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年末年始の長期休業前後の電気設備チェックリストと停電・復電手順まとめ

目次

記事概要

年末年始やお盆などの長期休業前後における、高圧受電設備(キュービクル)の管理と停電・復電手順について、備忘録としてまとめた。

工場やテナントビルが長期間稼働を止める休業期間は、電気設備にとっても普段と違う状態が続く期間である。
休業前の準備不足や、休み明けの不用意な復電操作は、思わぬ事故やトラブルを招くおそれがある。

この記事では、電気主任技術者や実務者に向けて、次の内容を解説する。

  • 休業中に「通電したまま休むか/主遮断器を切るか」の判断
  • 休業前の確認事項
  • 高圧受電設備の停電操作・復電操作の手順
  • 長期休業中に潜むリスク
  • お客様(設置者)へ事前に伝える連絡事項
  • 休業前・休み明けのチェックリスト(印刷用)

本記事は一般的な高圧受電設備(PAS/UGS → DS → VCB → LBS → 変圧器 → 低圧配電盤 という構成)を想定した解説である。実際の操作は、必ず対象事業場の保安規程・単線結線図・操作手順書に従うこと。 ※高圧の開閉器の操作は、電気主任技術者(または保安規程で定めた者)が行う。設置者(お客様)に操作をお願いするのは、あらかじめ決めた低圧の分岐ブレーカーまでに限る。

1. まず決めること:通電したまま休むか、主遮断器を切るか

休業中の運用:通電したままか主遮断器を切るかの比較図

長期休業といっても、受電設備をすべて止めることが正解とは限らない。
むしろ実務では、高圧は受電したまま、不要な低圧負荷だけを切って休業する運用が多数派である。

主遮断器(VCB)を切って休業すると、次のような「止めてはいけない設備」まで止まってしまうからである。

止まると困る設備停電させた場合の影響
自動火災報知設備・非常放送受信機の予備電源は、停電後60分の監視と、そのあと10分の鳴動ができる容量が基準。主遮断器を切ると、約1時間で火災を監視できなくなる
防犯・機械警備・入退室管理警報が上がらない、誤発報する
通信設備・サーバ・遠隔監視装置監視が途切れ、異常を検知できない
冷凍・冷蔵設備、恒温槽保管物の損害
排水ポンプ・湧水ポンプ浸水・冠水
浄化槽ブロワー浄化機能が止まる、臭気
消火ポンプ・スプリンクラー加圧消防用設備が機能しない
凍結防止ヒーター配管の凍結・破裂、漏水からの漏電
盤内スペースヒーター結露防止ができなくなる
非常照明・誘導灯内蔵蓄電池が放電し、休み明けに機能しない場合がある

主遮断器を切るかどうかは、こうした設備の有無をお客様と確認したうえで決める。
どちらの運用でも、その判断と理由を記録に残しておくと、後でトラブルになったときの説明がしやすくなる。

運用主なメリット主な注意点
A. 受電を続け、不要な低圧回路だけ切る防災・防犯・監視・ヒーターが生きる。結露・凍結を防ぎやすい無人のまま充電設備が残るため、遠隔監視と駆け付け体制が欠かせない
B. 主遮断器を切って休業する構内の大部分が無電圧になり、構内の事故リスクが下がる上の表の設備が止まる。VCBより電源側は充電されたまま。復電時の確認項目が増える

主遮断器を切って休業すると、自動火災報知設備は約1時間で監視できなくなる。
受信機の予備電源は、停電後60分間の監視ができる容量が基準(受信機に係る技術上の規格を定める省令 第4条第8号ホ(1))で、それを過ぎると火災が起きても警報が出ない。
B を選ぶ場合は、所轄の消防署と建物管理者に事前に相談し、その間の巡回や建物内の連絡体制を整えること。

冬季の結露・凍結・防犯を考えると、一般的には A の運用が勧められることが多い。B を選ぶ場合は、止まる設備ごとに代わりの手段があるかを確認すること。

どちらの運用でも、高圧の引込ケーブルと区分開閉器(PAS)は充電されたままである。関東東北産業保安監督部の波及事故防止リーフレット(2026年3月)では、2024年度の関東地域の波及事故の約7割が、高圧引込ケーブル(48%)とPAS・PGS・UGS(26%)によるものとされている。「休業中だから事故は起きない」わけではない。

