高圧真空遮断器(VCB)の概略

VCB(Vacuum Circuit Breaker:真空遮断器)は
ビルや工場などの高圧受電設備(キュービクル等)において
電路の開閉および事故電流の遮断を行う遮断器のひとつ。
高真空の容器内で電極を開閉させることで
電流遮断時に発生するアーク放電を瞬時に消弧する仕組みを持つ。
主な役割
- 負荷電流の開閉
通常の運転時における機器への送電・停止を手動または遠隔で切り替える。 - 事故電流(短絡・過電流)の遮断
過電流継電器(OCR)などの保護リレーと連動し、短絡や過負荷が発生した際に
回路を高速で切り離して波及事故や機器の焼損を防ぐ。
主な特徴・メリット
- 高い遮断性能と長寿命
真空の絶縁耐力と消弧能力が高く、接点の摩耗が極めて少ないため長寿命。 - 小型・軽量
消弧空間が小さく済むため、盤内をコンパクトに収められる。 - 安全性・低騒音
油遮断器(OCB)のような火災リスクがなく
ガス遮断器(GCB)のような有害ガス排出もなく、動作音も比較的小さい。 - メンテナンス性
構造がシンプルで点検・保守が容易。
富士電機製高圧真空遮断器MULTI.VCB シリーズのメンテンナンス方法
準備と必要な道具

- スパナ類
VCB主回路端子やケーブル接続ボルト取外し用のM12スパナと
VCBおよびキュービクル固定ボルト取外し用のM8スパナが必要となる。 - ドライバー
正面パネルや操作ハンドルの取外しにはプラスドライバーを使用する。 - 計測器
絶縁抵抗を測定するためのDC1,000Vメガーを用意する。 - 清掃用品
乾いたきれいなウエスと、エチルアルコールなどのアルコール(薬局で購入可能)を使用する。 - 清掃液の作り方
洗面器やバケツなどの混合用容器を使用し
アルコールと水道水を1:1の割合で混ぜた水溶液を作る。
アルコールが入手できない場合は、水道水のみでの清掃も可能。 - 細部の清掃
細かい部分の清掃には割り箸などの細い棒を使用するが
ドライバーなど角のある金属棒は使用不可であるため注意が必要となる。
指定グリスの準備
機構部や接触部には、メーカー指定の適切なグリスを塗布する。

- 機構部グリス: ペーストスプレー(ダイゾー ニチモリ事業部)、LT-1(同)、シェルテラス S2 V32(昭和シェル石油)などが使用されます。
- 引出し形接触子グリス: スズクロールNo.2(フックスジャパン)などが指定されています。
保守点検時の注意事項(安全措置)
作業前に必ず以下の手順で無電圧状態を確保し、安全を確認する。
- 無電圧化
VCBを「開路」し、開閉表示器が【切】であることを確認した後
電源側の断路器を「開放」して遮断器の主回路および制御回路を無電圧にする。 - 誤操作防止
断路器が誤って操作されないよう、表示を行うか操作をロックする。 - 放電と検電
「開路」した電路や機器の残留電荷を放電させ
検電器を用いて確実に無電圧であることを確認する。 - 接地
安全のために接地を取り付ける。
また、保守・点検作業が完了した後は
接地金具や点検工具、部品類の置き忘れがないかを十分に確認してから復電操作を行うこと。
富士電機製高圧真空遮断器MULTI.VCB シリーズの絶縁カバーの着脱方法
VCBの据付方式(固定形・引出し形)によって
点検前の準備手順が異なる。
据付方式:ポータブル形(P)のみ

真空遮断器本体から操作ハンドル固定用ねじ(M6×18)を外して,操作ハンドルを外す。
(手動ばね操作の場合のみ)
ⅱ)正面パネル固定用ねじ(M5×16)を2か所外して,正面パネルを外す。
ⅲ)操作器カバー固定用ねじ(M8×16)を4か所外して,操作器カバーを外す。
据付方式:ボード形(B),キュービクル形(C),ポータブル形(P)共通

絶縁カバー固定用ねじ(M8×16)を2か所外し
絶縁カバーを矢印方向にスライドして絶縁フレームから取り外す。
点検後、上記と逆の手順で絶縁カバーを取り付ける。
絶縁カバー着脱時の注意事項
● 据付方式:ボード形(B), キュービクル形(C)の場合は
操作器カバーの取り外しは必要ない。
● 絶縁カバー取付時は,絶縁カバー取付金具の外側に絶縁カバーが入るように挿入する。
● 絶縁カバー取付時は,絶縁フレーム突起部(2か所)に絶縁カバーを引っ掛けて挿入する。
● 配線に注意して取り外しを行うこと。
富士電機製高圧真空遮断器MULTI.VCB シリーズの注油方法(概略)

