定格雷インパルス耐電圧とは
「雷が落ちたときのような一瞬の強烈な高電圧(雷サージ)に対して、その機器が壊れずに耐えられる限界値」
のことを表す。
定格雷インパルス耐電圧の必要性

電気機器(変圧器、遮断器、ケーブルなど)は、普段使っている電圧(例:6600V)だけでなく
「雷」や「スイッチの開閉」によって発生する一瞬の異常な高電圧(サージ電圧)にも耐える必要がある。
もしこの耐圧性能が不足していると、雷が近くに落ちた瞬間に機器の絶縁(電気を遮断している壁)が破れ
ショートして故障や火災につながる可能性がある。
そのため、「この機器は〇〇kVの雷サージまでは耐えられる」という保証値が必要になる。
→定格雷インパルス耐電圧。
「雷インパルス」についての概略

通常の電気(交流)は一定の波形を維持しているが
雷インパルスは瞬間的に高電圧が発生する。
これを試験するために、国際的に決められた「標準波形」がある。
→標準雷インパルス波形
標準雷インパルス波形:1.2 / 50 μs
- 1.2 μs(波頭長)
電圧が立ち上がってピークに達するまでの時間が約1.2マイクロ秒(100万分の1.2秒)。 - 50 μs(波尾長):
ピークを過ぎて、電圧が半分(50%)に下がるまでの時間が約50マイクロ秒。
「一気に上がって、急激に下がる」独特の波形を人工的に作り出し
機器に印加してテストを行う。
BIL(基準衝撃絶縁強度)との関係

実務では、定格雷インパルス耐電圧はBIL(ビル)という用語とセットで扱われる。
日本の電気規格(JEC)では、公称電圧(普段の電圧)ごとに
「これくらいの雷インパルスには耐えなさい」という階級が決まっている。
【代表的な電圧階級とBILの例】
| 公称電圧(系統電圧) | BIL(耐えるべき雷インパルス電圧) | 備考 |
| 3.3 kV | 45 kV | |
| 6.6 kV | 60 kV (または45kV) | 一般的な高圧受電設備 |
| 22 kV | 150 kV | 特別高圧 |
| 66 kV | 350 kV | |
| 154 kV | 750 kV |
※JEC-0202(2015)などの標準的な値です。
例えば、6.6kVの変圧器なら、普段は6600Vしか流れないが
一瞬であれば60,000V(60kV)の雷サージが来ても絶縁が破れないように作られている。
定格雷インパルス耐電圧と絶縁協調の関係

電気設備すべての機器のBILを高くすると、コストが莫大になるため
「絶縁協調」という考え方を使われる。
①避雷器(LA)を使って、機器を守る
- 避雷器 (LA)
一番弱く作っておく(正確には、ある電圧以上で電路を逃がす)。 - 変圧器など
避雷器が動作する電圧よりも、高いBIL(耐電圧)を持たせておく。
仮に雷サージが侵入しても、変圧器が壊れる前に避雷器がサージを逃がしてくれる。
避雷器の制限電圧 < 機器の定格雷インパルス耐電圧 (BIL)
このバランスを保つために、機器の定格雷インパルス耐電圧が厳密に定められている。

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