インバータとコンバータの違いの結論

「インバータ」が、交流モータを制御するための交流電源を作る機器であるのに対し
「コンバータ」は、インバータに電源を供給するための機器となる。
コンバータを使用することで
●高調波の大幅な抑制
●電源設備容量の低減
●制動能力の大幅な向上
などが見込める。
インバータについての概略

インバータとは、広義では「一定の電圧と周波数の交流から、異なる電圧と周波数の交流を作り出す機器」のこと
を指す。特に交流モータを制御するための交流電源を作る機器を汎用インバータと呼び
ファクトリーオートメーション業界では、単にインバータと呼ぶことが一般的となる。
インバータを使用することで、モータの速度をコントロールし、ポンプの排水量を調整することや、エレベータをスムーズに昇降することなどができる。
インバータの詳細な仕組み

インバータの基本的な仕組みは、半導体スイッチ(IGBTやMOSFETなど)を高速にオン/オフすることで
直流電圧をパルス状に切り刻み、これをPWM (Pulse Width Modulation)制御によって交流の波形を作り出すこと。
- 整流部: 外部から入ってきた交流電力をダイオードなどで直流に変換する。
- 平滑部: 整流された脈流をコンデンサで滑らかな直流にする。
- インバータ部: 平滑された直流電力を、スイッチング素子を使って所望の周波数と電圧の交流電力に変換する。
上図のようにインバータ装置は前段部と後段部に分かれており
交流から直流に変換する前段部の「コンバータ回路」と
直流から交流に変換する後段部の「インバータ回路」によって構成されている。
広い意味でのインバータ装置とは
コンバータ回路とインバータ回路がセットで使われて「交流→交流」への変換になるのに対し
個別のインバータは回路や機能を示しているので、「直流→交流」の変換になる。
このように、とらえ方により「インバータ」の意味が異なってくる。
インバータの主な用途


左図:エレベーターのインバータ 右図;ベルトコンベアのインバータ
- エアコンや冷蔵庫
コンプレッサーの回転数を細かく制御し
無駄な電力消費を抑える。 - 鉄道
電車のモーターを制御し
滑らかな加減速や省エネルギー運転を実現する。 - 産業用モーター
工場のポンプやファンなどのモーター速度を制御し
効率的な運転を可能にする。 - 太陽光発電
太陽光パネルで発電された直流電力を
家庭や電力系統で使用できる交流電力に変換する。 - UPS (無停電電源装置)
停電時にバッテリーの直流電力を交流に変換し
コンピュータなどの機器に電力を供給する。
インバータのメリットとデメリット

メリット
- 省エネルギー
必要な分だけモーターなどを動かすことで、無駄な電力消費を抑えられる。 - 高精度な制御
速度やトルクなどを細かく制御できるため
機器の性能を最大限に引き出せる。 - 機器の長寿命化
始動時の突入電流を抑えることで
モーターなどの機器への負荷を減らし、寿命を延ばせる。 - 騒音・振動の低減
スムーズな起動・停止により
騒音や振動を抑えられる。
デメリット
- 高調波の発生
スイッチング制御により
電源系統に高調波ノイズを発生させることがある。 - 高価
複雑な制御回路や部品が必要なため
他の制御方法に比べて初期コストが高くなることがある。 - ノイズ
高速なスイッチングにより、電磁ノイズを発生させることがある。
※これらの対策として、入力側にACリアクトルを設置して高調波を抑制したり
ノイズフィルタを使用することが一般的
コンバータについての概略

「コンバータ(Converter)」とは、ある状態や形式を別の状態や形式に
「変換する」機器やソフトウェアの総称。
使われる分野によって、その役割は大きく4つに分類される。
電気・電子機器(電力・電圧の変換)
ハードウェアとして最も一般的な「コンバータ」
電源の性質を変える役割を持つ。
- AC/DCコンバータ
交流(AC)を直流(DC)に変換する。
家庭用のコンセント(交流)の電気を
パソコンやスマートフォンなどの電子機器が使える形(直流)にするためのもの。
ACアダプターや充電器の中に組み込まれている。 - DC/DCコンバータ
直流(DC)の電圧を、別の電圧の直流に変換する。
例えば、車のシガーソケット(12V)からスマートフォンの充電(5V)を行うための
車載充電器などに使われる。
ケーブル・周辺機器(インターフェースの変換)
形状や規格が異なる端子同士を接続するためのアダプター機器。
- 映像・音声コンバータ
新しいパソコンのHDMI出力を、古いモニターのVGA入力に変換する機器など。
デジタル信号とアナログ信号の変換を伴う場合もある。 - 端子変換コンバータ
USB Type-Aの端子をType-Cに変換する小さなコネクタなど。
AC/DCコンバータが交流を直流に変換する仕組み