図: 注油方法(手動ばね操作方式の例)
注油する前に、主回路および制御回路を停電し
検電により無電圧であることを確認すること。
注油手順
① 真空遮断器を「切」状態および電動ばね操作方式の場合は「放勢」状態にする。
② 操作ハンドル(手動ばね操作方式の場合のみ),正面パネルの順に取り外す。
③ 指定箇所への注油を行う。
※注油箇所および指定油は,正面パネル裏の保守点検記録表にも記載している。
④ 注油後,開閉操作を 10 回程度行い,油をなじませる。
⑤ 正面パネル裏の保守点検記録表に注油年月を記録する。
⑥ 正面パネル,操作ハンドル(手動ばね操作方式の場合のみ)の順に取り付けること。
指定油 推奨品

FSO フッソオイル 105 株式会社 和光ケミカル製(スプレー式) その他に以下の油も使用可能。
・Krytox GPL104 デュポン 株式会社製(液状)※
・Krytox GPL105 デュポン 株式会社製(液状)※
注油時の注意事項
● ※の指定油で注油を行う場合は,先細ノズルの付いた容器(供給外)にて注油作業を行うこと。
● 注油の際に油が垂れた場合は,ウエスなどで拭き取ること。
● 旧形のパネルカットに真空遮断器を取り付けている場合
真空遮断器を配電盤パネルから外してから注油作業を行うこと。
機器の故障や波及事故を防ぐため、詳細な注油箇所や指定油は
必ずメーカー発行の最新の取扱説明書を自身で確認すること
カバーを外した際のばね蓄勢表示器

●指定油以外での注油は行わないこと。
機器の故障やそれに伴う波及事故が発生するおそれがある。
●ばね蓄勢表示器の下に手を入れないこと。
蓄勢表示のスライドによりけがをするおそれがある。
●ばね蓄勢表示器には絶対に触れないこと。動作不良の原因になる。
手動ばね操作方式の場合
①~⑥に注油実施

注油箇所詳細
① 支点ピン(両側)

②支点ピン

③支点ピン

④ 遮断ストッパ部

⑤ 支点ピン(両側)

⑥支店ピン(両側)

電動ばね操作方式の場合
①~⑨部に注油する。

図:注油箇所(内部構造 正面図)
注意 指定以外の箇所への注油禁止
投入コイル,引外しコイルのプランジャー摺動部および補助開閉器内部(接点部)には
絶対に注油しないこと。
動作不良の原因になる。
注油箇所詳細
①ばね蓄勢表示器

ばね蓄勢表示器には絶対に触れないこと。
動作不良の原因となる。
②歯車(手前側)

右図:内部詳細図
正面の注油口より 2 つの歯車に注油すること
③歯車(奥側)

右図:内部詳細図
蓄勢ハンドルを挿入しハンドルを回転させながら歯車全周に行き渡るように注油すること。
④支点ピン

右図:内部詳細図
正面の斜め下方向よりピン部全体に行き渡るように注油すること。
⑤支点ピン

正面の注油口よりピン部全体に行き渡るように注油すること
⑥遮断ストッパ部

右図:内部詳細図
正面の注油口より注油すること。
⑦支点ピン(両側)

左図:ピン前面側 右図:ピン背面側
ピン前面側→正面より注油
ピン背面側→補助開閉器横方向より注油
⑧支点ピン(両側)

左図:ピン前面側 右図:ピン背面側
ピン前面側→正面より注油
ピン背面側→正面の注油口より注油
⑨投入ラッチ部

正面よりラッチとローラの接触面に注油
参考資料
メーカー公式の取扱説明書
富士電機株式会社:「MULTI.VCBシリーズ 取扱説明書」
ケミカル用品の製品データシート(カタログ)
- 株式会社和光ケミカル: FSO フッソオイル 105(スプレー式)
- デュポン株式会社: Krytox GPL104 / GPL105(液状)
- 株式会社ダイゾー(ニチモリ事業部): ペーストスプレー、LT-1
- 昭和シェル石油(現・出光興産): シェルテラス S2 V32
- フックスジャパン株式会社: スズクロールNo.2
法令・技術規格(参考基準)
- JIS C 4603(高圧交流遮断器)
- JEMA(日本電機工業会)技術資料:受変電設備の保守・点検に関する推奨基準

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