公開日:2025年12月6日 / 改訂日:2026年10月28日
- 電柱上の開閉器の名称を、規程の用語(「分岐開閉器」)に統一
- 規程1110-1・1110-2・1110-4と、電技解釈第36条第4項の解説を追加
- 北海道電力ネットワークの「出迎え供給」の取扱い変更(2023年10月〜)を追加
- 点検頻度の緩和要件との関係を追加
- 根拠を確認できなかった地域に関する記述を削除
高圧受電における「出迎え方式」とは?(基礎知識)
高圧受電の基本は、敷地内に第一柱(構内柱)を建ててPAS(気中負荷開閉器)を載せる「構内第一柱方式」。
一方で、敷地の事情などから、電力会社の電柱から直接ケーブルで引き込む「出迎え方式」が
使われている設備もある。
出迎え方式の仕組み、実務で気をつけたい波及事故のリスク
関連する規程・法令、そして最近の取扱いの変化を、備忘録としてまとめた。
出迎え方式の仕組み

出迎え方式とは、需要家の敷地内に構内電柱(第1号柱)を建てず
電力会社の電柱(構外)から需要家が用意した高圧ケーブルで直接引き込んで受電する方式。
需要家のケーブルを電力会社の電柱で「出迎えて」供給する形なので、この名前で呼ばれている。
電力会社(一般送配電事業者)は、電柱上に自家用引込線専用の分岐開閉器を施設する。
財産分界点は、一般にこの分岐開閉器の負荷側(ケーブル側)の接続点となる。
そこからキュービクルまでの引込ケーブルは、需要家の財産になる。
保安上の責任分界点の位置は、2通りある。
高圧受電設備規程(JEAC 8011-2020)の1110-1図では
構内の区分開閉器の電源側に置く例と
電柱上の分岐開閉器の負荷側に置く例
が示されている。
保安上の責任分界点は電力会社との協議で決まり
一般には財産分界点と一致するが、施設形態によって異なることもある。
メリットは「コスト削減と省スペース」
- 初期費用の削減
構内に電柱を建てる工事費用がかからない。 - 省スペース・景観維持
敷地が狭い施設や、美観上の理由で電柱を建てたくない施設に向いている。
構内第一柱方式との比較表
| 項目 | 出迎え方式 | 構内第一柱方式(標準) |
|---|---|---|
| 構内電柱の有無 | 不要 | 必要 |
| 電柱上の開閉器 | 電力会社が自家用引込線専用の分岐開閉器を施設 | 構内第1号柱に需要家が区分開閉器(PAS)を施設 |
| 保安上の責任分界点 | 構内の区分開閉器の電源側(電柱上の分岐開閉器の負荷側とする場合もある) | 構内の第1号柱 |
| 区分開閉器 | 分界点に近接する箇所(構内)に施設 | 分界点(第1号柱)に施設 |
| 電柱〜構内のケーブルの地絡保護 | 分岐開閉器に地絡遮断機能が無ければ無保護 | PASの負荷側なので保護される |
| 引込ケーブル地絡時のリスク | 保護が無い区間の地絡は波及事故に直結 | 低い |
| 初期導入コスト | 比較的安価 | 電柱・PASの設置分だけ高価 |
実務のポイント:波及事故リスクと規程・法令上の扱い
引込ケーブルの地絡による波及事故

構内第一柱方式なら、SOG制御装置付きのPASがある。
構内で地絡事故が起きても、PASは電力会社の変電所側の継電器と時限協調をとって先に開放するので
配電線を巻き込まない。
短絡事故のときはPASは自分では開かず、電力会社の遮断器が動作した後の無電圧の時間に開放する。
このため、配電線は瞬間的に停電するが、再閉路で復旧できる。
一方、出迎え方式で電柱上の分岐開閉器に地絡遮断機能が無い場合
電柱から構内の地絡遮断装置までの引込ケーブルは、どの装置にも保護されていない。
この区間で、経年劣化や外的要因(他工事でのケーブル損傷など)による地絡事故が起きると
電力会社の変電所の遮断器が動作し、同じ配電線につながる近隣一帯が停電する「波及事故」に直結する。
引込ケーブルは需要家の財産なので、事故の責任も需要家が負い、損害賠償に発展するおそれもある。
構内第一柱やPASが無いのは規程違反の疑問と考察

