MENU

絶縁監視装置の基礎知識まとめ

オムロン製の絶縁監視装置
目次

絶縁監視装置とは

Io方式の絶縁監視装置(LS-7S)の外観のイラスト

絶縁監視装置は
●低圧電路の絶縁異常を検出する「絶縁検出器」
●その信号を電話回線等で自動伝送する「発信器」
●信号を受信する「受信機」
から構成されるシステムのこと。

監視対象電路の漏れ電流が
変圧器のB種接地工事の接地線に還流してくる性質を利用して絶縁状態を計測する。

絶縁抵抗測定と漏えい電流測定はどちらも測定したときだけの絶縁管理であり
測定時には正常であっても、次回の測定時まで絶縁が正常であることを保証するものではない。

絶縁抵抗は緩やかに変化するものばかりでなく、急激に低下する場合もある。
このような場合でも絶縁管理を行うには、監視装置を設置して常時絶縁状態を監視する必要がある。
これを「絶縁監視装置」と呼び、絶縁監視装置を設置することにより
無停電で常時絶縁状態の監視が可能となり、保守管理の効率を高められる。

現在の絶縁監視装置は通信機能を搭載しており
絶縁に異常が発生したときには保守管理者や監視センターにリアルタイムに状況を発信することができる。
このため、「遠隔監視装置」と呼ばれることもある。

主な役割として「目に見えない危険」である漏電や絶縁劣化を早期に検知することで
感電事故や火災といった重大事故を未然に防ぐことができる。

代表的な検出方式の違い

方式測るもの電圧注入向いている設備
I0方式漏れ電流の合計(抵抗分+静電容量分)不要対地静電容量が小さい設備
Igr方式絶縁抵抗に起因する成分(Igr)のみ必要(低周波を重畳)対地静電容量が大きい設備
I0r方式電圧との位相差から求めた抵抗分不要対地静電容量が大きい設備

絶縁監視装置の仕組み・原理

絶縁監視装置にはさまざまな種類があるが、どの方式も漏えい電流の大きさで絶縁状態を監視している。
漏えい電流の検出は変圧器ごとに、検出用のCTは変圧器のB種接地線に取り付けられている。

絶縁監視装置は、漏えい電流の種類や演算方法により
下記の3つに大別できる。

Io方式 (零相電流方式)

概略

Io方式の絶縁監視装置の構成図。6,600Vを100V/100Vの単相3線に下げる変圧器のB種接地工事の接地線にCTを取り付け、対地絶縁抵抗Rg1・Rg2と対地静電容量C1・C2を流れる漏れ電流の合計Ioを測る。増幅・整流回路と判定回路を通して、50mA以上で注意警報、200mA以上で警戒警報を出力する(電源はAC100V、警報値設定回路付き)

図:Io絶縁検出例

もっとも基本的でシンプルな構造を持つのがI0方式となる。
B種接地工事の接地線に装着した検出用変流器(CT)で漏れ電流(I0)を検出し
整流増幅して判定回路へ出力する。

商用電圧(50Hzまたは60Hz)による漏えい電流をB種接地線に取り付けたCTで検出する方式。
原理的には、リーククランプメータによる測定と同じ。
上記図でわかるように次のような特徴がある。

① 接地相の絶縁劣化は検出できない
電灯、動力回路ともB種接地を行っている相(N相)では
対地電圧がゼロなので絶縁劣化しても、漏えい電流は流れない。
したがって、接地相の絶縁不良は検出できない
※絶縁抵抗測定では検出可能

② 対地静電容量による漏えい電流も検出してしまう
絶縁劣化とは直接関係しない対地静電容量による漏えい電流も検出してしまう。
そのため、この値が大きいと、絶縁劣化による漏えい電流との区別が付きにくくなる。

