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直列リアクトルによる磁気飽和現象のまとめ

目次

直列リアクトルの概略

直列リアクトル(Series Reactor: SR)は、主に電力系統において
コンデンサと直列に接続して使用される機器です。その主な目的は、電力系統の品質維持と機器の保護にある。

主な役割 

  1. 高調波抑制: 電力系統には、非線形負荷(インバータや整流器など)から発生する高調波が含まれることがある。
    進相コンデンサを設置すると、この高調波成分が拡大し、電圧波形の歪みを引き起こす可能性がある。
    直列リアクトルをコンデンサと直列に挿入することで、特定次数(特に第5次高調波など)の高調波に対して回路を誘導性にし、コンデンサ回路への高調波電流の流入を抑制し、系統への流出を防ぐことで、波形歪みの改善や電力品質の向上が図られる。
  2. 突入電流の抑制: 進相コンデンサは、電源投入時に大きな突入電流が発生しやすい性質がある。
    この突入電流は、開閉器やコンデンサ自身にストレスを与え、寿命を縮めたり、誤動作の原因となることがある。直列リアクトルは、コイルの持つ自己誘導作用により、電流の変化を妨げる方向に電圧を発生させるため
    コンデンサ投入時の過渡的な大電流を抑制する効果がある。
  3. 開閉器の再点弧防止: コンデンサ回路を開放する際に、開閉器で再点弧が発生することがある。
    直列リアクトルは、この再点弧による異常電圧の発生を抑制する効果も期待できる

磁気飽和についての概略


鉄のような強磁性体に磁界Hを0から加増すると、下図のように磁束密度Bが磁界Hに対して増加する。

図:磁化曲線(B-H曲線)

さらに磁界Hが大きくなるとBの増加量が小さくなって、ついにはBは飽和し一定値に達する現象を磁気飽和という。

計算式からわかる磁気飽和

磁束密度Bと磁界Hの関係は、
B = μH [T]
※BがHに比例関係にある間磁束密度μは一定
 しかし、飽和という現象が示すように、磁束密度μは常に一定ではない。
 この「磁束密度Bは一定の磁界H以上に増加しない」ことを磁気飽和現象という。

ヒステリシスループによる磁気飽和の説明

磁気飽和は透磁率μで整理する。
透磁率μは、真空の透磁率μ₀[H/m]と真空以外の一般の物質の透磁率μsとの積で表される。

μsμ/μ₀
→μ=μs・μ₀[H/m]

μ0= 4π×10^-7 (H/m)
μsは軟鉄で数千(1000くらい)、パーマロイでは10⁶以下。真空中のμsは1で、空気中もほぼ同様に扱われます。

したがって、鉄心が磁気飽和する前は、透磁率μは一定になり比透磁率μS によって磁束密度が決まる。
磁気飽和した場合、真空の透磁率μ0 が優勢となりμが小さくなる。
鉄のような磁性体にはヒステリシス特性がある(上図:ヒステリシスループ参照)。

直列リアクトルの磁気飽和

進相コンデンサ用直列リアクトルは、鉄心部にエアーギャップを設けた空隙付き鉄心入りリアクトルであるため、
必要以上に大きな電流が流れると、鉄心の磁気飽和現象により、式(3・4)のようにインダクタンスLが低下する。

現実にはまれに過電流による磁気飽和が現れ、直列リアクトルのリアクタンスが低下する。
なお、進相コンデンサ中には、商用周波数の電流のほかに高調波電流が重畳して流れているが
高調波の流入量が大きくなると合成電流は過電流になる。

このため、過電流によるリアクタンス低下により電源系統との間に高調波共振が発生して異常な高調波過電流が
進相コンデンサ回路に流入する現象(高圧引き込み現象)を誘発することがある。

このことで過去には進相コンデンサと直列接続されている直列リアクトルに
高調波過電流による障害が発生していたことがある。

JIS改正により、これに対応できる直列リアクトル高調波耐量タイプが追加された。
したがって、高調波過電流が懸念される箇所に、この高調波耐量タイプを採用することで障害を防止できるようになった。

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