結論から言うと、出迎え方式は高圧受電設備規程で明示的に認められた施設形態。
ただし、区分開閉器と地絡遮断装置を省略してよいわけではない。
高圧受電設備規程 1110-1(保安上の責任分界点の設定) 保安上の責任分界点は
原則として需要家の構内に設定する。
ただし、「一般送配電事業者が自家用引込線専用の分岐開閉器を施設する場合」は構外に設定できる。
出迎え方式はまさにこのケースとなる。
高圧受電設備規程 1110-2(区分開閉器の施設) 分界点には区分開閉器を施設するのが原則。
ただし、電力会社が分岐開閉器を施設する場合は、分界点に近接する箇所(構内の引込口付近など)に施設できる。
区分開閉器は原則として高圧交流負荷開閉器だが
この場合に限り、条件(屋内または金属箱に収め、負荷電流の有無を容易に確認できること)を
満たせば断路器(DS)も使える。
高圧受電設備規程 1110-4(地絡遮断装置の施設) 分界点には地絡遮断装置を施設する。
ただし、近接する箇所に地絡遮断装置があり、地絡による波及事故のおそれがない場合は、この限りではない。
地絡遮断装置になるのは、GR付きUGSやGR付き受電用遮断器(VCB)など。
電気設備の技術基準の解釈 第36条第4項(参考)
高圧の電路では「他の者から供給を受ける受電点」またはこれに近接する箇所に、地絡遮断装置を施設することとされている。(36-1表)
ただし、「他の者から供給を受ける電気を全てその受電点に属する受電場所において変成し、又は使用する場合」は除外されている。
受けた電気をすべて構内で使う一般的な自家用需要家は、この除外に当たる。
つまり、需要家の地絡遮断装置の直接の根拠は、電技解釈ではなく高圧受電設備規程1110-4となる。
ここで押さえておきたいのは
1110-4のただし書きが「波及事故のおそれがない場合」という条件付きであること。
電柱上の分岐開閉器に地絡遮断機能が無い場合
電柱から構内の地絡遮断装置までのケーブル区間をどう扱っているか
電力会社との協議内容を確認しておく必要がある。
最近の取扱いの変化と推奨される対策

GR付きUGS(地中線用ガス開閉器)などの設置
キュービクルにケーブルを引き込む手前(分界点に近接する箇所)に
区分開閉器としてGR付きUGSを設ける方法。
規程1110-2・1110-4の考え方にも沿った構成で
UGSより負荷側の地絡事故による波及事故は防げる。
ただし、UGSは負荷開閉器なので、短絡電流の遮断は主遮断装置などとの協調で対応する。
また、電柱からUGSまでのケーブルの事故は防げない点に注意が必要。
構内第一柱方式への改修工事
根本的な解決策は
構内柱を建ててGR付きPASを設置する標準方式に改修すること。
北海道の「出迎え供給」の取扱い変更(電力会社側SOGの廃止)※参考
1990年以降、「高圧受電設備指針」(現在の高圧受電設備規程の前身)の改定で
地絡遮断装置の施設が義務化された。
これを受けて、北海道電力は波及事故防止に協力する目的で
出迎え供給の電柱にSOG開閉器(過電流・地絡の検出機能付き)を施設してきた。
そのため北海道では、自家用側に地絡保護装置を設けていないケースが多くあった。
なお、出迎え供給でSOG開閉器を標準的に施設していたのは、全国で北海道電力だけだった。
しかし、ほくでんネットワークは次の理由から
2023年10月1日申込み分から分岐用開閉器を地絡遮断機能の無い手動開閉器に切り替えた。
- 義務化から30年以上たち自主保安が原則となっていて、波及事故も大幅に減った。
- 出迎え供給でSOG開閉器を施設しているのは北海道電力ネットワークだけで、他の需要者との公平性に欠ける。
これに伴い、地絡遮断装置は需要者が自分の設備内に施設することになっている。
(2023年9月30日までの申込みで、2024年度内に供給開始するものは、従来どおりSOG開閉器。)
現場での保守管理・点検時の深掘りトピック

