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電線路の支持物についての基礎知識まとめ

高圧受電設備の引き込み柱の設計や、日常の巡視点検において
支持物の状態確認は電気事故を未然に防ぐために重要となる。
電気設備の基盤となる「支持物(電柱や鉄塔など)」の施工基準や関連する法規について記載する。

目次

支持物に関する概略

支持物の定義

  • 支持物とは、木柱、鉄柱、鉄筋コンクリート柱及び鉄塔並びにこれらに類する工作物を指す。
  • 電線又は弱電流電線もしくは光ファイバケーブルを支持することを主たる目的としている。

鉄筋コンクリート柱の強度と表示

実務で最もよく目にする鉄筋コンクリート柱には
適正な強度のものを使用する必要がある。

JIS A 5309に適合する鉄筋コンクリート柱には
以下のように設計荷重が明記されていいる。

  • 通常、長さ及び末口より25cm下がった点の設計荷重が表示されている。
    例えば、長さ15m、設計荷重4900kN(500kgf)の場合は、「15-50」と表示される。
  • 径間が70m未満の場合は、設計荷重が35(3430kN(350kgf))以上のものを使用する。
  • 径間が70m以上の場合は、50(4900kN(500kgf))以上のものを使用する。

引込線取付点の強度は、配電柱側と同等の強度をもっていることが求められる。

施工時の重要ポイント(電技解釈に基づく基準)

支持物の施工に当たっては、電気設備技術基準の解釈(電技解釈)に基づき
以下の点に注意して施工する必要がある。

腕金(うでがね)の施設

図:腕金施設例

  • 腕金類は、金属製であって、かつ、十分な強度を有するものを使用する。
  • 腕金にはD種接地工事を施す必要がある。

根入れ工事の基準

図:根かせ図

電柱が倒壊しないよう
適切な深さで地中に埋設する(根入れする)必要がある。

電柱の全長必要な根入れ深さ根拠条文
15m以下の場合全長の1/6以上電技解釈第59条
15mを超える場合2.5m以上電技解釈第59条
  • 水田やその他地盤の軟弱な場所では、特に堅ろうな根かせを設ける必要がある。
    (電技解釈第59条)
  • 液状化対策としては
    複数の根かせやコンクリート巻で補強を行う。

支線及び支柱

図:支線施設図

  • 引留柱には、支線又は支柱を設ける必要がある。
    (電技解釈第62条)
  • 支線の根かせは、支線の引張荷重に十分耐えるように施設する。
    (電技解釈第61条)
  • 支線には、原則として地上から2.5m以上のところに玉がいしを取り付ける。
    (電技解釈61条第3項)

足場金具(ステップ)

図:足場金具

  • 足場金具は、地表1.8m未満に取り付けないことが定められている。
    (電技解釈第53条)
    ※さくやへい等を施設する場合はこの限りではない。

実務におけるポイント・最新情報

台風等の異常気象による倒壊リスクと経年劣化対策

近年は大型台風や局地的な豪雨が増加しており
想定以上の風圧荷重が支持物にかかる事例が多発している。
実務上の月次年次点検では、以下の点に特に注意を払う必要がある。

コンクリート柱のひび割れ(クラック)確認

内部の鉄筋が錆びて膨張し、コンクリートを剥離させる「爆裂」を引き起こす危険性がある。
特に海岸沿いの塩害地域では進行が早いため要注意となる。

地盤の緩み

豪雨後に地盤が緩み、根入れが規定通りであっても傾斜が発生することがある。
傾斜計を用いた定期的なモニタリングが推奨される。

腕金のD種接地工事に関する現場の課題

腕金へのD種接地工事は感電防止の観点で必須だが
現場では「接地抵抗値が規定値に落ちない」という事態がよく発生する。

乾燥した時期や岩盤質の土地では特に抵抗値が下がりにくいため
補助接地極の追加打設や、環境負荷の少ない接地抵抗低減剤の適切な使用など
現場環境に応じた柔軟な対応スキルが求められる。

足場金具(ステップ)の防犯・安全対策

法令では「地表1.8m未満に取り付けない」とされているが
近年はこれを利用した不法侵入や、子供のいたずらによる昇塔事故を防ぐため
さらに厳しい自社基準(2.0m以上にする、あるいは下部の金具を完全に取り外して昇柱器を使用する)で
運用する事業者も増えている。
実務においては、法令の最低基準を満たすだけでなく
周囲の環境(学校や公園が近いなど)を考慮した物理的な安全対策が極めて重要となる。

参考資料

法令・公的基準に基づく記載(電技・電技解釈)

電気設備に関する技術基準を定める省令(電技省令)
第1条(用語の定義)
「支持物とは、木柱、鉄柱、鉄筋コンクリート柱及び鉄塔並びにこれらに類する工作物~」
という定義が明記されている。

電気設備の技術基準の解釈(電技解釈)
第59条(支持物の根入れ)
全長の1/6以上(15m以下の場合)、2.5m以上(15mを超える場合)という規定や、軟弱な地盤での「根かせ」の施設について記載されている。

第61条・第62条(支線・支柱)
支線の引張荷重に対する耐性や、地表から2.5m以上の位置への「玉がいし」の取り付け規定が該当する。

第53条(架空電線路の支持物の昇塔防止)
「足場金具は、地表1.8m未満に取り付けてはならない」という規定の直接の根拠。

コンクリート柱の規格に関する記載(JIS規格)

鉄筋コンクリート柱(ポール)の強度や
表示ルールについての出典は、日本産業規格(JIS)。

JIS A 5309(プレストレストコンクリートポール)
ご提示の「長さ15m、設計荷重4900kN(500kgf)の場合は『15-50』と表示される」という寸法・設計荷重の呼称と表示方法(マーキング)は、この規格書に規定されている。
ポールメーカー(日本コンクリート工業やトーテツなど)の製品カタログや技術資料にも
このJIS規格に準拠した説明が記載されている。

実務・最新情報(劣化対策・現場課題)に関する記載

「ひび割れ(爆裂)」「接地抵抗値」「足場金具の防犯対策」といった後半の実務的な内容は
特定の法令というよりも
各電力会社の施工基準、業界団体の技術指針、および建設・保全分野の専門文献がソースとなっている。

コンクリートの「爆裂」や塩害に関する文献
土木学会・日本建築学会の「コンクリート標準示方書」や維持管理マニュアル
コンクリートの中性化や塩害によって内部鉄筋が錆び
体積膨張を起こしてコンクリートを剥落させる「爆裂(ばくれつ)」のメカニズムが
詳細に記載されている。

D種接地工事の現場課題に関する文献

日本電気技術者協会の技術解説や、接地技術に関する専門書
岩盤や乾燥地など、規定の接地抵抗値(D種であれば原則100Ω以下)が出ない場合の対策として
ボーリングによる深打ちや、環境配慮型の接地抵抗低減剤の使用が
実務マニュアルとして紹介されている。

足場金具(ステップ)の防犯・安全対策(自社基準)

各電力会社(東京電力、関西電力など)の配電設備設計基準 / ニュースリリース
法令(電技解釈)の「1.8m」という最低基準に対し
近年は不法侵入(電柱を伝って2階へ侵入する等)や児童の転落事故を防ぐため
「地上2.0m~2.5mまではステップを設けない」
昇柱器(ポールクリップ等)を使用するため下部のステップはすべて撤去する」といった
運用への変更が、各電力会社の安全への取り組み方針として自社サイト等で公表されている。

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