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定格周波数についての基礎知識まとめ

定格周波数(ていかくしゅうはすう、Rated Frequency)とは、交流(AC)の電力系統や電気機器が最も効率よく、かつ安全に動作するように設計された周波数のこと。
単位はヘルツ(Hz)で表される。

電力系統においては、発電所で作られた電気が送電線を通って需要家の電気機器に供給されるが、
この際に周波数が一定に保たれる必要がある。
電気機器は、設計された周波数で動作することを前提としているため、周波数が大きく変動すると、
機器の性能低下、故障、あるいは最悪の場合、焼損などの事故につながる可能性がある。

目次

日本の定格周波数について

日本国内の電力系統は、歴史的な経緯から50Hz(ヘルツ)地域60Hz(ヘルツ)地域の2つに分かれている。

  • 50Hz地域: 主に東日本(北海道電力、東北電力、東京電力パワーグリッドの管轄区域)
  • 60Hz地域: 主に西日本(中部電力パワーグリッド、北陸電力送配電、関西電力送配電、中国電力ネットワーク、四国電力送配電、九州電力送配電、沖縄電力の管轄区域)

この周波数の違いは、明治時代に日本が欧米から発電機を導入した際に、東日本はドイツ(50Hz)西日本はアメリカ(60Hz)の規格を採用したことに由来する

定格周波数の重要性

  • 電気機器の正常な動作: 電気機器は、その定格周波数に合わせて設計されている。
    例えば、モーターの回転数や変圧器の特性などは周波数に依存するため、
    定格周波数と異なる周波数で使用すると、本来の性能を発揮できなかったり、
    過負荷や異常発熱の原因になったりする。
  • 電力系統の安定性: 発電、送電、配電の各段階で周波数を一定に保つことは、
    電力系統全体の安定運用に不可欠です。需要と供給のバランスが崩れると周波数が変動し、
    大規模な停電につながる可能性がある。
  • 国際的な互換性: 国によって電力系統の定格周波数が異なるため、電気製品を海外で使用する際には、
           その国の周波数に対応しているかを確認する必要がある。
            多くの家電製品は、50Hz/60Hz両対応となっている。

周波数の管理

電力会社は、電力系統の周波数を常に監視し、需要と供給のバランスを調整することで、
周波数を定格周波数に維持するよう努めている。
需要が供給を上回ると周波数が低下し、供給が需要を上回ると周波数が上昇するため、
発電量の調整や周波数制御のための設備を運用している。

50/60Hz以外に使用される機器

産業用・特殊用途のインバータ制御機器

  • 可変速駆動(VFD): モーターの回転速度を精密に制御するために、インバータと呼ばれる
              電力変換装置が使用される。インバータは、入力された50Hzまたは60Hzの
              交流電力を一旦直流に変換し、その後、用途に応じた任意の周波数の交流電力を
             作り出してモーターを駆動する。これにより、数Hzから数百Hz、あるいは
              それ以上の周波数でモーターを制御することが可能となる。
    • 工作機械: 主軸の回転速度制御など。
    • 送風機・ポンプ: 風量や流量の制御による省エネルギー化。
    • 搬送機械: コンベアベルトの速度制御など。
  • 高周波誘導加熱装置: 金属の溶解や焼き入れなどの用途で、数kHzからMHzといった高い周波数の
             交流電流を用いて金属を加熱する。
  • 溶接機: 特殊な溶接プロセスにおいて、最適な溶接品質を得るために
    50/60Hzとは異なる周波数の交流やパルス電流が用いられることがある。

情報通信・計測機器

  • クロック周波数: コンピュータや通信機器などのデジタル回路では、動作タイミングを制御するために
            MHzやGHzといった非常に高い周波数のクロック信号が使用される。
      これらは電力系統の周波数とは全く異なる原理で生成される。
  • 無線通信: ラジオ、テレビ、携帯電話、無線LANなどの無線通信システムでは、
         情報を電波に乗せて送受信するために、kHzからGHzの電磁波が使用される。
         これらの周波数は、通信規格や用途に応じて割り当てられています。
  • 計測機器: オシロスコープ、スペクトラムアナライザなどの計測機器は、様々な周波数の信号を
        測定・分析するために、広い周波数帯域に対応している。
         内部では、測定対象に応じた様々な周波数の信号処理が行われる。

航空機・船舶・鉄道などの特殊な電力系統

  • 航空機: 航空機内の一部の電気系統では、400Hzの交流電力が使用されることがある。
       これは、高周波にすることで変圧器やモーターなどの電気機器を小型・軽量化できるため
        重量が重要な航空機に適している。
  • 船舶: 一部の船舶でも、陸上電力とは異なる周波数の電力が使用されることがある。
  • 鉄道: 鉄道車両の補助電源システムや、一部の特殊な駆動システムにおいて
       50/60Hz以外の周波数が使用されることがありる。
       例)VVVFインバータ制御の交流モーターは、可変周波数で駆動される。

音響・映像機器

  • オーディオ信号: 音声信号は、人間の可聴帯域である約20Hzから20kHzの周波数成分を含んでいる。
  • 映像信号: 映像信号も、水平同期周波数や垂直同期周波数など、様々な周波数成分を含んでいる。
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