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コロナ放電についての基礎知識まとめ

コロナ放電は、高電圧が印加された電極の周囲の気体中で起こる、持続的で局部的な放電現象
その光のゆらめきが太陽のコロナに似ていることから名付けられた。

目次

コロナ放電の発生メカニズム

  1. 高電界の集中
    電極(特に針のように尖った部分や曲率の小さい部分、あるいは導体表面の凹凸や汚れなど)に
    高電圧が印加されると、その周囲に強い電界(電場)が集中する。

  2. 気体の電離
    この強い電界によって、電極周囲の空気分子が加速された電子と衝突し
    分子から電子が叩き出されてイオン化(電離)される。
    このプロセスは、さらに多くの電子とイオンを生み出す連鎖反応(電子なだれ)を引き起こす

  3. 微光と微音の発生
    電離した気体中でイオンや電子が再結合する際に、エネルギーが光として放出される。
    これがコロナ放電特有の青白い微光となる。また、イオンの移動や気体の振動によって
    ジーという微音(コロナ音)も発生する

  4. 火花放電の前駆現象
    コロナ放電は、通常、電極間の電圧をさらに上昇させると、やがて気体の全体的な絶縁破壊が起こり
    激しい火花放電(アーク放電)へと移行する前段階の現象として見られる。

コロナ放電の発生条件

  • 高電圧: ある一定以上の電圧が印加される必要がある。
  • 強い電界の集中: 電極の形状が重要で、尖った部分や曲率の小さい部分(導体表面の凹凸、金具の突起、水滴、雪の付着など)に電界が集中しやすい。
  • 気体の存在: 空気などの気体がない真空中では発生しない。
  • 湿度: 湿度が高いと、空気中の水分子が電界の強度を高め、コロナ放電が発生しやすくなる傾向がある。

コロナ放電が引き起こす影響(高電圧設備における問題点)

電力設備、特に高電圧送電線や変電機器においては
コロナ放電は以下のような悪影響をもたらすことがある。

  • 電力損失(コロナ損失)
    コロナ放電は、電気エネルギーを光や熱、音として消費するため、電力の無駄(損失)となる。
    高電圧送電線において、この損失は無視できない量になる。

  • 電波障害・通信障害
    コロナ放電によって発生する電磁波は、ラジオやテレビの受信、無線通信などに雑音として入り込み
    電波障害や通信障害を引き起こすことがある。

  • 騒音
    コロナ放電は、ジーという微音のほか、特に悪天候時には「ブーン」という低い唸り音(コロナ音)として聞こえることがあり、環境騒音の原因となることがあります。

  • オゾン・窒素酸化物の発生
    コロナ放電によって空気中の酸素が分解・再結合し、オゾン(O₃)や窒素酸化物(NOx)が生成されます。これらは大気汚染物質であり、設備周辺の環境に悪影響を及ぼす可能性がある。
    また、オゾンは強力な酸化作用を持つため、電線やがいしなどの絶縁材料を劣化させる原因にもなる。

  • 絶縁劣化
    長期間にわたるコロナ放電は、絶縁物の表面を徐々に浸食したり、発熱によって劣化させたりすること
    最終的に絶縁破壊(火花放電)へとつながる可能性がある。

コロナ放電の対策(高電圧設備において)

  • 多導体方式の採用
    送電線において、複数の細い導体を束ねて使用する多導体方式を採用することで、導体全体の「みかけの太さ」を増やし、表面の電界集中を緩和する。これにより、コロナ放電の発生を抑制しする。

  • 導体表面の平滑化
    電線の表面を滑らかにし、突起や傷、汚れなどを極力なくすことで、電界集中を防ぐ。

  • 金具形状の改良
    がいしや接続金具などの形状を工夫し、角張った部分をなくして丸みを帯びた形状にすることで
    電界集中を緩和する。

  • コロナ環(コロナリング)の設置
    高電圧機器の端子部分など、電界が集中しやすい場所に「コロナ環」と呼ばれる
    ドーナツ状の金属リングを設置する。これにより、電界を均一に分散させ、コロナ放電の発生を抑制する

  • 絶縁距離の確保
    機器や導体間の絶縁距離を適切に確保することで、電界強度を低下させる。

コロナ放電の応用

コロナ放電は問題を引き起こす一方で、その特性を応用した技術も存在する。

  • 静電気除去装置(イオナイザ): コロナ放電を利用して空気中の分子をイオン化し
    帯電した物体に放出することで、静電気を中和・除去する。

  • オゾン発生装置: コロナ放電によってオゾンを生成し、脱臭や殺菌に利用される。

  • 電子写真(コピー機、レーザープリンター): 感光体ドラムの帯電や
    トナーの転写にコロナ放電が利用されている。
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