PCB(ポリ塩化ビフェニル)の概略

PCBは、Polychlorinated Biphenyls(ポリ塩化ビフェニル)の略称で
人工的に作られた油状の化学物質のこと。
日本では1954年から製造され、以下の優れた特性から様々な用途で利用されていた。
PCBの特性
- 電気絶縁性: 電気を通しにくい性質
- 難燃性: 燃えにくい性質
- 化学的安定性: 高温にも強く、変化しにくい性質
主な高圧使用機器
- 変圧器(トランス)
- コンデンサー
- 蛍光灯の安定器
PCBは「油症」と呼ばれる健康被害(カネミ油症事件)を引き起こしたことや
環境中で分解されにくく、生物の体内に蓄積されやすいという特性(難分解性、生体蓄積性)が判明し
その毒性が明らかになったため、日本では1972年に製造が中止された。
低濃度PCBについて

PCB廃棄物は、そのPCB濃度によって
大きく「高濃度PCB廃棄物」と「低濃度PCB廃棄物」に分類される。
高濃度PCB廃棄物
PCBが意図的に使用された電気機器などで
PCB濃度が0.5mg/kg(=ppm)を超えるものが該当する。
これらはJESCO(日本環境安全事業株式会社)という国が設立した特殊な施設で処理される。
低濃度PCB廃棄物
微量PCB汚染廃電気機器等
PCBを使用していないはずの電気機器の絶縁油に、微量のPCBが非意図的に混入していることが判明したもの。
この混入は、再生油の使用や製造工程でのクロスコンタミネーション(意図しない混入)が原因と考えられている。
低濃度PCB含有廃棄物
微量PCB汚染廃電気機器等以外の、PCB濃度が0.5mg/kgを超え、以下の基準値以下のPCB含有廃棄物を指します。
- 絶縁油やその他の廃油の場合:5,000mg/kg以下
- 汚泥、紙くず、木くず、繊維くず、廃プラスチック類の場合:100,000mg/kg以下
- 金属くず、陶磁器くず、コンクリート破片など(付着物として)の場合:5,000mg/kg以下
「PCB濃度が0.5mg/kgを超えているが、高濃度PCBの基準値よりも低いもの」が
低濃度PCBに該当する。
特に「微量PCB汚染廃電気機器等」は、製造中止後に製造された機器にも
PCBが混入している可能性があるため、注意が必要。
低濃度PCB廃棄物の主な種類

- 変圧器、コンデンサー
絶縁油に微量のPCBが混入している可能性のあるもの。製造年やメーカーによって可能性が異なる。 - 蛍光灯の安定器:
比較的古い建物に残っている可能性があり、PCBを含有しているものがある。 - OFケーブル
古い電力ケーブルの絶縁油にPCBが混入している場合がある。 - 感圧複写紙、塗膜くず、汚泥
過去にPCBが使用されていた可能性のある感圧複写紙や、PCBを含有する塗料が使用された橋梁などの塗膜
PCBで汚染された汚泥など。 - その他
PCBが付着・染み込んだ汚染物(木くず、紙くず、繊維くず、廃プラスチック類など)や、処理物。
なぜ低濃度PCBの処理が重要なのか?

低濃度PCBは、高濃度PCBに比べて濃度は低いものの、環境中に排出されると
以下のような問題を引き起こす可能性がある。
- 環境汚染: 自然環境中で分解されにくく、長期的に残留し続ける。
- 生体蓄積: 魚介類などの生物の体内に蓄積され、食物連鎖を通じて人間に取り込まれる可能性がある。
- 健康被害: 少量であっても長期的に摂取することで、様々な健康影響
(肝機能障害、皮膚障害、免疫機能低下、発がん性など)を引き起こす恐れがある。
出荷時点における低濃度PCB汚染が考えられる高圧電気工作物
出荷時点における低濃度PCB汚染が考えられる高圧電気工作物
- 絶縁油の交換が可能な変圧器等:平成5年(1993年)以前
- 絶縁油封じ切り機器(コンデンサー等):平成2年(1990年)以前

PCB汚染電気機器への対応
電気事業法の電気関係報告規則に従って管轄の経済産業省産業保安監督部に届出を行う。
処理期限と現在の状況
低濃度PCB廃棄物の処理期限は、令和9年(2027年)3月31日までと定められている。
高濃度PCB廃棄物の処理はすでに終了しているが、低濃度PCB廃棄物の処理は現在も進行中である。
期限が迫っており、処理施設の予約状況や処理能力に影響が出る可能性もある。
期限内に処理を完了できなかった場合、事業者には行政指導や罰則が科せられる可能性がある。
調査手順(自家用工作物)

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低濃度PCBに汚染された電気機器等の早期確認のための調査方法及び適正処理に関する手引き

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