③ 漏えい電流が実際より小さくなる場合がある
電灯回路の非接地相(L1​相、L2​相)の両方で絶縁劣化した場合
対地電圧が逆なのでL1​相とL2​相の漏えい電流が打ち消し合う(相殺現象)ため
見かけ上の漏えい電流が小さくなる場合がある。
極端な場合、L1​相とL2​相が同じ程度に絶縁劣化すれば、漏えい電流はゼロとなる。

設定値以上の漏れ電流が流れると警報を出します。
公的な説明書の例では、警戒レベル警報を50mA、特別警戒レベル警報を200mAとしている場合が多い。
※点検頻度の緩和を受ける場合、警報動作電流の設定の上限値は50mAと定められている。

交流電路の漏れ電流(I0)には、絶縁不良による抵抗成分(Igr)だけでなく
対地静電容量による静電容量成分(Ic)も含まれる。
そのため、I0方式は対地静電容量が小さい設備に適用される。
静電容量が大きい設備では、絶縁が健全でも数値が大きく出てしまい
正確な監視ができない場合がある。

Ior方式 (絶縁抵抗分電流方式)

概略

  • 漏れ電流Ioの中から、絶縁抵抗による成分 (Ior) と対地静電容量による成分 (Ioc) を演算により分離抽出し
    絶縁抵抗成分 (Ior) のみを監視する。
  • 火災や感電事故の原因となるのは主に絶縁抵抗成分であるため
    Io方式よりも精度よく絶縁状態を判別できる。高調波の影響を受けにくいという特徴も持つ。
Ior方式の絶縁監視装置の構成図。変圧器のB種接地線のCTで漏れ電流を測り、負荷側の電圧も検出して、対地静電容量を流れる電流I0cと絶縁抵抗を流れる電流I0rを分けて検出する

図:Ior絶縁検出例

I0​方式と同様に商用電圧による漏えい電流を検出する方式だが
上記図のように電圧(基準電圧)も取り入れている。
これにより、I0​方式の対地静電容量成分による漏えい電流も検出してしまうという欠点を改善している。

下記図のベクトル図のように、検出する漏え漏えい電流I0​は
絶縁不良の抵抗成分による漏えい電流Iorと対地静電容量成分による漏えい電流Iocを合成したもの。
また、絶縁不良の抵抗成分による漏えい電流Iorは線間電圧と同相になる。

漏れ電流Ioと、抵抗分Ior・容量分Iocの関係を示すベクトル図

したがって、検出した漏えい電流I0​の中から線間電圧Vと同相の成分だけ演算して取り出すことにより
対地静電容量成分による漏えい電流I0を分離できる。
この方式には、次のような特徴がある。

① 接地相の絶縁劣化は検出できない I0​方式と同様
B種接地を行っている相では、漏えい電流は流れないので絶縁不良は検出できない。

② 対地静電容量による漏えい電流は検出しない I0​方式と異なり
対地静電容量による漏えい電流を演算により分離しているので
抵抗成分による漏えい電流のみ検出できる。
ただし、この演算は対地静電容量が各相とも均等であることを前提にしているので
三相回路では対地静電容量が不均等の場合は誤差を生じる。

③ 漏えい電流が実際より小さくなる場合がある I0​方式と同様
漏えい電流の相殺現象があるので見かけ上の漏えい電流が小さくなる場合がある。

Igr方式 (絶縁抵抗方式)

概略

I0方式の弱点を克服し、絶縁抵抗に起因する成分(Igr)のみを取り出して監視するのがIgr方式となる。
電路と大地の間に、商用周波数とは異なる低い周波数の監視用電圧を
注入トランスを用いてB種接地線から重畳して加える。
※重畳する周波数はメーカーや機種によって異なる。

B種接地線に戻ってくる漏れ電流をCTで検出し
フィルタで監視信号の成分を取り出したうえで
絶縁抵抗に起因する有効分(Igr)を分離する。
これにより、静電容量成分(Ic)の影響を除いた高精度な監視が可能になる。

