ:一次側に限流ヒューズ「MPT150」が付いている。
    定格は7.2kV・1A、遮断電流40kA、参考遮断容量500MVA(JEC-2330)。
    形式の末尾「P」はヒューズ付を表す。

EVTは、一次側をスター(星形)結線にして中性点を接地している。
地絡事故のときは、オープンデルタ結線の三次巻線から零相電圧(Vo)を取り出す。

接地形計器用変圧器(VTZ-E6EP1)における実務でのポイント

EVTとZPDの違いと使い分け

EVTとZPDの実務での使い分けの図解。高圧配電線に直接つながる部分はZPDとDGRが標準で、EVTは発電設備、特別高圧需要家の自家用変圧器二次側の6kV非接地系統、変電所に設置する

地絡事故のときに零相電圧を検出する機器には
EVTのほかにZPD(コンデンサ形の零相電圧検出装置)がある。

  • EVT:変圧器の巻線を通して大地につながる。直流も通る経路。
  • ZPD:コンデンサを通して大地につながる。直流は通さない。

ZPDは直流を通さないので、回路の絶縁抵抗を測るときに影響しにくいという利点がある。
一方、EVTがつながっている高圧回路で絶縁抵抗測定をすると、測定電流がEVTの巻線を通って大地へ流れてしまう。
そのため、EVTを切り離すか、一次接地側端子の接地を外してから測る必要がある。

もう一つ大事なのが、高圧配電線に直接つながる部分の零相電圧検出には
EVT(VT方式)ではなくZPD(コンデンサ形)を使うこと。

EVTのような巻線形の検出器を需要家側に置くと、配電線があちこちで接地された状態になり
電力会社が事故点を探す作業や地絡保護に支障が出る。
たとえば東京電力パワーグリッドの技術要件では、発電設備を高圧配電線につなぐ場合について
「配電線の事故点探査に支障を及ぼさないよう、零相電圧検出部には、VT方式ではなく、インピーダンスの高いCVTを採用していただきます」としている。
系統連系規程(JEAC 9701)にも、同じ趣旨の規定がある。
このため、高圧需要家ではZPDと地絡方向継電器(DGR)を組み合わせるのが標準となっている。

※上記の規定は、発電設備を高圧配電線に連系する場合のもの。
実際の設計では、系統連系規程の原文と電力会社の技術要件を確認すること。

EVTの設置箇所の具体例

  • 発電設備
  • 特別高圧で受電する需要家の、自家用変圧器の二次側にある6kV非接地系統
  • 変電所

接地形計器用変圧器(VTZ-E6EP1)の保守点検と更新推奨時期

定期点検の要領(取扱説明書の抜粋)

EVT(接地形計器用変圧器)の定期点検と注意点の図解。絶縁抵抗測定・外観点検・部分放電試験の要領と、耐電圧試験のときは必ずEVTを回路から切り離すこと
  • 絶縁抵抗測定(1年に1回)
    高圧巻線と低圧巻線・大地の間
    1000Vの絶縁抵抗計で100MΩ以上

    低圧巻線と大地の間、低圧巻線どうしの間
    500Vの絶縁抵抗計で2MΩ以上
  • 外観点検(1年に1回)
    本体に変色・剥離・亀裂・傷・変形がないか。トラッキングや炭化の跡がないか。
    金属粉やカーボン性のほこりが付いていないか。端子と接続部に緩みや局部的な変色、腐食がないか。
  • 清掃
    汚れ、ほこり、水滴が付いていれば清掃を行う。
  • 部分放電試験
    10年を過ぎたら1年に1回行う。
    放電電荷量が基準値以下であること、前年より大きく増えていないことを確認する。
    現地での測定が難しい場合は、メーカーに相談。

耐電圧試験のときは、必ずEVTを回路から切り離す

EVTは段絶縁である。
一次接地側端子の絶縁強度は、線路側端子より低くしているため
高圧巻線全体に線路側と同じ耐電圧試験はかけられない。

また、一端を接地した構造なので、高い商用周波電圧をかけると鉄心が飽和する。
竣工時の検査などで受電盤の商用周波耐電圧試験をするときは
EVTを必ず回路から切り離すこと。