波形が徐々に平らな直流に近づくプロセス
家庭用のコンセントから流れる電気は、電圧のプラスとマイナスが波のように常に入れ替わる「交流(AC:100V)」。これをスマートフォンなどが使える、常に一定の電圧で片方向にしか流れない「直流(DC:例えば5V)」にするため、コンバータ内部では主に4つのステップで電気の性質を加工している。
上図は、交流の波形(青線)が、部品を通るごとに直線的な直流(赤線)へと
変化していくプロセスを表している。
変圧(電圧を下げる)
トランス(変圧器)を使って、コンセントの大きな電圧(100V)を、目的の小さな電圧(5Vなど)まで下げる。
この時点では電圧が小さくなっただけで、まだ波を打つ「交流」のままとなる。
整流(流れを一方通行にする)
次に、プラスとマイナスが入れ替わる交流の波を
一方向(プラスのみ)に揃える。その際使用するのがダイオードという部品。
電気を一方通行にしか流さない性質を持つダイオードを4つ組み合わせた「ダイオードブリッジ」を通すことで
下向き(マイナス側)の波が上向き(プラス側)に折り返される。
平滑(波をなめらかにする)
脈流のままでは電圧が不安定すぎて、電子機器は正常に動かないため
コンデンサで、電気を一時的に蓄えたり放出したりできる部品を通す。
波が頂点に達した時に電気を蓄え、波が下がり始めた瞬間に
蓄えた電気を放出して谷間を埋めることで、波のデコボコを平滑にする。
安定化(完全に真っ直ぐな線にする)
コンデンサを通しても、まだわずかに「リップル」と呼ばれる波の跡(電圧のブレ)が残っており
最後にレギュレータ(安定化回路)を通すことで、このわずかなブレを完全に削り落とし
定規で引いたような真っ直ぐで綺麗な「直流」が完成する。
現代のスマートフォン充電器などの小型ACアダプターでは
より小型化・高効率化が可能な『スイッチング方式』が主流であるが
交流を直流に整流・平滑する基礎的な考え方は同じとなる。
コンバータ導入のメリット

高性能なコンバータ(例えば、PWMコンバータや電源回生コンバータなど)を
システムに組み込むケースがある。
コンバータを使用することで、以下のような大きなメリットが見込める。
- 高調波の大幅な抑制
通常のダイオード整流器を使用した場合、電源系統に大きな高調波電流が流出し
他の機器に悪影響を及ぼす可能性がある。
高力率コンバータ等を採用することで、入力電流を正弦波に近づけ、高調波を大幅に抑制することができる。 - 電源設備容量の低減
力率が改善されることにより、見かけ上の電流値(皮相電力)が小さくなる。
その結果、受電トランスや配線などの電源設備容量を小さく設計することが可能となり
コストダウンや省スペース化につながる。 - 制動能力の大幅な向上
モータが減速する際に発生する回生エネルギーを、熱として捨てる(制動抵抗器を使う)のではなく
電源側に戻す(電源回生)ことができるコンバータがある。
これにより、制動能力が大幅に向上し、省エネ効果も期待できる。
インバータ設備の保守・点検の注意点

実務においてインバータやコンバータを運用・保守する際は
以下の点に注意が必要となる。
- コンデンサの寿命管理
インバータ内部の直流平滑用コンデンサは有限寿命部品であり
周囲温度や稼働時間に応じて劣化するため
定期的な点検(外観の膨らみ確認や容量測定)と計画的な交換が必要となる。 - 冷却ファンのメンテナンス
盤内の熱を逃がすための冷却ファンも消耗品であり
ファンの停止は機器の過熱による停止(トリップ)や故障に直結するため
動作音の異音確認や定期交換を怠らないこと。 - 高調波ガイドラインへの対応
大容量のインバータ設備を導入する場合は
「高圧又は特別高圧で受電する需要家の高調波抑制対策ガイドライン」等に基づき
事前に対策を検討する必要がある。
参考文献・引用元
一般社団法人 日本電機工業会(JEMA)
「高圧又は特別高圧で受電する需要家の高調波抑制対策ガイドライン」
一般社団法人 日本電機工業会(JEMA)
「汎用インバータの定期点検指針(JEM-TR 148)」
三菱電機株式会社
「三菱汎用インバータ FREQROL 技術資料集」
ローム株式会社
「エレクトロニクス豆知識:AC/DCコンバータの仕組み」

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