目次
接地についての概略

接地は、電気設備や電子機器などを大地(地球)と電気的に接続すること。
これにより、以下のような目的が達成される。
主な目的として感電防止、機器保護、ノイズ対策、電位の安定化などがある。
構造体接地についての概略

構造体接地(こうぞうたいせっち)とは、建築物の鉄骨、鉄筋コンクリートの鉄筋、金属製の屋根、外壁、柱などの金属製の構造体を、接地極として利用する接地方式のこと。
通常、電気設備の安全確保のために行う接地とは別に、建築物自体が持つ導電性を活かして接地を行う。
構造体接地の目的
- 雷害対策: 落雷時の雷電流を大地へ安全に流し、建築物や内部の電気設備への被害を軽減する。
- 等電位化: 建築物内の金属部分を電気的に接続し、電位差を小さくすることで、感電のリスクを低減する。
- 静電気対策: 建築物に帯電した静電気を大地へ放電し、静電気による障害を防ぐ。
構造体接地の対象となる構造物

- 鉄骨造の建築物: 柱、梁などの骨組みが金属で構成されている建物。
- 鉄筋コンクリート造の建築物: 内部に網状に配置された鉄筋が連続性を持っている建物。
- 金属製の屋根や外壁を持つ建築物: 広範囲に金属製の部材が使用されている建物。
- その他、連続した金属製の構造体を持つ建築物: 例えば、大規模なプラント設備など。
構造体接地を利用するためには、構造体としての電気的な連続性が確保されていることが重要。
→鉄骨造の場合はボルト接合や溶接、鉄筋コンクリート造の場合は鉄筋の重ね合わせや結束線などによって
構造体全体が電気的に繋がっている必要がある。
構造体接地のメリットと注意点

メリット
- 接地抵抗の低減: 広大な金属製の構造体を利用するため、一般的に低い接地抵抗値を得やすい。
- 接地工事の省力化・コスト削減: 専用の接地極を埋設する工事が不要となる場合があり
工事の手間や費用を削減できる。 - 等電位化の促進: 建築物全体の金属部分が接地されるため、効果的な等電位化が図れる。
- 雷害対策の強化: 広範囲で雷電流を受け止め、分散して大地へ流すことができるため
雷害に対する保護効果が高まる。
デメリット
- 構造体の電気的連続性の確保: 構造体全体が確実に電気的に接続されている必要がある。
施工段階での管理が重要となる。 - 腐食対策: 金属製の構造体が土壌や水分に接する場合、腐食対策が必要となることがある。
- 他の埋設金属体との絶縁: ガス管や水道管など、他の埋設金属体との間で電気的な短絡が生じないように
注意が必要。 - 接地抵抗値の確認: 構造体接地を利用する場合でも、所定の接地抵抗値以下であることを確認する必要がある。
- 設計段階からの検討: 構造体接地を有効に利用するためには
建築物の設計段階から電気設備設計者と構造設計者が連携して検討する必要がある。
構造体接地の接地抵抗値

構造体接地における接地抵抗値の目標値は、建築物の用途や規模、設置される電気設備の
種別などによって異なる。一般的には、電気設備技術基準や関連法規、JIS規格などで規定されている。
例)雷保護システムの接地においては、より低い接地抵抗値が求められる場合がある。
重要なのは、事故時の安全を確保し、電気機器の正常な動作を妨げない範囲で接地抵抗値を維持すること。
接地抵抗値の測定は、接地抵抗計を用いて行われる。
構造体接地が適切に機能しているかを確認するために、竣工時や定期的な点検時に測定を実施することが重要。
構造体接地と他の接地方式との関係
構造体接地は、単独で接地システムを構成する場合もあるが
他の接地方式と組み合わせて利用されることもある。
- 単独接地: 建築物の構造体のみを接地極として利用する方式。
- 複合接地: 構造体接地と、接地棒や接地網などの他の接地極を併用する方式。
より低い接地抵抗値を得たい場合や、構造体だけでは接地抵抗値が確保できない場合に採用される。 - 共用接地: 電気設備だけでなく、情報通信設備や弱電設備などの接地を
構造体接地と共通の接地極で行う方式。等電位化を図り
機器間の電位差による障害を防ぐ目的がある。
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構造体接地の施工方法や基準

構造体接地を行う際の施工方法や基準は、関連する法規や規格(電気設備技術基準、建築基準法、JIS A 4201など)、および設計図書に基づいて行われる。
主な施工のポイント
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