メーカーのFAQには、同じ系列のEVTに耐電圧試験の電圧をかけて
一次接地側端子と大地の間で火花が出た事例が載っている。
この場合は内部の絶縁が壊れているおそれがあり、修理はできず、製品の交換が必要とされている。

更新推奨時期

日本電機工業会(JEMA)技術資料第164号では
計器用変成器の更新推奨時期を「モールド形(そのほかの乾式を含む)15年」としているが
これは保証値ではなく、日常点検と定期点検を行っていることが前提の目安となる。

一次側ヒューズが切れたときの注意点

VTZ-E6EP1の一次側ヒューズが切れたときの注意点の4コマ図解。原因は雷などの異常電圧か接続機器の異常で、取扱説明書に沿って点検し、正常ならヒューズを全部取り替える

VTZ-E6EP1の一次側には、保護用の限流ヒューズ(MPT150)が付いている。
このヒューズが切れていたとき、「ヒューズを替えれば直る」と考えるのは危険。

メーカーの資料では
一次側ヒューズが切れる原因として次の2つが挙げられている。

  1. 雷サージなどの異常電圧で、高圧巻線の絶縁が劣化・破壊した
  2. つないだ計器の異常、誤結線、過負荷などで低圧巻線が焼損し、それが原因で高圧巻線の絶縁が破壊された

ヒューズが切れていたら、取扱説明書の点検要領(外観、臭気、巻線抵抗、絶縁抵抗など)に従って
本体の絶縁性能を細かく診断すること。
異常があれば本体を取り替える。

絶縁に異常がなければ、ヒューズ自体の劣化や励磁突入電流で切れたと判断して、ヒューズを交換する。
このときは、切れたのが1本だけでも、全部取り替えるようメーカーが指示している。
交換したあと短い期間でまた切れる場合は、内部で絶縁が壊れている可能性が高いので
本体を取り替えること。

まとめ

  • VTZ-E6EP1は、三相用のモールド形接地形計器用変圧器(EVT)である。
    仕様は6.6kV/110V/110/3V または 190/3V、3×200VA、1P/3G、MPT150ヒューズ付。
  • EVTは巻線を通して接地されている。
    高圧受電の一般需要家ではZPDとDGRの組み合わせが標準で
    EVTは発電設備や自家用の非接地系統などで使われる。
  • 段絶縁なので、耐電圧試験のときは必ず回路から切り離す。
  • 点検は、絶縁抵抗(高圧側は1000Vメガで100MΩ以上、低圧側は500Vメガで2MΩ以上)と外観を年1回確認。
    10年を過ぎたら部分放電試験も年1回行う。
    更新推奨時期は15年
    ※保証値ではない。
  • 一次ヒューズが切れたらまず本体を診断する。
    異常がなければ、ヒューズを全数交換する。

参考資料

  • 東芝産業機器システム「東芝計器用変成器 モールド形」カタログ CKTD-0127(2024年2月発行)
  • 東芝産業機器システム FAQ「計器用変成器」(EVTの耐電圧試験について)
  • 日本電気協会「系統連系規程」(JEAC 9701)
  • 東京電力パワーグリッド「系統連系に係る設備設計について〈発電設備(高圧・低圧)〉」(2024年4月1日実施)
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この記事を書いた人

はじめまして、当ブログ「名無し電気管理事務所」を運営している名無しと申します。
ここでは、私の経歴や当ブログの運営目的についてご紹介します。

1. 保有資格
実務に関わる以下の国家資格を保有しています。

第3種電気主任技術者(2023年取得)

第1種電気工事士

建築物環境衛生管理技術者

2. 経歴・実務経験
電気保安・ビルメンテナンスの業界で約7年の実務経験があります。
現在は電気保安法人にて、保安業務従事者として勤務しています。

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