皮相電力(ひそうでんりょく)とは、交流回路において、電圧と電流の積で表される見かけ上の電力のこと。
実際に消費される有効電力と、回路内でエネルギーが蓄えられたり放出されたりする無効電力を合わせたもので
単位には ボルトアンペア(VA)
目次
有効電力、無効電力との関係

交流回路には、抵抗(電熱線など)、コイル(モーターなど)、コンデンサ(電子回路など)といった要素が含まれる
- 抵抗: 電流を電圧と同じ位相で消費し、有効電力としてエネルギーを消費する。
- コイル: 電流を電圧よりも位相が遅れて消費し、無効電力を蓄える。
- コンデンサ: 電流を電圧よりも位相が進んで消費し、無効電力を蓄える。
皮相電力 (S) は、これらの有効電力 (P) と無効電力 (Q) をベクトル的に合成したもので、以下の関係式で表される。
S=P+jQ
大きさ(絶対値)で表すと、三平方の定理を用いて以下のようになる
S=P2+Q2
→有効電力と無効電力をそれぞれ直交する辺とする直角三角形の斜辺が皮相電力に相当することを示している。
皮相電力の重要性

皮相電力は、実際に消費される電力(有効電力)だけでなく
回路を構成する機器(変圧器、配線など)の容量設計において非常に重要になる。
機器の容量選定
電気機器は、実際に使用する有効電力だけでなく、回路に流れる無効電力も考慮した上で、皮相電力に見合った容量で設計・製造される。
例:モーターで1000Wの有効電力を必要とする場合でも、力率が低いとその何倍もの皮相電力が必要となり
それに見合った容量の電源設備や配線が必要になる。
電力系統の評価
電力会社は、発電所や送電線などの設備容量を計画する際に、需要家全体の皮相電力を考慮します。
力率との関係

皮相電力 (S)、有効電力 (P)、そして力率 (cosθ) の間には以下の関係がある。
cosθ=SP
力率が1に近いほど、皮相電力に対する有効電力の割合が大きく、電力が効率的に利用されていることを意味する。
力率が低いと、同じ有効電力を得るために大きな皮相電力が必要となり、設備への負担が増加する。
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