構内に太陽光発電(パワーコンディショナ)や蓄電池設備がある場合は、受電を止めても、それらの直流側などは充電されたままである。発電設備の停止手順と、充電されたまま残る範囲を別に確認しておく。

2. 休業前の確認事項

長期休業前の確認事項(止める負荷・非常用発電機・連絡体制・外観点検)

2-1. 休業中に止める負荷の選定

休業中に不要な負荷(空調、照明、待機電力の大きい生産設備など)は、できるだけ落として省エネと安全を図る。
あわせて、上の表のような「切ってはいけない回路」も明確にしておく。

生産設備の中には、一度止めると再始動のときに暖機や原点復帰が必要なものもある。
止めてよいかどうかは、設備の担当者と一緒に決めること。

進相コンデンサの扱いにも注意する。休業中に負荷が大きく減ると、コンデンサだけが残って力率が進み、電圧が上がったり、高調波による共振が起きたりするおそれがある。
自動力率調整装置がない設備では、休業中にコンデンサを切り離すことを検討したい。

おすすめは、低圧配電盤の回路ごとに「休業中 入/切」の一覧を作り、ブレーカーに表示札を付けておくこと。
休み明けの誤投入や、休業中に誰かが勝手に落としてしまうミスを防げる。

2-2. 非常用発電機の確認

  • 始動試験(自動始動・手動始動)と、警報の確認
  • 運転切替スイッチが「自動」位置に戻っているか(点検のあと「手動」や「停止」のまま放置するのが典型的なミスである)
  • 燃料:主タンクと小出槽の残量(休業中に停電した場合に何時間運転できるか)、漏れ、長く入れ替えていない燃料の劣化
  • 冷却水:水量、漏れ、不凍液の濃度(冬季の凍結による破損を防ぐ)、冷却水ヒーターへの通電
  • 潤滑油の量・汚れ、始動用蓄電池の電圧・充電器の状態・更新時期
  • 給排気口が積雪や物品でふさがれていないか
  • 主遮断器を切ったときに、停電検出で発電機が自動始動しないか

最後の点は見落とされがちである。系統によっては、計画的に主遮断器を切っただけで「停電」と判断して発電機が自動始動し、無人のまま燃料が尽きるまで運転を続けてしまうことがある。復電時に切替装置(ATS)がうまく切り替わらないトラブルも考えられる。

かといって発電機を「停止」にすると、今度は屋内消火栓・スプリンクラー・排煙設備などの非常電源がなくなる。主遮断器を切る運用にする場合は、発電機を「自動」のままにするか「停止」にするかを、建物管理者・防災センターと事前に決めること。必要に応じて所轄の消防署にも確認する。

なお、非常用発電機は消防法にもとづく点検の対象である。機器点検は6か月に1回、総合点検は1年に1回である(平成16年消防庁告示第9号)。平成30年6月の点検基準の改正で、総合点検の「運転性能」は、負荷運転か内部観察等のどちらかで確認すればよくなった。さらに、製造年または前回の点検から6年たっておらず、運転性能の維持に関わる予防的な保全策を講じている場合は、この点検を省略できる(実質的に6年に1回)。なお、ガスタービンを原動機とするものは、運転性能の確認の対象外である。予防的な保全策とは、予熱栓・点火栓・冷却水ヒーター・潤滑油プライミングポンプを1年ごとに確認し、潤滑油・冷却水・燃料フィルター・潤滑油フィルター・Vベルト・ゴムホース・シール材・始動用蓄電池を製造者の推奨交換期間以内に交換することである。保全策を講じていることを示す書類(交換・整備の履歴表など)を用意しておきたい(昭和50年消防庁告示第14号 別表第24 第2項(6)、平成30年消防庁告示第12号により改正)。休業前の始動確認は、この法定点検の代わりにはならない。消防設備点検の実施状況もあわせて確認しておく。

