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過度回復電圧についての備忘録

過渡回復電圧(Transient Recovery Voltage、TRV)とは
遮断器ヒューズが電流を遮断した直後の端子間に発生する
高い周波数を持った過渡的な高電圧のこと。(下記グラフ参照)
または「再起電圧」とも呼ばれる

下記図のように過度回復電圧は電流が零点で遮断された瞬間に電極間に発生する振動性の高電圧となる。
電極間の電圧は回路を開いた瞬間に電源電圧まで上昇するが
このとき電源側の回路条件により過渡的に発生する振動成分が電源電圧に重畳されたものとなる。
この過渡回復電圧の振動が収まると、極間電圧は電源電圧(回復電圧)になる。


新電気2024.4 現場の疑問解決塾 「電流の遮断」より画像引用

目次

過度回復電圧発生のメカニズム

過渡回復電圧は
主に電力系統の回路に存在するインダクタンス(L)キャパシタンス(C)
相互に作用することで発生する。

発生プロセス

  1. 電流の遮断
    遮断器が、電流がゼロになる瞬間(ゼロクロス)で電流を遮断しようとする。
  2. エネルギーの解放
    このとき、回路のインダクタンスに蓄えられていた磁気エネルギー
    キャパシタンスに蓄えられていた静電エネルギーが解放される。
  3. L-C共振
    このエネルギーが回路内で行ったり来たりすることで
    LC共振回路を形成し、高い周波数で振動する電圧(過渡回復電圧)が遮断器の端子間に発生する。
  4. 電圧の急上昇
    この電圧は、商用周波数(50Hzまたは60Hz)の電圧に加えて
    高い周波数の振動成分が重畳されるため
    元の系統電圧よりもはるかに大きなピーク値に達する可能性がある。

なぜ問題になるのか? ⚠️

過渡回復電圧が問題となるのは、この高い電圧によって遮断器の絶縁が破壊され、再びアーク放電(再発弧)が発生する可能性があるからです。再発弧が起きると、電流の遮断が失敗するだけでなく、さらに高い過電圧が発生し、電力系統内の他の機器(変圧器など)を損傷させる危険性があります。

特に、以下のような場合に過渡回復電圧は顕著に現れ、注意が必要です。

  • 無負荷送電線の遮断: 送電線に流れている充電電流を遮断する場合。
  • 変圧器の励磁電流の遮断: 変圧器の運転を停止する際に流れる遅れ小電流を遮断する場合。
  • 短絡故障電流の遮断: 故障電流を遮断する際、特に遮断器の近傍で故障が発生した場合。

抑制方法 🛠️

過渡回復電圧による影響を抑えるために、以下のような対策が取られます。

  • 遮断器の性能向上: 遮断器自体の絶縁性能や、アークを消す能力(消弧性能)を高める。
  • 抵抗器の設置: 遮断器と並列に抵抗器を設置し、遮断直後に抵抗器に電流を流すことでエネルギーを消費させ、電圧の上昇を抑制します。
  • コンデンサの設置: 遮断器と並列にコンデンサを設置し、急激な電圧上昇を緩和します。これは、コンデンサが電圧の変化を嫌う性質を利用したものです。
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