月次点検の頻度とスマート保安の推進

令和7年4月1日に施行される平成15年告示第249号の改正により
要件を満たした外部委託事業場について、月次点検の頻度を「3ヶ月に1回以上」とすることが可能になった。
通常、高圧受電設備の月次点検は原則「月に1回」である
従来から、B種接地線の漏れ電流を監視する絶縁監視装置を設置するなどの条件を
満たせば「隔月に1回」に緩和されてきたが
昨今はスマート保安技術の活用促進により、さらに合理化が進められている。
今回の改正は、より高度な監視装置の導入や計画的な設備更新を条件に
保安水準を維持しつつ点検頻度をさらに下げるための仕組みとなる。
月次点検頻度を3ヶ月に1回とするための4つの要件

月次点検の頻度を3ヶ月に1回以上とするためには
以下の4つの要件をすべて満たす必要がある。
- 信頼性の高い需要設備であること
告示第4条第7号イからニまでの設備条件の全てに適合する信頼性の高い需要設備であることが求められる。 - 低圧電路の絶縁監視
低圧電路の絶縁状態の適確な監視が可能な装置が取り付けられており
適確に監視されていることが必要となる。 - 負荷の適確な監視
負荷の適確な監視が可能な装置が取り付けられており
適確に監視されていることが必要となる。 - 設備更新計画の策定と実施
主遮断装置並びに保安上の責任分界点から主遮断装置までの間に施設する
開閉器、遮断器及び配線の更新計画を保安規程内に定めている必要がある。
※定められた更新計画に従って更新されていることが必須条件となる。
実務におけるポイント

今回の改正で特にハードルとなりそうなのが
「設備更新計画」と「負荷の適確な監視」となる。
設備更新計画について
単に計画を作るだけでなく
主任技術者としての責任がより明確化されている。
- 対象設備は、波及事故を防止する上で重要である高圧ケーブル、PAS、遮断器等を想定している。
- 主任技術者に対し、設置者へ更新計画の履行指導を行うよう求めている。
- 万が一、不履行の場合には経済産業省へ報告するよう求められている。
負荷(電流値)の監視について
電流値のログ保存と
過負荷時の具体的な対応フローが規定された。
- 各フィーダー電流値(各変圧器の2次側電流値)を連続的に計測し
負荷の記録を1年間保存する必要がある。 - 過負荷が4時間以上継続している旨の警報を繰り返し受信した場合に
警報発生の原因を調査し、必要な措置を行うことが求められている。 - 調査・分析及び措置の記録を保存する必要がある。
- 過負荷状態が継続する場合には
設置者に回避を指導することを、主任技術者に義務付けている。
換算係数の見直し
点検頻度を緩和した場合、主任技術者が受託できる事業場数の計算に
用いる「換算係数」に乗じる値も規定されている。
- 設備容量100kVA以下又は低圧受電の場合は「0.6」となる。
- 上記以外(100kVA超の高圧受電など)の場合:換算係数に「0.45」を乗じる
主任技術者制度に関するQ&Aによる換算件数の考え方
1. 要件を満たしているが「毎月点検」を実施する場合
遠隔監視装置の設置や設備更新計画の策定など
点検頻度緩和の要件をすべて満たしているものの
「お客様(設置者)の要望で、これまで通り月1回の点検を継続したい」というケースも現場では起こり得る。
Q&Aによると、このような場合でも設備内容に応じた割引係数(0.6など)を使用することが認められている。
※ 行政側からは「換算係数を減らす(点数を空ける)ことだけを目的として絶縁監視装置等を取り付けることは推奨しない」。
あくまで設備の保安レベル向上(スマート保安)が目的であること。
2. 同一構内に複数の設備・発電所が混在する場合の計算
需要設備に加えて太陽光発電所などが併設されている事業場場合
Q&Aでは、設備ごとに点検頻度が異なる場合の按分計算の方法が示されている。
- 需要設備と発電所が混在する例
低圧受電の需要設備と、余剰買取の太陽電池発電所(50kWなど)が同一構内にある場合
それぞれ独立して計算する。
例えば、需要設備は「隔月1回以上」の頻度(換算係数 0.3 × 0.6 = 0.18)
太陽電池発電所は「毎年2回以上」の頻度(換算係数 0.3 × 0.2 = 0.06)として
それぞれの値を合算する方式となる。
(※数値はQ&Aの算出例を一部単純化している) - 一つの発電所に複数の発電設備がある場合
例えば「1号機は3ヶ月に1回点検、2号機は毎月点検」といったように
保守契約の有無などで点検頻度が異なる場合
それぞれの設備容量の割合で按分して計算することも可能とされている。
この場合、保安規程等に設備ごとの点検頻度を明確に定めておく必要がある。
通信異常や監視装置が故障した場合の対応
スマート保安の導入で点検頻度を減らせる反面
実務上で特に注意したいのが監視装置自体のトラブルとなる。
絶縁監視装置や負荷監視装置は
通信ネットワークを介して常時データを取得していが、落雷による機器故障や
通信キャリア側の障害などで機器が「オフライン」になる可能性がある。
監視装置の異常発生時のルール
- 一時的な「毎月点検」への回帰 監視装置の通信異常や故障が発生し
一定期間内に復旧ができない場合、その期間中は一時的に原則の「月1回」の点検頻度に戻して対応しなければならない規定が設けられている。 - 「死活監視」が新たな重要タスクに
スマート保安導入後は、設備そのものの異常対応だけでなく
「監視装置が正常に動いているか・通信できているか(死活監視)」をチェックすることが
主任技術者にとっての責務となる。
参考資料
経済産業省:電気事業法施行規則第五十二条の二第一号ハの要件、第二号ロ及びハの機械器具並びに第三号の算定方法等の一部を改正する告示(平成15年経済産業省告示第249号)
経済産業省 産業保安グループ:主任技術者制度に関するQ&A / 主任技術者制度の解釈及び運用(内規)
経済産業省 産業構造審議会 電力安全小委員会 資料(スマート保安推進関連)

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