2-3. 遠隔監視・緊急連絡体制の確認

  • 絶縁監視装置(漏えい電流監視)やデマンド監視装置が発報したとき、誰に連絡が届くか
  • 休業中の一次対応者(お客様側)と、電気管理技術者・保安法人への連絡ルート
  • 電力会社(一般送配電事業者)の事故受付窓口の連絡先
  • 監視装置の電源や通信回線が、休業中も生きているか
  • 主遮断器を切る運用にする場合:監視装置も止まり、委託先に「通信途絶」の警報が届くことがある。休業期間と停電範囲を、委託先や保安法人にあらかじめ伝えておく。

2-4. 受電設備の外観点検

休業に入る前に、一度キュービクルを巡視しておくと安心である。

  • 扉・換気口の施錠や破損、小動物が入り込める隙間がないか
  • 盤内に異音・異臭・変色・水滴の跡がないか
  • 積雪や強風に対して、周辺の障害物や樹木に問題がないか
  • 区分開閉器(PAS/UGS)と引込ケーブルが更新時期を過ぎていないか。PASは10年(日本電機工業会の更新推奨時期。屋外用10年・屋内用15年)、CVケーブルは20年程度が更新の目安とされている。経年劣化したPASは、地絡が起きても開放されないことがある。
  • 区分開閉器の代わりにモールドジスコン(MDS)を使っていないか。MDSには地絡・短絡の保護機能がない。経済産業省の注意喚起(2026年3月)によると、推奨更新時期は20年で、2020〜2024年度にMDSが原因で起きた波及事故は、どれも20年を超えて使われていたものだった。
  • 絶縁監視の値(Io)が、ふだんと比べて上がっていないか
  • 休業前の電圧・電流・Ioを記録しておく(休み明けと比べるため)

3. 高圧受電設備の停電操作手順(一般例)

高圧受電設備の停電操作手順と、VCBを切っても充電されたまま残る範囲

休業のために主遮断器(VCB)を切る場合の、一般的な停電操作の順序を示す。
休業中に盤内で作業をしないことを前提とする。

基本原則:負荷側(低圧)から電源側(高圧)へ、順番に切っていく。

お客様への周知:停電の時刻と範囲を関係者に伝え、止まると困る設備(コンピュータ、生産設備など)を先に停止してもらう。

  1. 低圧分岐ブレーカーを「切」(切る箇所が少なく可能であれば)
  2. 低圧主幹ブレーカーを「切」
  3. 進相コンデンサの開閉器を「切」(設置されている場合)
  4. 変圧器一次側の開閉器(LBS・PF付きLBSなど)を「切」
    (LBSは負荷電流を開閉できるが、短絡電流は遮断できず、限流ヒューズ(PF)に任せる。)
  5. 主遮断器(VCB)を「切」:開閉表示器で「切」を確認する。
  6. 無充電の確認(検電):高圧検電器で、VCBの負荷側が無電圧であることを確認する。
    ※検電器は使用前に動作を確認する。
    受電盤の電圧計は、VCBの電源側の計器用変圧器(VT)につながっていることが多く、VCBを切っても電圧を表示し続ける場合がある。
    電圧計ではなく、検電器で確かめること。
  7. VCBに「操作禁止」の張り紙:必要に応じて施錠する。

    これで終了とする。

この手順では、放電と短絡接地器具の取付けは行わない。放電や短絡接地は、停電した電路で作業する前の安全措置だからである。下流のLBSと低圧ブレーカーは開放済みなので、充電が残る範囲はVCBの負荷側からLBSの一次側までの短い母線だけで、残る電荷もわずかである。進相コンデンサも、内蔵の放電抵抗で自然に放電する。

ただし、休業中に盤内で点検・清掃・工事をする場合は停電作業になる。
その場合は、保安規程に従った停電作業の手順(放電・短絡接地などを含む)で行うこと。
なお、VCBより電源側(DS・PAS・引込ケーブル)は充電されたままとなる(次の節を参照)。

重要:主遮断器を切っても、受電点側は充電されたまま

VCBを切っても、責任分界点の区分開閉器(PAS/UGS)から引込ケーブル、DSの一次側、VT・避雷器(LA)など、VCBより電源側は充電されたままである。
さらに、PASを開いてもPASの一次側(配電線側)は充電されている。

