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変圧器についての基礎知識まとめ

高圧受電設備(受変電設備)の中核を担う変圧器(トランス)は
電力会社から送られてくる高電圧(一般的に 6,600V)を
施設内で使用可能な低電圧(200Vや 100V)に降圧する重要な装置となる。

目次

変圧器の基本原理

左図:変圧器の原理図 右図:変圧器の等価回路図

変圧器は、上左図のように
鉄心に二つの巻線を巻いたものとなる。

一次巻線 N1 に交流電圧 V1 を印加すると
鉄心内部に磁束φ が発生し、電磁誘導により
二次巻線 N2 に交流電圧 V2 が発生する。

このとき

となり、二次巻線には巻数に比例した電圧が発生する。
また

となり、二次巻線には巻数に反比例した電流が流れる。
※一次側から見た変圧器の1相分の等価回路は右上図参照。

具体例

一次側の巻数が二次側の33倍であれば
6,600V を 200V に変換できる。

変圧器は電気エネルギーを磁気エネルギーに変換し、さらに電気エネルギーに変換することにより
電圧と電流を変えることができる機器となる。

周波数の変更は不可。

変圧器の構造

鉄 心

変圧器の鉄心には鉄損が少なく、飽和磁束密度や透磁率の大きい材料が適している。
けい素鋼板が多く用いられ、特定の方向に磁化しやすい方向性鋼板が採用されることも多い。
また、特に損失の低減を図る目的で
磁区制御けい素鋼板やアモルファス(非結晶)鋼板が用いられることもある。

巻 線

巻線には、絶縁被覆を有する軟銅線あるいはアルミ線が用いられる。
通常は、二次巻線(低圧側)を鉄心側に巻いた上に、一次巻線(高圧側)を重ねる。
また、複数の二次電圧が必要な場合や電圧の調整が必要な場合は
巻線の途中から端子(タップ)が取り出される。
巻線の絶縁には、クラフト紙やプレスボードが使用される。

タップ切換端子

変圧器巻線の高圧側には、タップ切換端子がある。
これは、無電圧状態で巻数比を変えるもので、二次側の電圧を調整するためのもの。
油入変圧器の場合、タップ切換端子は変圧器内部にあるので
ハンドホールや上蓋(うわぶた)を外して油中で作業する。

工具やナットなどが変圧器内部に落下しないよう、注意すること。
内部点検前に身の回りの小物は外しておくことが推奨される。


変圧器のタップは、150Vステップとなっており
タップを1ステップ変えると、二次電圧は210V回路で約5V、105V回路では約2.5V変化する。

温度計

変圧器は使用温度が高いほど寿命が短くなるので、運転時の温度管理が重要となる。
このために、温度計が付属している。
上左図は油面温度計で、油面計と温度計の機能を有しており
変圧器内の油量と油温を監視できる。
上右図ははダイヤル温度計で通常の温度指示の指針、過去の最高温度を指示する指針
任意温度にセットできる警報接点付きの指針の3本の指針を持っている。

呼吸器

絶縁油は負荷や周囲温度の変化により、膨張・収縮するので、油面が上下する。
小容量変圧器では上部に空隙を設けて密閉するが
容量の大きいものでは、上図 のような呼吸器が使用される。
これは、内部圧力が大気圧と同じになるように、パイプにより空気の出入口を設けたもの。
パイプの先端には油ポットを取り付けて、空気中のほこりや湿気が変圧器内部に入るのを防いでいる。

ブッシング

上図左は高圧ブッシング、上図右は低圧ブッシングとなる。
ブッシングは、外箱を貫通する導体を外箱から絶縁すると共に、気密(シール)を図るためのもの。
低圧側のブッシングは、高圧より電流が大きくなるので、中心導体が太く、端子の形状も大きくなる。
特に、低圧ブッシングの両端(外箱の外部と内部)の端子部は接続不良による事故(過熱・焼損)が多いので
注意が必要となる。  

接地端子

変圧器の外箱を接地するためのものです。高圧機器のためA種接地工事になる。
上図は、接地端子に接地線が接続されている状態。

変圧器の主な種類

絶縁方式や設置環境によって
大きく以下の2種類に分けられる。

油入変圧器

鉄心と巻線が絶縁油の中に収められており、絶縁油は絶縁と冷却の役目を果たしている。
外箱の周囲は波形状やパイプ状をしており、放熱の働きをしている。
他の変圧器に比べて安価なため、最もよく使用されている。

  • 特徴: 冷却性能と絶縁性に優れ、比較的安価。
  • 注意点: 絶縁油は可燃性であるため、火災への配慮が必要。
    また、定期的な油面点検や油耐圧試験が必要になる。

モールド変圧器

上図のように、巻線部分をエポキシ樹脂(絶縁物)でモールドした変圧器。
油入変圧器より高価だが、絶縁油を使用していないため、難燃性で消火設備の軽減も得られる。
公共施設や病院など重要箇所の受電設備、あるいは地下室の受電設備などで使用される。