1.ケーブルの責任の所在と保護範囲を明確にする
電柱上の接続点から先の高圧ケーブルは
需要家(お客様)の財産で、保守管理の責任もお客様が負う。
まず次の点を確認し、どこからどこまでが保護されているかを把握すること。
・電柱側の開閉器にSOG機能があるか
・構内にGR付きUGSやGR付きVCBがあるか
特に北海道の既設の出迎え供給設備では、構内の構成が DS+VCB だけで
地絡保護を電力会社のSOGに頼っている例がある。
設備の更新や増設のときの取扱いは、電力会社に確認しておきたい。
保護が無い区間がある場合は
オーナー様に潜在的なリスクと改修の必要性を根気強く説明・提案しておくこと。
2. 年次点検におけるケーブル診断の徹底
出迎え方式では、引込ケーブルがまさに「アキレス腱」となる。
年次点検では、高圧ケーブルの絶縁抵抗測定はもちろん
必要に応じて直流漏れ電流測定などの絶縁診断を実施すること。
水トリーによる絶縁劣化の兆候を見逃さないことが、波及事故を防ぐ最後の砦になる。
3. 点検頻度の緩和要件と、引込ケーブルの更新計画
外部委託の点検頻度を緩和するための設備条件(平成15年経済産業省告示第249号 第4条第7号)には
「保安上の責任分界点又はこれに近い箇所に地絡保護継電器付高圧交流負荷開閉器又は地絡遮断器が設置されているもの」という要件がある。
この第7号イ〜ニの設備条件は、停電年次点検の延伸や、3月に1回の点検頻度(第8号ハ)の前提にもなっている。
分界点の近くにGR付きの開閉器・遮断器が無い出迎え方式の設備は、これらの緩和措置を受けられない。
また、3月に1回の点検頻度(告示第4条第8号ハ)を適用する場合は
責任分界点から主遮断装置までの開閉器・遮断器と引込ケーブルを「主遮断装置等」として
保安規程に更新計画を定め、それに従って更新する必要がある。
構内にGR付きUGSを追加するなどの改修は、波及事故対策になるだけでなく
点検の合理化にもつながるため、オーナー様への提案材料として押さえておくこと。
まとめ
- 出迎え方式とは、構内に電柱を建てず、電力会社の電柱(自家用引込線専用の分岐開閉器)から需要家の高圧ケーブルで直接受電する方式のこと。
- 高圧受電設備規程1110-1・1110-2のただし書きで認められた施設形態。ただし、区分開閉器と地絡遮断装置は需要家側に必要。
- 需要家の地絡遮断装置の根拠は規程1110-4。電技解釈第36条第4項は、構内ですべて使用する受電場所を除外している。地絡遮断装置になるのはGR付きVCBやGR付きUGSなどで、PF付きLBSは該当しない。
- 電柱から構内の地絡遮断装置までの引込ケーブルは保護が無いことがあり、この区間の地絡は波及事故に直結する。
- 北海道では電力会社がSOG開閉器で保護してきたが、2023年10月申込み分から廃止され、需要家側で地絡遮断装置を施設することになった。
- 分界点付近の地絡保護の有無は、点検頻度の緩和要件にも関わる。
参考資料
日本電気協会「高圧受電設備規程(JEAC 8011-2020)」1110-1〜1110-4、1110-1図
電気設備の技術基準の解釈 第36条(地絡遮断装置の施設)
北海道電力ネットワーク「出迎え供給(高圧)における分岐用開閉器の取扱い変更について」(2023年7月お知らせ、2024年10月31日 配電部資料)
経済産業省「主任技術者制度に関するQ&A」(令和8年10月)
主任技術者制度の解釈及び運用(内規)一部改正 新旧対照表(令和7年4月1日)

コメント