「停電したキュービクル」と思い込んで盤内に入り、感電する事故については、産業保安監督部も繰り返し注意を呼びかけている。キュービクル内でも高圧が残っている部分があることを、作業者全員で共有すること。

2026年3月に近畿産業保安監督部が公表した事故事例

年次点検で自立型PASの二次側ケーブルの絶縁抵抗を測っていた作業者が、充電されたままの一次側端子に触れて感電したケースがある。手順書に自立型PASの手順がなく、柱上PASの手順のまま作業していたことが原因とされている。再発防止策として、電力会社の開閉器を切り、構内全体を停電させてから点検することが挙げられている。
区分開閉器の形状ごとに、どこまで充電されているかを手順書に書いておくことが大切である。

この範囲まで停電させる必要があるときは、区分開閉器の操作、または電力会社への停電依頼が必要になる。区分開閉器の扱いは保安規程と電力会社との取決め(地域や需給契約によって異なる)に従い、独断で操作しないこと。

なお、PASの地絡保護(SOG・DGR)の制御電源を、VCBの負荷側(変圧器の低圧側など)から取っている場合は注意が必要である。この場合、VCBを切ると制御電源がなくなり、PASを入れたままでも地絡保護が働かなくなる。そのまま休業すると、引込ケーブルは充電されたまま、地絡が起きてもPASが開かない状態が続き、波及事故につながるおそれがある。PAS内蔵の制御電源用変圧器から電源を取る方式であれば、VCBを切っても地絡保護は働く。休業前に、制御電源をどこから取っているかを単線結線図と現地で確認しておくこと。VCBの負荷側から取っている場合は、VCBは切らずに低圧側だけを切って休業するなど、地絡保護が働く状態を保てる運用を選びたい。

4. 復電操作手順(一般例)

高圧受電設備の復電操作の順序と送電後の確認

休み明けの朝、一斉に設備を動かし始める瞬間は、トラブルが最も起きやすいタイミングである。

基本原則:停電操作とおおむね逆の順で、電源側(高圧)から負荷側(低圧)へ入れていく(進相コンデンサは最後)。ただし、入れる前の確認を省かない。

4-1. 送電前の確認

  1. 作業者・工具・器具の撤去確認:盤内に人や工具が残っていないかを確認し、人員の退避を声に出して確認する。
  2. 盤内の目視点検:結露・水滴・サビ、小動物の侵入跡、異物がないかを確認する。
  3. 絶縁抵抗の測定:長期停電のあとや、結露の跡がある場合は、送電前に絶縁抵抗を測定する(高圧は1000V以上の絶縁抵抗計、低圧は500Vなど回路に合ったもの)。
    測定は保安規程に従った停電作業の手順で行い、測定後は放電する。
    • 低圧の判定は、電気設備に関する技術基準を定める省令(電技省令)第58条の値による:使用電圧300V以下で対地電圧150V以下は0.1MΩ、使用電圧300V以下のその他の場合は0.2MΩ、使用電圧300V超は0.4MΩ(開閉器や過電流遮断器で区切れる電路ごとに、電線どうしの間と、電線と大地の間の値)。
    • 高圧には法令で定めた判定値がないため、保安規程・自社基準と、前回の値との比較で判断する。
    • 結露の跡があれば乾燥させてから再測定し、異常があれば受電を見合わせる。
  4. 「操作禁止」の張り紙の取外し:停電時にVCBに貼ったものを外す(施錠していれば解錠する)。
  5. 低圧側がすべて「切」になっていることの確認:低圧主幹・分岐ブレーカーが「切」になっていることを確認する。
  6. 現場に人がいないことの確認:お客様に、休み明けの点検・清掃などで機械や設備の近くに作業者がいないかを確認する。

