太陽光発電における逆流防止装置についての基礎知識まとめ

2025年6月23日

逆流防止装置とは？

太陽光発電システムにおける逆流防止装置は、主に以下の2つの「逆流」を防ぐための装置を指す。
＝太陽光発電における逆流防止装置は、太陽電池モジュール自体の保護と
　電力系統の安定性維持という、大きく異なる二つの目的のために設置される。

①太陽電池モジュール（パネル）間の逆流（直流電流の逆流）
②太陽光発電システムから電力会社への系統への逆流（交流電流の逆流、逆潮流）

これらはそれぞれ異なる目的と仕組みを持っている。

逆流防止装置の設置場所（イメージ図）
太陽光発電メンテナンスガイドより画像引用

太陽電池モジュール間の逆流を防ぐ装置（逆流防止ダイオード）

役割　

太陽光パネルは、複数のセルが直列に接続されてモジュールを構成し
さらに複数のモジュールが接続されてストリング（直列回路）を形成する。
そして、複数のストリングが並列に接続されて太陽光発電アレイを構成する。

この構成において、特定のモジュールに影がかかったり、汚れが付着したりすると
そのモジュールの発電量が低下し、電圧が下がる。このとき、他の正常に発電しているモジュールから
発電量の低下したモジュールへ電流が逆流してしまう可能性がある。
この逆流は、発熱や焼損、さらにはシステム全体の発電量低下につながるリスクがある。
逆流防止ダイオードは、この電流の逆流を防ぐ役割を担う。

仕組み

ダイオードは、電流を一方向にしか流さない性質（整流作用）を持つ半導体素子。
太陽光発電システムでは、通常、接続箱内やモジュール内部に組み込まれている。

順方向（発電している方向）への電流は流す。
逆方向（逆流しようとする方向）への電流は遮断する。

これにより、発電量の低下したモジュールへの逆流を防ぎ
パネルの損傷や発電効率の低下を防止する。

種類と設置場所

一般的に、太陽電池モジュールの接続箱内に設置される。
近年では、一部の太陽電池モジュールに直接組み込まれているものもある。
また、大規模な太陽光発電システム（メガソーラーなど）では、ダイオードによる損失を改善するために
発電量が多い時にダイオードをバイパスする逆流防止リレーが用いられることもある。

必要性

太陽光発電システムを安定して運用し、パネルの損傷を防ぐために非常に重要な部品。
特に、部分的に影がかかりやすい場所や、汚れが付着しやすい環境では、その重要性が増す。

メンテナンス

定期的な点検で、逆流防止ダイオードの接続部の緩みや破損
腐食がないかを確認することが推奨される。
故障した場合は、その回路の出力低下につながる。

系統への逆流（逆潮流）を防ぐ装置（RPR：逆電力継電器、制御装置）

役割

太陽光発電システムで発電した電力を自家消費し
余った電力を電力会社へ売電しない「自家消費型太陽光発電」の場合
発電した電力が電力会社の送電網へ逆流（逆潮流）することを防ぐ必要がある。
逆潮流は、電力系統の安定性に影響を与えたり、電力会社との契約に違反したりする可能性がある。

仕組み

主な装置として、RPR（リバースパワーリレー：逆電力継電器）や制御装置がある。

RPR（逆電力継電器）
電力の流れを常に監視し、電力会社側への逆潮流が発生する恐れがあると検知すると
自動的に太陽光発電システム（パワーコンディショナー：PCS）を停止させ、逆流を阻止する。

電力会社から設置が求められることが多く、特に自家消費型太陽光発電では義務付けられるケースが多い。
RPRが作動すると発電が停止するため、極力作動させないようにすることが重要視される。
制御装置（負荷追従制御機能など
RPRが作動する前に、逆潮流の発生を予測し、発電量を制御することで逆流を防ぐ。
具体的には、施設内の電力消費量をリアルタイムで把握し
それに合わせて太陽光発電システムの発電量を調整する。

これにより、発電した電力が余りすぎて系統に逆流することを未然に防ぎながら
最大限の発電量を維持することが可能になる。
結果、RPRの作動による発電停止を回避し、より安定した自家消費運用を実現する。