MENU

自己インダクタンスの基礎知識まとめ

目次

自己インダクタンスの概略

自己インダクタンス(Self-inductance)とは
「コイルが電流の変化を嫌がり、現状を維持しようとする性質」のこと。

力学における「慣性(急には止まれない、急には動き出せない性質)」の
電気バージョンをイメージすればわかりやすと思われる。
電子機器においては、この性質を意図的に持たせた部品を「インダクタ」と呼ぶ。

自己誘導のメカニズム

コイルに流れる電流を変化させようとすると
以下のステップで「自己誘導」という現象が起こる。

  1. 磁界の発生
    コイルに電流を流すと、周囲に磁界(磁束)が発生する。
  2. 磁界の変化
    電流の大きさを変える(増やしたり減らしたりする)と
    発生している磁界の強さも変化する。
  3. 誘導起電力の発生(レンツの法則)
    コイルは、この磁界の変化を打ち消す方向に新しい電圧(自己誘導起電力)を自ら発生させる。

上図のように、巻数Nのコイルに電流Iが流れると磁束Φが発生し
自己インダクタンスによる起電力eが生じる。

具体的には、電流の増減に対して下記のようになる。

  • 電流を急に増やそうとした時
    電流を押し返そうとする方向(逆向き)に電圧が発生し、電流の増加を邪魔する。
  • 電流を急に減らそうとした時
    電流を引き留めようとする方向(同じ向き)に電圧が発生し
    電流を流し続けようとする。

「自分で自分にブレーキをかける(または背中を押す)強さの度合い」を示すパラメータが
自己インダクタンスとなる。

自己インダクタンスの公式と単位

自己インダクタンスを求める公式や、発生する電圧の計算式は以下の通り。

巻数Nのコイルに電流Iを流したとき、コイルと鎖交する磁束数NΦは電流に比例するため、NΦ = LIの関係が成立します。ここで、比例定数Lを自己インダクタンスと呼び、次式で表されます。

L = NΦ / I

また、コイルの電流Iが時間的に変化すると
そのコイル自身に起電力が誘導される。
この現象を自己誘導作用と呼び、その誘導起電力eは次式で表される。

e = -L(ΔI / Δt)

  • Lの単位: ヘンリー[H]が使用される。
  • マイナス(-)の意味: 発生する起電力が電流の変化に逆らう方向であること(レンツの法則)を示している。

インダクタンスの大きさが決まる要素

自己インダクタンスLが大きいコイルほど、同じ電流変化に対してより強い電圧を生み出す。
コイルの「巻き数が多い」、または中心に鉄などの「磁性を持ちやすい芯(コア)が入っている」ほど
自己インダクタンスは大きくなる。

「自己インダクタンス(L)は、巻き数(N)の『2乗』に比例する」という法則がある。
L ∝ N^2
→巻き数を2倍にすると、インダクタンスは4倍になる。

実務におけるポイント・最新情報

ノイズフィルターとしての活用(プラスの側面)

自己インダクタンスの「急激な電流の変化(高周波)を通しにくく
一定の電流(直流)はそのまま通す」という性質を利用して
電子機器ではノイズフィルターとして非常に多く使われている。
電源ラインに乗ってくる不要な高周波ノイズをせき止め、機器の誤動作を防ぐ役割を果たしている。

開閉サージ(誘導性キックバック)への注意(マイナスの側面)

リレーやモーター、電磁弁といった「誘導性負荷」のスイッチを
オフにする際に発生する逆起電圧(開閉サージ)となる。

上記の公式 e = -L(ΔI / Δt)で考えると

回路のスイッチを切るということは
時間Δtが「ほぼゼロ(極めて一瞬)」で電流を遮断することを意味する。
分母が限りなく小さくなるため、発生する電圧e(またはV)は
元の電源電圧の数倍〜数十倍に跳ね上がり、数百ボルトに達することも珍しくない。
24Vの制御回路であっても、この逆起電圧によりリレーの接点がアーク放電を起こして
溶着(寿命低下)したり、周辺の半導体部品が破壊されたりする事故が起こり得る。

【現場での対策・確認ポイント】
●サージキラー(サージアブソーバ)の設置
 コイルと並列にバリスタやCR回路を取り付け、発生した過電圧を吸収させる。
●ダイオード内蔵リレーの採用
直流(DC)回路の場合、コイルと並列にフリーホイールダイオード(還流ダイオード)を入れることで
自己誘導で発生した電流をコイル内で循環・消費させる。
実務での盤内設計では、あらかじめ「ダイオード付きリレー」を選定するのが一般的。
ただし、コイルのエネルギーがゆっくり消費されるため
「リレーの復帰時間(オフになるまでの時間)が少し遅くなる」という副作用がある。
高速応答が必要な回路では、ツェナーダイオードやバリスタなどを組み合わせた対策が選ばれることもある。

参考資料

新電気2022年2月号「電験三種合格セミナー」より一部引用

オムロン株式会社
技術解説:リレー 共通の注意事項(接点の保護回路について)

株式会社村田製作所
技術記事:インダクタ(コイル)の基礎知識

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次