Igr方式の絶縁監視装置の構成図。200Vを各100Vの単相3線に下げる変圧器のB種接地線に注入トランスで低周波の信号を加え、CTで検出した電流を増幅器とフィルタで処理して、対地静電容量C(C1+C2+C3)の影響を除いた絶縁抵抗(1/R=1/Rg1+1/Rg2+1/Rg3)による電流を判定する。50mA以上で注意警報、200mA以上で警戒警報を出力する

図:Igr絶縁検出例

I0​方式やIor方式と異なり、商用電圧と異なる電圧を使用して漏えい電流を監視する方式。

上記図の注入Trは変圧器の原理でB種接地線に監視用電圧を注入する装置。
監視用電圧は、他の機器に影響を与えないように低周波(12.5Hz程度)、低電圧(0.7V程度)となっている。

この注入した監視用電圧による漏えい電流を検出する方式で、次のような特徴がある。

① 接地相の絶縁劣化も検出する
監視用電圧はB種接地線に注入しているので、すべての相の監視が可能になる。
なお、接地相が絶縁劣化した場合は、商用電圧による漏えい電流が流れないため
リーククランプメータでは測定できない。

② 対地静電容量による漏えい電流は検出しない
注入電圧と同相成分のみを検出するので静電容量による影響はない。
したがって、各相の対地静電容量が不均等の場合でも誤差は生じない。

③ 漏えい電流を正確に検出する
漏えい電流の相殺現象がなく、複数の絶縁不良でも合成して検出する。

④ 実際の漏えい電流を測定していない
検出装置が検出する漏えい電流は、商用電圧による漏えい電流ではなく
監視用電圧によるものなので、非常に小さい値となる。
このため、実際に表示されるのは商用電圧に換算したものになる。

例:監視用電圧が0.7Vで商用電圧が100Vの場合、測定した漏えい電流を143倍(100/0.7)して表示する。

絶縁監視装置の構成要素

絶縁監視装置 LS-7S の外形寸法と各部の名称

絶縁監視装置は、一般的に以下の要素で構成される。

  • 検出装置: 漏れ電流を検出し、絶縁劣化の有無を検知し、警報信号を発信する装置。
  • 信号搬送装置: 検出装置から発せられた警報信号を受信装置に搬送する。
  • 受信装置: 搬送された警報信号を受信する装置。
  • 発信・通報装置: 搬送された警報信号を、主任技術者や監視センターへ通報する装置。
    メールやスマートフォンへの通知、パトライト点灯、鳴動など、様々な通報方法がある。

絶縁監視装置の役割・導入メリット

絶縁監視装置の役割・導入メリットの図解。安全性の向上(24時間365日の常時監視で感電・火災を防ぎ、異常時はすぐ警報)、予防保全・設備管理の効率化(稼働を止めずに計測、劣化の早期発見、データ履歴の記録・分析、異常箇所の特定)、コスト削減(突発事故の損失を抑え、月次点検を隔月点検に軽減、電気料金の削減)、遠隔監視・管理(異常をリアルタイムで通報し、スマホやPCで状態を確認)

安全性の向上

  • 感電事故・電気火災の未然防止
    漏電や絶縁劣化の兆候を早期に発見し、重大事故を未然に防ぐ。
  • 24時間365日の常時監視
    停電することなく活線状態で連続計測が可能であり
    異常発生時には即座に警報を発する。

予防保全・設備管理の効率化

  • 絶縁劣化兆候の早期発見
    わずかな漏電を検知し、初期の段階で問題を発見できるため
    計画的な修理や部品交換が可能になる。
  • 停電を伴わない活線計測
    設備の稼働を止めずに絶縁状態を監視できるため、生産性への影響を最小限に抑えられる。
  • データ履歴の記録・分析
    漏れ電流のデータを時系列で管理し、グラフ化することで、絶縁劣化の傾向を把握しやすくなる。
  • 異常箇所の特定
    いつ、どれだけの漏れ電流が流れたかがわかるため、異常箇所の調査にも役立つ。