4-2. 送電操作

  1. 主遮断器(VCB)を「入」:投入後、電圧計で受電電圧を確認し、異音・異臭がないかを見る。休業中に電力会社側の工事があった場合などは、検相器で相回転も確認する。
  2. 変圧器一次側の開閉器(LBS)を順に「入」:変圧器を一度に投入すると励磁突入電流が重なるため、1台ずつ間をおいて投入する。
  3. 低圧主幹ブレーカーを「入」
  4. 低圧分岐ブレーカーを、優先順位に従って順次「入」:保安・監視系(自火報、防犯、通信など)を先に入れ、大きな動力負荷はあとにする。
  5. 進相コンデンサを「入」:負荷がある程度入ってから投入する(軽負荷時の進み力率や電圧上昇を避けるため)。
  6. 送電後の確認:電圧・電流・漏えい電流の表示、継電器の動作表示、異音・異臭がないかを確認する。

4-3. なぜ「低圧を切ってから受電」なのか

負荷をつないだまま高圧を投入すると、次のようなことが起きる。

  • 機械の自動再始動による人身災害:休業前に運転スイッチが入ったままの機械が、送電と同時にいきなり動き出す。休み明けで作業者が点検や清掃をしている最中だと、巻き込まれ事故につながる。これが最も避けたいリスクである。
  • 通電火災:スイッチが入ったままの電気ストーブなどの電熱器具が、送電と同時に発熱して、無人のまま火災になる。
  • 作業中の回路への突然の送電:休業中に工事や点検をしている回路に、作業者がいるまま電気を送ってしまう。
  • 突入電流の重なり:変圧器の励磁突入電流と、モーターの始動電流、照明・電源機器の突入電流が一度に重なり、保護継電器が不要動作したり、電圧が大きく下がったりする。
  • 異常のある回路の切り分けができない:休業中に絶縁が劣化した回路があっても、どこが原因か分からなくなる。

4-4. 保護継電器の不要動作に注意

  • 過電流継電器(OCR):変圧器を投入した瞬間の励磁突入電流で、瞬時要素が動作してトリップすることがある。変圧器を1台ずつ投入するのは、これを避けるためである。整定値と突入電流の関係は、竣工時の保護協調資料で確認しておく。
  • 地絡継電器(GR):構外の他の需要家で起きた地絡に、自構内のケーブルの対地静電容量を通じて反応してしまう「もらいトリップ」が代表的な不要動作である。構内のケーブルが長い設備では、方向性地絡継電器(DGR)で対策されているか確認しておく。
  • 動作表示の確認:投入後は、継電器の動作表示(旧式の誘導形では表示器の落下、静止形ではLEDの点灯など、機種によって表示方法は異なる)が出ていないかを確認する。トリップした場合は動作表示を記録し、原因を確かめないまま再投入しないこと。

用語メモ:「誤動作」は継電器自体の故障などで誤って動くこと、「不要動作」は整定どおりに動いたものの、本来は動く必要がなかった動作を指す。突入電流やもらいトリップによるものは「不要動作」である。

5. 長期休業中のリスク

長期休業中のリスク(結露・凍結・放電・小動物・雷・積雪・盗難)
リスク要因概要と対策
結露冬季は昼夜の温度差で盤内に結露しやすくなる。結露は絶縁低下や地絡事故の原因になる。スペースヒーターは通電していないと働かないため、主遮断器を切って休業する場合は使えない。結露しやすい設備は、通電したまま休業してヒーターを生かすことも検討する。復電前には目視点検(水滴・サビ)と絶縁抵抗測定を行う。
蓄電池・UPSの放電UPS、非常照明・誘導灯、自火報の予備電源、直流電源装置(設置されている場合)は、停電が長引くと放電しきってしまう。鉛蓄電池などは、放電したまま長く置くとサルフェーション(電極に硫酸鉛の結晶ができる劣化)が進み、容量が戻りにくくなる。年末年始くらいの休業なら、通電を続けて浮動充電の状態にしておくのが基本である。各機器の保持時間(UPSのバックアップ時間、予備電源の保持時間など)を把握し、休業期間と比べておく。UPSは、停電前に正しい手順で停止させておく。なお、小〜中規模のキュービクルでは、保護継電器はCT・VTから電源を取る方式や、遮断器をコンデンサ引外し装置(CTD)や過電流引外しで開く方式が多く、すべての設備に蓄電池式の直流電源装置があるわけではない。
凍結冬季は配管凍結のリスクがある。凍結防止ヒーターも通電していないと働かない。配管の破裂による水漏れが盤やケーブルにかかると、漏電・地絡の二次被害につながる。
小動物の侵入人の出入りがない期間は、ネズミ・ヘビ・ヤモリなどがキュービクルに入り込みやすくなる。冬は盤内が暖かいため、なおさらである。古いキュービクルでは、錆でできた穴やケーブル貫通部のパテの劣化が侵入口になる。侵入したまま送電すると短絡・地絡事故の原因になるため、休業前に隙間をふさぎ(パテ、通気口の網、LBSの相間バリアなど)、復電前に盤内の糞・巣・死骸がないかを確認する。
雷落雷でPASが壊れ、波及事故になった例が公表されている。休み明けにはPASの外観(焼損・変形)を確認する。
積雪・強風着雪や倒木による引込線の損傷、給排気口の閉塞などが起きる。休業前に予報を確認し、除雪経路と屋外機器の固定を確認しておく。
盗難金属の盗難は近年大きく増えており、屋外のケーブルや接地線が狙われる。接地線を盗まれると、地絡保護や感電防止が働かなくなる。施錠・センサー・照明で対策し、休み明けには接地線が切られていないかを確認する。

