点検頻度を緩和するための要件(おさらい)

スマート保安に関するシリーズ第3弾。
前回の「スマート保安についての基礎知識まとめ②(導入されている保安技術)」では、絶縁監視装置や遠隔監視システムといった具体的な技術について解説した。
今回は、それらの技術を実際の現場に導入し
点検頻度を緩和するまでの具体的な手続きと、お客様(設置者)へ提案する際のポイントを整理する。
「監視装置を付けたら明日から点検頻度が減る」というわけではなく
事前の手続きやお客様との調整事項をしっかり理解しておく必要がある。
手続きの前に、どのような条件で点検頻度を緩和できるのかを簡単におさらいしておく。
根拠は平成15年経済産業省告示第249号の第4条第8号となる。
| 点検頻度 | 主な条件 |
|---|---|
| 隔月1回以上 | 信頼性の高い設備(第7号イ〜ニ)+絶縁監視装置 または 漏電遮断器 |
| 3か月に1回以上(令和7年4月〜) | 信頼性の高い設備(第7号イ〜ニ)+低圧電路の絶縁監視+負荷の監視+主遮断装置等の更新計画の策定と実施 |
令和7年4月1日に施行された告示改正で、外部委託事業場の需要設備も
上記の4つの要件をすべて満たせば月次点検を3か月に1回まで緩和できるようになった。
※この緩和は外部委託制度に関するもので、自社で電気主任技術者を選任している事業場には直接適用されない。
各要件の詳細、過負荷警報への対応
換算係数の扱いについては、以下の記事で解説している。
導入までの手続き4ステップ

点検頻度の緩和は、監視装置を設置し、要件を満たした状態で申請するのが前提となる。
そのため、機器の設置が先、届出・申請が後という順番になる。
1. 機器の設置・試験
絶縁監視装置・負荷監視装置などを設置し、警報テストや通信試験を実施して
警報が確実に受信できることを確認する。
あわせて、装置自体が故障したり通信が途絶えたりしたときに気付ける仕組み(死活監視)も整えておく。
負荷監視装置については、装置が正常に動作せず過負荷の監視ができない場合に
電気管理技術者等が遠隔地でその事実を把握できることが
主任技術者制度に関するQ&Aで装置の要件として示されている。
2. 委託契約の変更と保安規程の整備
電気保安法人や電気管理技術者との「保安管理業務委託契約」を見直し
主に次の内容を定める。
- 新しい点検頻度
- 警報受信時の対応体制(駆けつけ体制)
- 点検回数の変更に伴う委託費用
- 3か月に1回とする場合は、設置者が受託者の監督の下で、保安規程の更新計画に従って主遮断装置等を更新する旨
あわせて、保安規程に新しい点検頻度や監視装置を活用した保安体制を定める。
3か月に1回とする場合は、設備更新計画も保安規程に定める必要がある。
Q&Aでは、保安規程の本文に
「告示第4条第8号ハの点検頻度で点検する場合は別表のとおり主遮断装置等を更新する」旨を記載し
別表に
①対象設備
②更新周期
③(参考)次回更新期限
を記載する例が示されている。
①対象設備や②更新周期を変更した場合は保安規程の変更届出が必要だが
③(参考)次回更新期限の変更だけであれば届出は不要とされている。
3. 外部委託承認申請と保安規程変更届出
点検頻度の変更は外部委託承認の内容の変更にあたるため
産業保安監督部へ外部委託承認申請を行い、保安規程(変更)届出もあわせて提出する(Q&A 3.13)。
保安規程の変更届出だけでは足りない点に注意すること。
4. 新たな点検体制での運用開始
承認を受けたのち、新しい点検頻度での運用に移行する。
※具体的な様式・添付書類や電子申請(保安ネット)の取扱いは
管轄の産業保安監督部によって異なる場合がある。
事前に確認しておくこと。
お客様への提案時:費用対効果と説明ポイント

スマート保安の導入を設置者(お客様)に提案する際
単に「点検が減ります」と伝えるだけでは不十分となる。
以下のポイントを踏まえて説明することが重要。
コストシミュレーションの提示
「月次点検が減ることによる委託費用の削減額」と
「監視装置の初期導入費用・月々の通信費等」を比較し
何年で投資回収ができるかを明確に提示する。
3か月に1回とする場合は、設備更新計画に沿った更新費用(高圧ケーブル、PAS、遮断器など)も発生する。
後から「聞いていなかった」とならないよう
更新費用も含めてシミュレーションしておくことが大切となる。
保安水準の向上
点検回数が減っても、監視装置が24時間365日、漏電や過負荷を監視するため
「見えない期間のトラブル」を早期発見でき
結果的に電気火災や波及事故のリスクを低減できることを丁寧に説明する。
設置者側にも求められること

点検頻度の緩和は、設置者にとっても「任せきり」で済むものではない。
事前に次の点を説明し、理解を得ておくこと。
- 過負荷の警報が続く場合は、負荷の見直しなどの対応をお願いすることがある
- 更新計画どおりに設備を更新しなければ、3か月に1回の点検は続けられない
- 監視装置が正常に動いていることが前提の制度なので
故障や通信異常のときは速やかな修理・復旧に協力してもらう必要がある
まとめ

- 点検頻度の緩和には、機器の設置・試験を済ませたうえで、委託契約の変更、外部委託承認申請、保安規程の変更届出といった手続きが必要。
- お客様への提案時は、費用対効果のシミュレーション(設備更新費用を含む)と保安水準の向上をセットで説明する。
- 設置者にも、過負荷への対応や計画どおりの設備更新といった役割があることを事前に共有しておく。
スマート保安の推進は単なる「現場作業の削減」にとどまらず
「監視システムの稼働確認」や「計画的な設備更新の履行」といった
電気管理技術者(受託者)としてのマネジメント責任がより強く求められる制度設計となっている。
手続きと運用の両面を正しく理解し、適切に進めていく必要がある。
参考資料
平成15年経済産業省告示第249号(電気事業法施行規則第五十二条の二第一号ロの要件等に関する告示)
経済産業省 産業保安・安全グループ 電力安全課「主任技術者制度に関するQ&A」(令和8年10月)
経済産業省「主任技術者制度の解釈及び運用(20210208保局第2号)の一部を改正する規程」(令和7年4月1日施行)

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