コスト削減

  • 電気料金の削減
    漏電による無駄な電気の使用を抑制できます。
  • 月次点検の軽減
    絶縁監視装置を設置することで、毎月の電気主任技術者による点検を隔月(2か月に1回)に
    軽減できる場合がある(契約要件による)。
    これにより、電気管理費用の削減が期待できる。
  • 突発的な事故による損失の抑制
    早期に異常を発見・対応することで、大規模な設備停止や修理費用、損害賠償などのリスクを低減できる。

遠隔監視・管理

リアルタイム通報
異常発生時に技術者やセンターにリアルタイムで状況が発信される。

遠隔での設定変更・状態確認
パソコンやスマートフォンから遠隔で装置の設定変更や現在値の確認が可能。

絶縁監視装置の管理規定(参考)

① 警報動作電流 絶縁監視装置の警報動作値は、事業所の規模や負荷設備の特徴等を考慮し、電気主任技術者の判断で行うべきである。

しかし、常時における設定値運用の煩雑さおよびその煩雑さに伴う誤設定等を生じるおそれがあることから上限値を定める。

本規定では、警報動作電流の上限値を50mAとする。

② 警報発生時の対応 警報が発生した場合、電気主任技術者は当該電気工作物の点検を行うとともに技術基準への適合状況を確認する。

外部委託の場合は、警報動作電流値以上の漏えい電流が5分以上継続、または繰り返し発生している場合は警報発生原因を調査し適切な措置を行う。

自家用電気工作物保安管理規定(JEAC 8021)より引用

50mA以下であっても、平常時から、変圧器にどの程度の漏えい電流が流れているのか
変動があるのか、漏えい電流の原因は何か、機器の増設があったかなど、
設備の状態をよく把握しておくことで絶縁監視装置を有効に活用することが可能になる。

参考資料

新電気:2022.12 現場の疑問解決塾 低圧回路の絶縁監視装置より一部引用

https://www.multimic.com/assets/j/instruction_manual/ma_LS-7S_1.pdf
Io 方式絶縁監視装置LS-7S 取り扱い説明書より画像引用

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

はじめまして、当ブログ「名無し電気管理事務所」を運営している名無しと申します。
ここでは、私の経歴や当ブログの運営目的についてご紹介します。

1. 保有資格
実務に関わる以下の国家資格を保有しています。

第3種電気主任技術者(2023年取得)

第1種電気工事士

建築物環境衛生管理技術者

2. 経歴・実務経験
電気保安・ビルメンテナンスの業界で約7年の実務経験があります。
現在は電気保安法人にて、保安業務従事者として勤務しています。

コメント

コメント一覧 (3件)

    • ご質問ありがとうございます。
      ムサシ製の節煙監視装置(監視王)やマルチ計測製(LS-7SIRV)の取り扱い説明書やHPではV結線や異容量V結線などは
      非対応と記載されています。↓下記リンク先
      ムサシ chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/http://www.musashi-in.co.jp/catalog_9/PDF/012.pdf
      マルチ https://www.multimic.com/products/detail/2669.html の一般仕様に記載

      以前マルチ計測のオペレーターにスコットトランスB種接地に使用可能か聞いた場合、正しい値が検出される保証はできなといとの回答を
      口頭で頂いた記憶があります。(文書での回答はなし)

      光商工製集合形絶縁状態監視システム LSIG-8だと条件付きでスコットトランスのB種接地をIorで使用できるみたいです。
      ※自身は今まで使用したことはありません。

      リンク先 chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.hikari-gr.co.jp/dcms_media/other/T-LSIG-8.pdf の55ページ

  • いつも拝見し勉強させて頂いております。
    丁寧なご回答ありがとうございます。
    参考リンクで勉強いたします。

コメントする

CAPTCHA


目次