6. 実務におけるポイント

長期休業前後の実務のポイントとお客様への連絡事項

保安規程に則った運用の徹底

この記事のチェックリストや手順は、一般的な高圧受電設備を想定したものである。年末年始や長期休業に限った、公的な手順の定めはない。

ただし、関係する法令の決まりはある。

  • 停電作業の安全措置と通電前の確認:開閉器の施錠・表示・監視人、残留電荷の放電、検電、短絡接地器具の取付け、そして送電を再開する前の確認(短絡接地器具を外したか、作業者に感電の危険がないか)は、労働安全衛生規則 第339条(停電作業を行う場合の措置)に定められている。
  • 断路器の開路:断路器(DS)など、負荷電流を遮断するためのものではない開閉器を開くときは、誤操作を防ぐため、電路が無負荷であることを示す指示灯などの措置を講じる必要がある(無負荷でなければ開けないインターロックがある場合を除く)。これは同 第340条に定められている。
  • 保安管理の方法:各事業場の保安規程(電気事業法 第42条)に従う。

実際の業務では、必ず対象事業場の保安規程を確認し、その現場の単線結線図や設備の特性に合わせた操作手順書を作成・遵守すること。停電・復電の操作は、手順書と操作票を使い、操作者と確認者の2名で、指差呼称しながら行うのが基本である。

お客様(設置者・委託元)へ事前に伝える連絡事項

トラブルを防ぐため、休業前にお客様と次の情報を共有しておく。

  • 休業中の緊急連絡体制:誰が一次対応をするのか。電気管理技術者・保安法人・電力会社への連絡ルート。
  • 休業中の通電範囲:どの回路を切り、どの回路を生かすのか(自火報、防犯、冷凍冷蔵、排水ポンプなど)。
  • 休業中の工事予定:休業期間を使って工事業者が作業する予定がないか。電気主任技術者に連絡しないままキュービクルに入った作業者の感電事故は、毎年のように起きている。関東東北産業保安監督部の資料では、感電死傷事故の約70%が電気設備の点検中・工事中に起きており、電気を止めずに作業して事故が起きた場合は、保安業務を外部に委託していても設置者(お客様)の責任になるとされている。休業中に工事を入れる場合は、必ず事前に電気管理技術者へ連絡してもらうこと。
  • 不要な電源の遮断依頼:PCや電気ヒーターなどのプラグをコンセントから抜いて帰るよう、従業員に周知してもらう。トラッキング火災の防止にもなる。
  • 機械の運転スイッチを「停止」にして帰る:休み明けの送電時に、機械が自動で動き出さないようにする。
  • 復電時のルール共有:「ブレーカーは指定の順番で入れる」「保護継電器が動作したら再投入せずに連絡する」「異音・異臭など異常を感じたらすぐ連絡する」など、休み明けの運用ルールを現場の担当者とすり合わせておく。

7. チェックリスト(印刷用)