油入変圧器と異なり、モールド変圧器の表面は巻線導体とほぼ同じ電位になっており
触れると危険。

  • 特徴: 難燃性が高く、火災のリスクが低いため、ビル内や地下街などの防災性が求められる場所に多用される。
  • 注意点: 油入式に比べて高価で、湿気や塵埃の影響を受けやすい。

変圧器の結線方式

Δ- Δ (デルタ – デルタ)結線

1次側・2次側ともに三角形(デルタ)状に結線する方式。

特徴

第3高調波がデルタ内を循環するため、外部(電路)に流出せず
電圧の波形が歪みにくいのが最大のメリットとなる。

注意点

中性点がないため、接地をとるには別途接地用変圧器などが必要になる。

Y – Y(スター – スター)結線

1次側・2次側ともに星形(スター)状に結線し
中心部を「中性点」とする方式。

特徴

中性点を接地できるため
異常電圧の抑制や外箱の保護が容易となる。
相電圧が線間電圧の 1√3になるため、絶縁設計がしやすい。

欠点

第3高調波の逃げ場がないため、通信線への誘導障害や電圧波形の歪みが発生しやすく
現代の電力系統では単独で使われることは少ない
※通常は3次巻線にΔを加えたY-Y-Δなどで運用される。

Y-Δ(スター・デルタ)結線

一方がデルタ、もう一方がスターの組み合わせ。

用途

主に配電用変圧器(降圧用)として非常によく使われる。

メリット

Δ側で第3高調波を吸収し、Y側で中性点接地が可能。

注意点

1次側と2次側の間に30°の位相差が生じる。

V – V(ブイ – ブイ)結線

単相変圧器2台を用いて
擬似的に三相交流を構成する方式。

特徴

変圧器が2台で済むため応急対応としてΔ-Δ結線で運用中に1台が故障しても
残りの2台をV-V結線に切り替えることで、三相供給を止めることなく継続できる。

注意点

利用効率が悪く、変圧器2台分の容量(200%)に対して
実際に出力できるのは約86.6%程度になってしまう。

変圧器保守点検の重要ポイント

異音・振動の確認

負荷が大きくなると「ブーン」という電磁振動音が大きくなる。
普段と違う異音(うなり)や振動がないか、ボルトの緩みがないかを確認する。

温度管理

変圧器は使用に伴い熱を持る。許容最高温度を超えると、絶縁物の劣化を早め
寿命(一般に20〜30年)を縮める原因となる。
サーモグラフィ等を用いた端子部の過熱確認も有効。

絶縁抵抗と接地抵抗

  • 絶縁抵抗
    巻線と外箱、または巻線間の絶縁状態をメガー(絶縁抵抗計)で測定する。
  • B種接地工事
    二次側(低圧側)の混触防止板や中性点に施される接地で
    高低圧混触時の事故を防ぐ極めて重要な保安要素。

絶縁油の保守管理

絶縁油の劣化

油入変圧器の性能は絶縁油により大きく左右されるため、絶縁油の保守管理は非常に重要となる。
絶縁油は使用中に徐々に劣化し、様々な劣化成分が生成されて、絶縁耐力や冷却能力が低下する。

劣化の原因で最も大きなものは、空気との接触によって絶縁油が酸化すること。
→定期的な絶縁油試験の実施を行い、性能の確認を行う必要がある。

絶縁油の試験としては主に
●絶縁破壊電圧試験
●全酸価試験
が行われる。

これらの試験データは経年的な変化の把握が重要であり、絶縁油が不良と判断された場合は
その緊急度合いによって、ろ過、浄油、再生又は取り替えを行う必要がある。

絶縁油の劣化状況

上左図は新設の変圧器で、絶縁油は無色透明で内部がよく見える。
上右図は、劣化した絶縁油で、茶色くなっている。

劣化した絶縁油の状態の変圧器は、長期間過負荷で使用したものとなる。
絶縁油の劣化は色だけで確実な判断できないが、絶縁油にかなりの量のスラッジや有機酸が
生成されていると推定できる。

油中ガス分析(内部異常診断)

図:油仲ガス分析装置

変圧器の内部で局部過熱や部分放電が発生すると
その部分の絶縁材料の種類と異常部の温度によって特有の分解ガスが発生し、絶縁油中に溶解する。
この溶解ガスを分析することによって、内部異常の有無や、その状況を推定することができる。
油中溶解ガスは、対象変圧器から絶縁油を採取し、上図の油中ガス分析装置(ガスクロマトグラフ)で分析する。

フルフラール分析(劣化度診断)

油入変圧器内部の経年劣化を発見する有効な手段が、フルフラール分析となる。
変圧器内部の絶縁紙が熱により劣化すると、フルフラールという有機化合物が生成される。
フルフラールは、絶縁油中に溶解して外部に散逸することがないため
フルフラールの濃度を測定することにより、絶縁紙の劣化度を判定することが可能となる。

変圧器の寿命は、主に絶縁紙の劣化によるところが大きいため
事故防止のために、定期的にフルフラール分析を実施することが効果的となる。  
フルフラールは油中ガス分析と同様に、対象変圧器から絶縁油を採取して分析する。
※上図が、フルフラール分析装置(高速液体クロマトグラフ)。

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