PAS(柱上気中負荷開閉器)におけるトリップコイル(TC: Trip Coil)は
事故を検知した際に開閉器を「強制的に開放(トリップ)」させるための役割を持つ部品のこと
PAS単体では単なるスイッチだが、SOG制御装置から電気信号を受けることで
このトリップコイルが動作し、電路を遮断する。
トリップコイルの仕組みと役割

トリップコイルは、電磁石の原理を利用した機構のこと。
動作の流れ
- 信号受信
建物内の電気系統で「地絡(漏電)」や「短絡(ショート)」が発生すると
SOG制御装置がそれを検知する。 - 励磁(れいじ)
SOGからトリップコイルにDC(直流)電流が流れる。 - 物理的動作
コイルに電気が流れると強い磁力が発生し
内部の鉄心(プランジャ)が勢いよく飛び出す。 - 開放
飛び出した鉄心がPAS内部の「ラッチ(固定金具)」を叩いて外すと
強力なバネの力で主接点が引き離され、電路が遮断される。
SOG制御装置との連携(結線と端子)

PASとSOG制御装置は、通常10芯程度の制御ケーブルで結ばれている。
トリップコイルに関わる端子は主に以下の3つが重要となる。
| 端子記号 | 役割 | 内容 |
| Va | トリップ共通端子 | SOGからのトリップ信号(プラス側)が入力される。 |
| Vb | トリップ信号端子 | 地絡や停電時に、Vaとの間に電圧が印加される。 |
| Vc | 過電流ロック用端子 | 短絡事故時に信号をやり取りする。 |
PAS特有の「SO動作(過電流ロック)」について

PASのトリップコイルには、他の遮断器(VCBなど)とは異なる
「SO(Storage Overcurrent)機能」との深い関わりがある。
PASは「負荷開閉器」であり
大きな短絡電流(ショートした時の巨大な電流)を自力で遮断する能力はない。
もし短絡時に無理やりトリップコイルを動かして開こうとすると
PASが爆発する恐れがある。
短絡発生時
PAS内部のCT(変流器)が過電流を検知すると
一時的にトリップコイルへの信号を「ロック(禁止)」する。
動作
電力会社の変電所の遮断器が先に切れて
電路が無電圧になったことを確認してから
SOGに蓄えられた電気エネルギー(コンデンサ)でトリップコイルを動作させ
安全にPASを開放する。
保守点検での重要ポイント

トリップコイルは普段動かない部品であるため
地絡や短絡の動作時に「固着」して動かないのが一番の不具合となる。
動作試験
年次点検などの停電時に、SOG制御装置の試験器を使って
実際にトリップコイルが動作してPASが「カチン」と開放するかを確認する。
断線チェック
コイルが焼き切れていないか、端子間の抵抗値を測定する。
絶縁抵抗測定
トリップコイルの回路が地面とショート(地絡)していないか、メガー(絶縁抵抗計)で確認する。
トリップコイルの絶縁抵抗判断目安

トリップコイルの抵抗値はメーカーごとに正常値が異なるので
事前に取扱説明書などで確認をしておく必要がある。
SOG制御装置不動作時のフローチャート(エナジーサポート社の場合)

まとめ

PASのトリップコイルは、「SOGの判断を物理的な開放動作に変える最終スイッチ」
特に、短絡時に爆発を防ぐための「ロック機構」とセットで理解することが
高圧受電設備の保安上非常に重要となる。
参考資料
新電気 2020年5月号「風雨による高圧電気設備への影響とその対策の備忘録」より引用
chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.energys.co.jp/denzai/pdf/sog_manual.pdf
(E) ENERGY SUPPORT取扱説明書過電流ロック形高圧気中開閉器 SOG 〔200A, 300A, 400A〕
より一部引用

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