休業前

No.項目確認
1休業中の運用方針(通電したまま休む/主遮断器を切る)を決めた□
2止めてはいけない設備(自火報・防犯・通信・冷凍冷蔵・排水ポンプ・凍結防止ヒーターなど)を確認した□
3低圧回路ごとの「休業中 入/切」一覧を作り、表示札を付けた□
4非常用発電機の始動試験・燃料・始動用蓄電池・冷却水と、運転切替スイッチが「自動」位置にあることを確認した□
5主遮断器を切った場合の、発電機の自動始動の有無と、休業中の「自動/停止」を建物管理者と決めた□
6太陽光発電・蓄電池設備がある場合、その停止手順と充電部の範囲を確認した□
7軽負荷時の進相コンデンサの扱いを決めた□
8絶縁監視装置などの発報先・緊急連絡網を更新した□
9電力会社の事故受付の連絡先を確認した□
10キュービクルの施錠・隙間・換気口・周辺環境を点検した□
11UPS・非常照明などの蓄電池の保持時間と休業期間を比べた□
12お客様へ連絡事項(緊急連絡体制・電源遮断・機械の停止・休業中の工事予定)を伝えた□
13警備会社・ビル管理会社に休業期間と停電の予定を伝えた□
14小動物の侵入口(ケーブル貫通部・扉パッキン・換気口の網・錆穴)を確認した□
15PAS・引込ケーブルの経年(更新時期)を確認し、必要ならお客様に説明した□
16休業前の電圧・電流・Ioを記録した□
17PASの地絡保護(SOG・DGR)の制御電源をどこから取っているかを、単線結線図と現地で確認した□
18(主遮断器を切る場合)3章の手順で停電し、検電・「操作禁止」の張り紙・施錠をした□

休み明け(復電時)

No.項目確認
1休業中の警報履歴(遠隔監視・警備会社)や、地域の停電・落雷・積雪情報を確認した□
2PAS・引込線の外観(焼損・着雪・倒木・水没)と、接地線が切られていないかを確認した□
3盤内に人・工具・異物が残っていない□
4盤内に結露・水滴・サビ・小動物の侵入跡がない□
5絶縁抵抗を測定し、異常がない(長期停電・結露の跡がある場合)□
6低圧主幹・分岐ブレーカーがすべて「切」□
7VCBの「操作禁止」の張り紙を外した(施錠していれば解錠した)□
8機械の運転スイッチが「停止」で、現場に作業者がいないことをお客様に確認した□
9VCB → LBS(1台ずつ)→ 低圧主幹 → 低圧分岐 → 進相コンデンサ の順で投入した□
10受電電圧・電流・漏えい電流に異常がなく、異音・異臭もない(休業中に電力会社側の工事があった場合は、検相器で相回転も確認した)□
11保護継電器の動作表示が出ていない□
12自火報・防犯・監視装置などが正常に復帰した(全停電した場合、予備電源の充電中に警報が出ることがあるので事前に周知)□
13非常用発電機が「自動」位置で、休業中の始動記録・燃料残量を確認した□
14デマンド監視装置やタイマーの時刻・スケジュールを直した□
15配管の凍結・破裂・漏水が電気設備に及んでいない□
16復電時刻・測定値・異常の有無を記録し、お客様に報告した□

参考資料

まとめ

年末年始などの長期休業は、普段は起きないような設備の不具合が表に出やすいタイミングである。

  1. 休業前:「受電を続けるか/主遮断器を切るか」を決め、止めてはいけない設備を守り、監視・連絡体制を整える
  2. 休業中:結露・放電・凍結・小動物などの環境リスクを把握しておく
  3. 休み明け:盤内を点検し、必要に応じて絶縁抵抗を測定したうえで、低圧を切った状態から順番に復電する
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この記事を書いた人

はじめまして、当ブログ「名無し電気管理事務所」を運営している名無しと申します。
ここでは、私の経歴や当ブログの運営目的についてご紹介します。

1. 保有資格
実務に関わる以下の国家資格を保有しています。

第3種電気主任技術者(2023年取得)

第1種電気工事士

建築物環境衛生管理技術者

2. 経歴・実務経験
電気保安・ビルメンテナンスの業界で約7年の実務経験があります。
現在は電気保安法人にて、保安業務従事者として勤務しています。

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