サイリスタの基本構造と動作原理
サイリスタ(ここでは逆阻止三端子サイリスタを指す)の
基本的な特徴について整理します。
構造とダイオードとの違い

図:サイリスタの構造
サイリスタは、p形半導体とn形半導体を4つ組み合わせた素子であり
ダイオードとの最も大きな違いは、「ゲート端子」が付いている点にある。
ターンオン(点弧)


左図:ゲート信号電流なし 右図:ゲート信号電流あり
順方向に電圧を加えても、ゲート(G)に信号電流が流れていなければ、電流は流れない。
順方向電圧が印加された状態でゲートに信号電流を流すことで
はじめてアノードからカソードへ順方向電流が流れる。これを「ターンオン」と呼ぶ。
ターンオフ(消弧)と自己消弧性

図:逆方向電圧を加えて場合
一度オン状態になると、ゲート信号電流がなくなっても
順方向電流が「保持電流」以上流れている限り、ずっとオン状態を維持し続ける。
オン状態からオフ状態にする(ターンオフさせる)には、サイリスタに流れる電流を保持電流以下にする必要がありそのためには外部回路(転流回路)が必要になる。
※自分自身でオフ状態に移行できない素子のことを「自己消弧性がない素子」と言う。
サイリスタ動作の分かりやすいイメージ(水配管モデル図)

図:サイリスタの水配管イメージ図
サイリスタの動作は
ロック機構(ゲート棒)のついた逆止弁でイメージすると非常に分かりやすくなる。
順方向電圧を流した場合

- ゲート信号なしの順方向
弁が開く方向に水圧がかかっても
ゲート棒が弁の動きをロックしているため、弁を開くことができない。
(左図) - ターンオン
ゲート棒を押し下げてロックを外すと、順方向の水圧によって弁が開き、水が流れる。
(中図) - オン状態の維持
一旦弁が開いて水が流れ始めると
ゲート棒の押し下げる力を取り除いても
水流がゼロになるまでは弁は水の流れに押されて開いたままになる。
(右図)
順方向電圧が0になった場合

- ターンオフ
水流がゼロになると自重により自動的に弁が閉じ、再びゲート棒のロックがかかる。
(左図) - 逆方向
逆方向から水圧をかけてもストッパがあるため
ゲート信号電流の有無にかかわらず、弁は閉じたままになる。
(中図・右図)
実務におけるポイント

現在、中・小容量のインバータなどでは
自己消弧性を持つIGBTなどが主流となっているが
サイリスタは構造が堅牢で大容量の電流・高電圧に耐えうるというメリットがあるため
特定の分野での働きをしている。
- ソフトスターター:
高圧の大容量電動機を始動させる際
急激な突入電流を防ぐためにサイリスタの位相制御を利用して徐々に電圧を印加する用途で利用される。 - 大容量電力変換装置
高圧直流送電(HVDC)や、工場等に設置される静止型無効電力補償装置(SVC)など
極めて大きな電力を扱う設備では使用される。
参考資料
公益社団法人 日本電気技術者協会「電力用半導体素子の種類と特性ダイオード、サイリスタ、GTO」
RSコンポーネンツ「サイリスタとは?仕組み・用途・選び方を解説」
新電気2019年12月号「特集 強電技術者のための電子回路」より一部引用

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